4-5 真天先輩と俺の両親④
賑やかなディナータイムが終わったあと、真天先輩は律儀に洗い物まで手伝ってくれた。
彼女は作業を終えると、手を拭きながら言う。
「それじゃあ今夜は唯人くんのお部屋にお泊まりを――」
「こらこら」
「ふふっ、冗談です。そろそろ帰りますね」
「唯人、万が一がないように家まで送ってやりなさい」
父さんに言われずとも、最初からそのつもりだ。
「俺もこれで帰るからさ。次は……たぶん正月かな」
「そうね。ちょっと豪華なおせちでも買って、新年のお祝いをしましょうよ」
「はい! お義父様、お義母様、今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、こんなに素敵な女性が息子の伴侶になってくれるだなんて。そのうちそちらのお宅にもご挨拶に行かないといけないかな」
父さんも母さんも、真天先輩を実の娘のように可愛く思ってくれているらしい。
「それじゃ、また」
「ああ、体には気をつけるんだぞ」
「じゃあね真天さん! あなたはもう私たちの娘も同然よ!」
夏の夜空には綺麗な星々がきらめいていた。
隣には、星にも負けない輝きの真天先輩。どちらからともなく手を繋ぎ合っていた。
「とっても素敵なご両親でした。受け入れてもらえて本当によかった」
「はは……特に母さんに気に入られたみたいで」
「すごくないですか? 両方の家からもう結婚を認めてもらえてるの。こんな高校生はきっと他にいないですよ」
どこのラブコメ小説なんだとたまに思ったりする。
ひとつ言えるのは、俺自身ではこんなラブコメは絶対に書けないってこと。事実は小説よりも何とやらだ……。
「ね、いつにしましょうか? 互いの両親の顔合わせ」
「急ぐことでもないですし、真天先輩の卒業後とかでもいいんじゃないですか?」
「うん、それがよさそうですね。いっそその時を結納式にするとか?」
「結納……なんですっけそれ」
「婚約の儀式です。当事者だけじゃなくて、両家が家族となることの誓い。……今の時代には、もしかしたらそぐわないかもしれませんが」
これまでの付き合いで俺もわかってきた。
真天先輩はいわゆる伝統を大事にする人だ。そして俺も、そんな彼女を好ましいと考えている。
「俺、そういうのもいいと思ってますよ。ぜひやりましょう」
「はい! その日が今から楽しみです!」
やがて聖川家の門の前に辿り着いた。
真天先輩がインターホンを押すと、狩谷さんの声が聞こえてくる。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま。唯人くんのご実家、とっても快適でした♪」
「我和様に送っていただいたのですね。ありがとうございます」
「いえいえ、当然のことですから」
ずっと繋がれていた真天先輩の手が離れた。
「んっ……」
目を閉じ、唇を突き出してくる。
俺はそこに、そっと口づけた。
「おやすみなさい、真天先輩」
「おやすみなさい、唯人くん。また明日」
真天先輩が家に入るのを見届けて、俺も家路についた。
「……よし!」
歩きながら、自然と拳に力が入る。
旅行に行って、真天先輩には俺の両親と顔合わせしてもらった。
さあ、息抜きはこれで終わりだ。また執筆の日々が始まるぞ。
第二部もいよいよクライマックスへ。
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