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書籍化決定!!したらS級美少女の先輩が通い妻になった  作者: アライコウ
第二部 妻になった先輩が迫りまくる夏休み

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73/90

3-8 真天先輩と旅行最後の夜

 俺は椅子に座って、昼間に買った四谷多賀子のデビュー作『光点』を読んでいた。


「四谷多賀子って文章が真摯っていうか、丁寧ですね」

「もともとは教師をやっていた人ですから、読者にわかりやすく伝えるのを信条としていたようです。その点、唯人くんとも共通点があるかなって」


 真天先輩は俺の読書姿を、何をするでもなく楽しそうに見つめている。


「……うん、大ヒットするだけあって序盤からすごく引きつけられます」

「わたしも家に帰ったら、久しぶりに四谷多賀子を読み返そうかな。でも他にも読みたいWEB小説がたくさんありますし……ふふっ、とっても贅沢な悩みです」


 そのとき、スマホの着信音が響いた。

 俺のではなく、真天先輩のからだ。


「あら、秋口さん?」


 真天先輩は応答ボタンをタップした。そして俺にも聞こえるようにと音声をスピーカーに切り替える。


「もしもし?」

『もしもーし。真天、いま何してるの? あたしは絶賛受験勉強中だぜ。ちょっと気晴らしにおしゃべりしたくてさ』


 そうだ、当たり前だけど多くの三年生は大学受験に臨む。夏休みの今が一番大事な時期だよな。


「わたしは旅行中です。明日には帰るんですけど」

『おー、そうなんだ。確か聖川家は海辺に別荘を持ってるとか聞いたことあるけど』

「それです。高校最後の夏休みですから、思いきりはしゃいじゃいました」

『いいよね真天は。卒業したら我和くんと結婚して専業主婦になるんでしょ? 旦那にがっぽり稼いでもらうんでしょ?』

「そうなればいいのですけど。ね、唯人くん」


 いきなり俺に水を向けてくる真天先輩である。


『はっ? 我和くんがそこにいるの?』

「ええ。彼と一緒の旅行ですから。家族じゃなくて」

『ちょい待って! 我和くんのSNSでさ、旅行中って投稿してたじゃない。真天が隣にいたってこと?』


 真天先輩が目配せする。話してということらしい。


「……こんばんは、秋口先輩」

『うおおっ! なんだコノヤロー、一足早い新婚旅行かよ!』

「そんなんじゃないですって」

『あはは、とにかく楽しんでるみたいね? 動物園のあの写真も笑わせてもらったよ』


 例のライオンの交尾写真は百万PVとか、真天先輩を初お披露目した動画と同じくらいの数字になっていた。


『もしかしなくても我和くん、真天の水着姿見た?』

「……ええ、まあ」

『どんな水着だった? やっぱビキニ?』

「い、言えないです!」


 まさかビキニでもなければワンピースでもない、あんなにきわどいヒモ同然の何かとは思わないだろう。


『えー、教えてよー。写真とか撮ってないの?』

「俺からはとても教えられないです!」

『ふーん、そんなにヤバい水着だったんだ』


 ムフフと笑う声が聞こえた。


『てかさ、ふたりともさ、何がとは言わないけど……仲は進展した?』

「こらこら! セクハラですよ!」

『めっちゃオブラートに包んだのに、これでもダメなの~?』

「わたしは抱いてほしかったんですけどね? 彼ったら真面目さんだから」

「真天先輩~!」


 親友を見習ってオブラートに包んでくれ!


『マジかよー。真天の水着姿を見て我慢できる男がこの世にいるの? あたしだったら襲ってるって』

「男がみんなケダモノだと思ったら大間違いですからね……!」

「でも、そんな真面目な彼がわたしは大好きなんです♥」

『おうおうごちそうさま。いやー、友達が幸せだとあたしも幸せだよ』


 秋口先輩の声には、どうやら本音が込められていた。


『我和くんになら、安心して真天を任せられるよ。これからもお願いね』

「……はい。それは約束します」

『それはそうとさ、我和くんのデビュー作が発売されたら打ち上げやろうって言ったじゃん? 君のおごりでさ。だいぶ売れてるみたいだし、いいでしょ?』


 そういえばそんなことを言われていたっけ。

 俺のデビュー作がバズってくれたのは、生徒会が作ってくれたPVのおかげだ。そのお礼はちゃんとしないと。


「生徒会の皆さんの都合が付くなら、いつでもいいですよ」

『オッケー。また近いうちに連絡するよ。じゃ、このへんで切るね』

「はい。受験勉強頑張ってください」


 通話を終える。真天先輩の頬は紅潮していた。


「打ち上げ、どこでしましょうか?」

「……このまえ真天先輩と行ったピザのお店とか?」

「ああ、それがいいですね! 楽しみにしてます」


 あとはおとなしく読書を再開した。真天先輩もWEB小説を読みふけっていた。

 気がつけば午後十一時。そろそろ眠くなってきた……。


「唯人くん、もう寝ましょうか」

「そうですね……」

「手を出してくれてもいいですよ?」

「出しませんから」


 消灯し、ふたりしておとなしくベッドに潜る。


「ねえ、唯人くん」

「ん……?」

「とっても楽しい旅行でした。また来年も来たいですね」

「……はい。夏休みの恒例になったら嬉しいです」


 真天先輩が手を握ってきた。

 俺はその幸せな温かさを感じながら、穏やかに眠りについた。

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