2-5 真天先輩の♥裸エプロン♥
「ところでお嬢様、そろそろランチの準備に取りかかろうと思うのですが」
時計を見れば、十一時を回ろうとしていた。真天先輩が頷く。
「そうですね、午前のお遊びはここまでにしましょうか。今日のランチは何を?」
「スパイスカレーにいたします。お嬢様もこれはお作りになったことがなかったかと」
というと、市販のルーじゃなくてスパイスからルーを作るのか。SNSでこれに挑戦している先輩作家がいた気がする。
「俺も見学していいですか?」
「ええ、もちろん。今日こそお嬢様の料理姿をご覧になってください」
「じゃあ、わたしは着替えてきますから。唯人くんは先にキッチンで待っててください」
「よかった。さすがにもう逆バニーはやめるんですね」
*****
「――って、なんでもっと過激になってるんですか!」
キッチンに俺の叫びがこだました。
「だって、これも定番なんでしょう?」
真天先輩はフリルの付いたピンクのエプロン姿で明るい笑みを浮かべた。
正確に言うと、エプロンの他には何も身に着けていなかった。
裸エプロンである。
こんなものフィクションの中にしか存在しないと思っていた……!
「まーた狩谷さんの提案ですか?」
「いえ、今回はお嬢様ご自身の考案でございます」
「マジで?」
「マジですよ。以前エッチなライトノベルを一緒に買ったでしょう? あれに書かれてたのを覚えていたんです」
くるんと一回転してみせる真天先輩。
自慢の特大豊満バストはさっきの逆バニーよりは隠されているが、思い切りがやや抑えられている分、むしろ逆に扇情的だ。横乳も非常に露わで、いつハミ出ないか気が気でない。
そして……お尻は完全に、何にも覆われていない。大きく形のいい白桃がそこにある。昨日のスリングショット水着よりもさらに無防備になるとは。
「……ランチの前に、わたしを食べちゃいますか?」
「食べませんから!」
「料理は私に任せて、ご一緒に部屋に戻っていただいてもかまいませんよ?」
「戻りませんってば! 早く始めてください」
予定通りにスパイスカレーの調理が始まった。狩谷さんが説明する。
「スパイスには大きく分けて二種類あります。粉の状態のパウダーと、砕いていない状態のホールです。今回はどちらも使用します」
小皿に取り分けられた五種類ものスパイスが用意されている。
「ターメリックとコリアンダーがパウダー、クミンとカルダモンとクローブがホールです。まずは油にスパイスの香りを移すテンパリングを行います。お嬢様、フライパンに油をたっぷりと引いて、ホールスパイス三種を投入してください」
真天先輩がフライパンの前に立ち、狩谷さんの指示に従っていく。そのまま強火で一分程度。
「次は刻んだ玉ねぎを茶色になるまで炒めていきます。そのあとはトマトと鶏肉を」
「はーい」
ヘラを動かす度にエプロンに半分だけ包まれた胸が揺れて……あとお尻も……。
「唯人くん、しっかり取材してくださいね」
「あ、ああ。もちろんです」
「裸エプロンで料理するヒロイン、これから小説に書くこともあるでしょうから♥」
「そっちかよ! いやそんなキャラは俺の小説に出しませんから!」
ラブコメは書かないんですかとたまに聞かれるんだけど、とても自信はない。こんな完璧な女性が側にいるのではなおさらだ。
「そうしましたら、ターメリックとコリアンダーパウダーを入れていきます」
「ターメリックってウコンのことですよね。コリアンダーはパクチーの葉が有名で」
「あ、そうなんですか。知らなかった」
水とヨーグルトも加えて炒めていくと、やがて俺たちがよく知るカレールーの状態になっていく。
「ニンニク、ショウガ、塩も適量を加えて、さらに煮込んでいきましょう」
「ん~、ふわっといい香りがしてきますね」
すーっと息を吸い込みながら、真天先輩は頬を紅潮させる。
「これを食べたら、きっと全身が熱くなっちゃいますよ。精力だってグングンに♥」
「冗談はやめてくださいってば……」
「我和様、カレーは元々そうした効果の期待できる料理ですよ。スパイスは滋養強壮に役立つのです」
「も、もうその話題から離れてくださいよ」
じっくりコトコト煮込み続けて……チキンカレーがついに完成した。
直前に炊き上がった白米を大皿によそい、出来たてのルーをかけていく。
「さあ、実食ですよ唯人くん!」
「その前にちゃんと服を着てくださいね?」
真天先輩は初日のキャミワンピに着替えてきた。胸の谷間は相変わらずすごいのに、ものすごくホッとした。
「では、いただきましょう」
「……いただきます」
スプーンでルーと白米をバランス良く取り、口に入れていく……。
「っ……! 美味いっ!」
口から鼻へと突き抜ける爽やかな香気。そこから全身にスパイスの成分が行き渡り、細胞が活性化していくかのようだった。
「ええ、本当に! なかなかよく出来てます」
真天先輩も大満足のようだ。笑顔でパクパク食べていく。
「ラッシーをご用意いたしました」
狩谷さんがグラスに入った乳白色の飲み物を持ってくる。
それを飲むと、ほのかな甘さとレモンの味が広がる。カレーとは別種の爽やかさで口が洗われていった。ますます食が進んでいく。
「インド料理、いいですよね。以前に家族旅行で行ったことがあるんですが」
「海外旅行か、それもいいな……あ、もう食べ終わっちゃった」
「ルーは結構たくさん作りましたから、おかわりしちゃってくださいな」
「そうします!」
やがて、俺も真天先輩もすっかり満腹になった。
「カレーは唯人くんのおうちで作ったことありましたけど、市販のルーでしたよね。でもこれからは毎回スパイスから作りましょうか。いろいろと組み合わせるのが楽しそうですし」
「うん、手間じゃなければぜひ」
「夫に喜んでもらうためなら、妻はどんな手間も惜しみませんよ♪」
下手に色仕掛けしなくても、真天先輩は十分すぎるほどに魅力的なんだよな……。




