2-6 真天先輩の膝枕
ふと、頭がボンヤリしてくる。少し眠くなってきた。
「唯人くん、午後はまた遊戯室で遊ぶんですよね?」
「うん……でもその前に、ちょっと昼寝でもしようかな」
「おねむですか? じゃあ一緒にお部屋に戻りましょうか」
「かしこまりました。ごゆっくりお休みなさいませ」
狩谷さんに見送られて、俺と真天先輩は部屋に引き返した。
「ふうう……」
恋人の見ている前で少しみっともないが、羽毛布団の上に直接、だらんと仰向けになった。
「お昼寝って、健康のためにはすごく効果的らしいですね」
真天先輩が言う。そこで俺も思い出した。
「そういえば、積極的に昼寝してるっていう作家も結構いるみたいです。健康にいいだけじゃなくて、脳がリフレッシュされて執筆がはかどるとか」
「じゃあ唯人くんもどんどん寝ちゃいましょうよ」
夏休みの間は日課にするくらいがいいかもしれない。騒がしい学校じゃそうそう昼寝なんてできないものな。
俺はスマホのアラームをセットした。あまり寝過ぎてもいけないと思うので、きっかり一時間後に。
「じゃあ、少し寝ますんで……」
「あ、待ってください。さっきのチェス勝負の約束ですけど」
「ん……? ああ、あれが何か?」
「今、聞いてもらってもいいでしょうか」
はて。これから眠ろうという時に?
「まさか寝込みを襲わせてくださいとか言わないでしょうね」
「ふふっ、それも魅力的ですが違いますよ。わたしに膝枕をさせてもらえないかなって」
「え、膝枕ですか……?」
「わたしたち恋人同士になったのに、これはやったことがなかったなって」
確かに恋人同士の定番シチュエーションだが、やってもらったことはなかった。
「せっかく何でも聞かせられるのに、そんなことでいいんですか?」
「ええ、やらせてください」
真天先輩も羽毛布団の上に移動して、両膝を折り曲げて座った。
「さ、ここにどうぞ」
「……そ、それじゃあお言葉に甘えて」
真天先輩の膝枕にそっと頭を乗っける。
「んっ……」
キャミワンピの薄い生地を隔てて、ふっくらした太ももの感触が後頭部に当たる。それが首筋の強ばりをじわじわとほぐしてくれるかのようで……。
「気持ちよく眠れそうですか?」
「……はい。いい感触です」
真天先輩は今、きっと聖母のような優しい顔をしてくれていると思うのだけど……全然見えない。大いなるカーテンというか緞帳がかかってしまって。
「うーん、唯人くんの寝顔が見えないのが残念ですね」
あちらも同じだったようだ。
「それとも、おっぱい枕のほうがよかったですか?」
「また冗談言って……それより、ずっとこのままでいてくれるんですか? 足、疲れるでしょ」
「大丈夫ですよ。唯人くんは何も気にせず眠ってください」
俺の頭をゆっくりと撫でてくれる真天先輩。
どこまでも心地よい感触の中、睡魔がどんどん忍び寄ってくる。
「子守歌とか、歌ってあげましょうか?」
「赤ちゃんじゃないんだから」
「近い未来の練習も兼ねて♪」
「普通に寝させてください……」
まぶたを閉じる。意識が薄れていく。
「真天先輩……」
「はい、なんですか?」
「ありがとう。すごく楽しいです」
「どういたしまして。まだまだ楽しみましょうね」
その言葉を聞くのを最後に、俺は眠りの世界へと落ちていった。




