2-4 真天先輩とビリヤード勝負
お次はこの遊戯室で一番目立っている、ビリヤードをプレイすることにした。
テレビドラマとかではたまに見るけども、こちらはチェスと違ってさっぱりルールがわからない。ボールを穴に落とせばいいんだな、くらいで。
「では、ナインボールをやってみましょうか。初心者の人には一番わかりやすいかと」
真天先輩がナインボールの説明をする。
①番から小さい順に狙って、最後に⑨番を落とせば勝ち。基本ルールはそれだけだという。
「先攻と後攻はどうやって決めるんですか?」
「バンキング、というので決めます。こちらに来てくれますか?」
ビリヤード台は長方形で、短辺のひとつに真天先輩が立っている。
俺もその隣に立つ。さらけ出された巨乳……いや爆乳がものすごく間近に……!
「この手前側をヘッドクッションと言います。ふたりのプレイヤーは反対側のフットクッションに向けてこの白い手球を撞きます。跳ね返ってきた手球が、ヘッドクッションにより近い方が先攻です」
「ふむふむ」
「じゃ、わたしと同じようにやってみてください」
キューを構える真天先輩。ウサギだけど女豹のようにしなやかな姿勢だ。そしてふたつの釣鐘がぶーらぶらと……。
俺はそれから目を逸らし、真天先輩に倣ってキューを構える。彼女が手球を撞くのと少し遅れて、見様見真似でコンッとやってみた。
俺の手球は、フットクッションまで届いたものの、ほとんど戻ってこなかった。
一方、真天先輩のは手を伸ばせば届くくらいの距離まで戻ってくる。完璧だ。
「わたしが先攻ですね。このあとは的球を並べてブレイクショットをします」
九個のボールが密着して菱形状に並べられると、真天先輩は離れたところで再び手球とキューを取った。
「こうして、①番ボールに命中するように――」
さっきのバンキングよりも慎重に狙いを定めて、勢い付けて手球を撞いた。
「おおっ!」
思わず声を上げてしまった。コーンと大きな音を立てて命中した手球が、色とりどりの的球をテーブル上に散りばめていく。
いやホントに、こんなおっぱい丸出し逆バニーじゃなければすごくカッコよかったんだろうけど。
「さ、次は唯人くんの番ですよ」
「もう俺の番なんですか?」
「今のブレイクショットでどれかがポケットすれば続行できたんですけどね。どれも落ちませんでしたから」
俺は手球を撞けるポジションに移動した。
「①番を狙えばいいんですよね?」
「ちょうど何も邪魔にならない位置にありますね。普通に撞ければ大丈夫ですよ」
俺はドキドキしながら手球、①番ボール、その先のサイドポケットを交互に見据える。
ひとつ深呼吸してから――まっすぐに撞く。
軽い音を立てて手球が①番に当たった。そして、ゆっくりとポケットに吸い込まれていく。
「や、やった!」
「わあっ、お上手です♪」
「ビリヤードって面白いですね! よーし、どんどんいくぞ」
しかし次の②番は落とすことができなかった。真天先輩に交代だ。
「我和様、お嬢様のフォームをよくご覧になってください」
真天先輩のフォームは俺も勉強させてもらいたいと思っていたけど……クイッと突き出されたお尻が目に毒だ。いや全身が目に毒なのだがこの人は。
真天先輩はまるで気負う様子もなく、②番、③番、④番と立て続けにポケットしていく。なんか豪快なジャンプショットまで決めてたぞ。
「真天先輩、ビリヤードもめちゃくちゃ上手いんですね……」
「少し前、プロライセンスの取得を勧められたこともございましたね」
「げっ、そんな人に勝てるわけないじゃないですか」
「いえいえ、このゲームは⑨番をポケットしたほうが勝ちなので。唯人くんもまだチャンスはありますよ」
真天先輩は次の⑤番を落とせず……というか落とさなかったのだろう。ここでまた俺の番になった。
優しい真天先輩はきっと、俺に花を持たせるために手を抜いてくれている。今はそれに甘えて、勝利を目指さなきゃ。
しかしこれが初プレイなものだから、なかなか上手くいかない。
そこから⑤、⑥、⑦番と真天先輩が落としていくが、⑧番はどうにか俺が落とすことができた。
ついに最後の⑨番。もちろん、この局面を迎えられるように真天先輩がお膳立てしてくれたのだ。
「頑張って、唯人くん」
隣で見守ってくれる真天先輩。
しっかり狙って――えいやっと念じながらキューを突き出す。
⑨番はまっすぐに進んで、コーナーポケットへと落ちていった。
「おおお、やった!」
俺はキューを持ったまま、勢いよく振り返って――
「あんっ♥」
その先端が、真天先輩のバストトップに食い込んでいた。
「うわっ、すいません!」
「んっ……唯人くんったら、球じゃなくておっぱいを撞くだなんて♥」
「マジごめんなさい!」
「もっとしてくれてもいいんですよ?」
「やりませんって!」
ビリヤードはここまでにして、台を片付けた。
「それにしても真天先輩、ゲームもいろいろ強いんだな。逆に何ができないんです?」
「小説を書くことはできませんね。少なくとも唯人くんのようには」
うらやましそうに俺を見つめる年上彼女だった。




