2-1 真天先輩のエッチな寝言
「んむっ……」
まぶたの裏に差し込む光で目が覚めた。
「あ、さ――」
目を開けると同時に、いつもの自宅のベッドよりも心地よさを覚える。全身にかかる羽毛布団は輪をかけて気持ちいい。
そうだ、俺は聖川家の別荘の、超高級のキングサイズベッドで就寝したのだった。
昨夜はベッドに入ってからも真天先輩とおしゃべりしていたが、あまりにも快適だったものですぐに睡魔に襲われて――
「んんっ……」
くぐもった声が聞こえた。
そして俺の手の平に、何か尋常でない柔らかさを感じ――
「あんっ……唯人くん……♥」
俺の手は、真天先輩のバスローブを大きく盛り上げるバストを揉みしだいていた。
「うわわっ?」
背中に冷や汗を感じながら慌てて飛び起きた。
真天先輩はまだ目覚めていないようで、目をつぶったまま身をよじらせる。
「むにゃ……やん……わたし、襲われちゃう……♥」
どういう寝言だ。
ともあれ一気に眠気が吹き飛んだ俺は、洗面所で顔を洗って歯を磨いた。
バスローブを脱ぎ部屋着に着替えたところで、真天先輩も起床してきた。
「おはようございます、唯人くん」
「おはようございます、真天先輩」
真天先輩はうっとりした顔を向けてきた。
「わたし、さっきまでとってもいい夢を見てたんですよ。どんなだったか、教えてあげましょうか?」
「い、いいです。心の中にしまっておいてください。俺は先に出てますんで」
一足早く一階の食堂に向かう。
キッチンで物音がしたので覗いてみると、狩谷さんが朝食の用意をしてくれていた。
「狩谷さん、おはようございます」
「おはようございます、我和様。ゆうべはおたのしみでしたね」
どっかで目にしたような台詞だ。
「別に何も楽しんでいないですから……」
「なんと、お嬢様に手を出さなかったのですか?」
「そこまで驚くことじゃないでしょ。……これ、返しておきます。もう使わないと思うので」
昨日受け取った避妊具を狩谷さんに渡す。
「本当にお嬢様を抱かれなかったのですね。この狩谷、我和様の我慢強さを見誤っていたようでございます」
「どういたしまして」
ややあって、真天先輩も下りて来た。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、狩谷さん。朝食は何でしょうか?」
「サンドイッチセットでございます。すぐにお出ししますので、お席でお待ちください」
言われたとおりに待っていると、ハムエッグ、BLT、ロースカツと三種のサンドイッチが綺麗な皿でお出しされた。
そして飲み物は紅茶だ。……何だかものすごく高級そうなティーセットである。
「も、もしかしてこれ……エルメスってやつですか?」
「さようでございます。これも我和様の取材になるかと思いまして」
「わ、割らないように気をつけないと……!」
ちょっと緊張しながらの朝食が始まった。
「んっ……美味い……!」
サンドイッチセットは具材はもちろん、パンが抜群にいい。厳選された国産小麦とかそういうやつに違いなかった。
次にいよいよ……と身構えるのもどうかと思うが、紅茶を飲む。
優美なデザインのカップにそっと口づける。妙に艶めかしい感触が唇に……これがエルメスの味か……変なこと考えてるな俺。
「おおっ……これも美味い」
「ダージリンでございます。我和様は普段紅茶は?」
「コーヒーはよく飲むけど、紅茶はあんまりなんですよね。でもこれからはいろいろ試してみようかな」
「わたしもそれがいいと思ってました。紅茶も飲み比べると楽しいですよ」
朝食は和やかなままに進み、午前の活力がいい感じに得られた。
「唯人くん、今日はどうしたいですか?」
紅茶のおかわりを飲みながら真天先輩が聞いてくる。
「どうしようかな……この近くに何か施設があったりしますか?」
「動物園と、地元ゆかりの小説家の記念館がございます。ただ、動物園は今日休園日ですね」
と、狩谷さん。
動物園なんて子供の頃以来だし、小説家の記念館とあらば新人作家の俺にとっては見逃せない。
「じゃあ外に出かけるのは明日にするとして……今日はずっと別荘の中で遊んでようかな? 遊戯室がありますよね」
「わかりました! わたしがたくさんの遊びを教えてあげますね。ふふふ」
また妖しい笑みを浮かべる真天先輩であった。




