1-9 真天先輩とお風呂タイム①
午後四時を回ったあたりで、俺たちは別荘に戻った。
「はああ……」
普段着に着替え、リビングのソファにぐでんと腰を下ろす。一方の真天先輩は元気溌剌といった様子で。
「唯人くん、お疲れですか?」
「はい……」
真夏の太陽よりも刺激の強い真天先輩のボディと水着のせいです、とは言えない。
「今日は初日ですし、あとはおとなしくしましょうか。海にはまたいつでも出られますからね」
「そう……ですね。夕飯までのんびりしてます」
「おふたりとも、その前に入浴なさってはいかがでしょう」
狩谷さんがやってきてそんなことを言う。
入浴するにはちょっと早い時間のように思うけど……。
「今から準備をすれば、夕焼けの海を見ながらの入浴を楽しめるかと」
「おお……それはよさそうですね」
バスルームはさっき軽く見たけれど、雄大な海の景色が見られるようになっているのだ。
「では、お風呂に湯を張ってきますので。しばしお待ちください」
準備が調ったのは、それからおよそ二十分後だった。
「じゃ、俺が先に入っていいですか?」
「ええ、どうぞ。わたしは後から入ります」
俺は意気揚々とバスルームに向かった。
脱衣所で素っ裸になり、備え付けのボディタオルを手にしてから浴場に足を踏み入れる。
床は清潔感のある乳白色のタイルで、壁面の両側にはシャワーが一個ずつ設置されている。
浴槽は一段高い所に造られており、これがまたすごい。直径三メートルはある円形で、両手両足をめいっぱい伸ばしてもだいぶ余裕がある。
そしてお湯の表面に勢いよく気泡が噴き出ている。ジェットバス、いわゆるジャグジーだ。
「マジですごいな……」
俺はすっぽんぽんのまま感動していた。絵に描いたようなお金持ちのバスルームである。
そこに夕方の柔らかなが陽光が差し込んでいる。アクリル板の向こう、空はほんのりと橙色を帯びていて、さっきまで遊んでいた浜辺もよく見えた。この景色を見るだけで疲れが吹き飛んでしまいそうだ。
「さーて、しっかり体を綺麗にしてから入るか」
俺はシャワーの前に腰を下ろした。
その時――ガチャリと金属音が聞こえた。
「へ?」
「どうですか? いいお風呂場でしょう?」
スッと当たり前のように入ってきたのは――バスタオルを巻いた真天先輩だった。
「まま、真天先輩? なんで?」
「言ったじゃないですか、後から入りますって♥」
「そういう意味?」
普通は俺が出た後で入るって思うだろ! 時間差で一緒に入るなんて思うわけない!
「いやいやいや、まずいですって!」
俺は体を縮こまらせ、ボディタオルでどうにか股間を隠す。
「どうしてですか? 夫婦仲良く入浴するなんて当たり前じゃないですか」
くっ……計算高いとは思っていたが、まさかここまでとは……!
「せ、せめて事前に言ってくださいよ……」
「だって、驚かせたかったんですもん」
今日何度目だろうか、深すぎる谷間のLカップを見せつけながら、真天先輩はニコニコしながら俺の側に跪く。
これでも水着姿よりはよほど露出が抑えられているんだから、俺の感覚もいよいよバグってきている。
「それではまずは、お体を流しましょうね。愛する夫を綺麗にするのは妻の務めですから」
「……もう好きにしてください」
観念した俺は、おとなしく真天先輩に背中を向けた。
ほどよい熱さのお湯をかけてもらってから、ボディソープをたっぷり含んだタオルでゴシゴシしてもらう。
「っ……」
「このくらいの強さでいいですか?」
「う、うん。このくらいで……」
真天先輩の優しい手つきは……愛撫と言っても過言じゃなかった。
限りなくソフトなタッチ。しかし的確に一日の汚れを落とそうと、自分ではおそろかにしてしまう部分もしっかりと擦ってくれる。
「腕、伸ばしてもらえますか?」
言われたとおりにすると、肩から手の甲までをゆっくりと撫で上げるように洗う。右腕も左腕もまんべんなく。
「じゃあお次は、お腹のほうを」
「そ、そっちは自分でやりますって」
「遠慮なさらないで、あなた♥」
ムニュンと、すさまじい柔らかさが綺麗になったばかりの背中に当たる。
お腹を擦るだけならそんな必要もないのに、真天先輩はわざと双丘を押し付けてくる……。
「うっ、おおっ……」
たまらず間抜けな声が出てしまう。そんな俺を抱きしめるようにしながら、真天先輩は再びボディタオルを動かしてくる。
「んっ、ふうっ……さっきも見ましたけど、唯人くんって腹筋、鍛えてますよね? 結構カチコチで」
「……真天先輩と海に行くこともあるだろうって、筋トレするようになって。五月くらいから」
「わたしとお付き合いすることが決まってからですね? 嬉しい……」
真天先輩はさらに特大の胸を密着させてくる。おまけに甘い息を吐きかけてくる。
「わたしにいいところを見せようとして、頑張ってくれて……こんなに素敵な旦那さまと一緒になれて、女冥利に尽きます」
「ど、どういたしまして……! も、もういいです! 十分です」
「ではでは、お次は唯人くんがわたしを洗う番――」
「すいません自分でお願いします!」
俺はシャンプーで雑に髪の毛を洗い全身にザパーンとお湯を被ると、浴槽の中に退避した。もちろん真天先輩のほうは見ないようにして。




