1-8 真天先輩のレロレロヌリヌリ
それから真天先輩は綺麗な貝殻やら小さな蟹やらを見つけては、ほらほらと俺に最接近して見せてくれる。そのたびに実りきった二房の南国フルーツを揺らし、思春期男子の心を煽るのを忘れない。
ラブコメヒロインの定番に無自覚なエロスというのがあるが、真天先輩はそれとは正反対の人だ。大胆さを増すと同時にその計算高さも強化されているようだった。
海辺で戯れていたのは三十分程度だっただろうか。彼女はビーチパラソルを振り返りながら一息ついた。
「唯人くん、ちょっと休憩しませんか? 何か冷たいものでも」
「そう……ですね。熱中症にならないように」
頭が結構火照ってきた。真天先輩の攻勢が激しかったのもあるが、直射日光もそこそこ強い。無理はしないようにしよう。
ビーチパラソルの下まで戻ると、狩谷さんがクーラーボックスを開けた。
「ドリンクとアイスがございますが、どちらにいたしましょう」
「わたしはアイスがいいです!」
「俺もアイスで」
「かしこまりました。ここに取り出したるは、昔懐かしの棒アイスでございます」
それは何の飾りもない、カラフルな丸棒型のアイスキャンディーだった。
「わあっ、いいですねこういうレトロなの! わたしは黄緑のがいいです」
「じゃあ俺は……オレンジ色のにしようかな」
「どうぞ。頭が痛くならないように、ゆっくりお食べください」
俺と真天先輩は棒アイスを受け取った。さっそく一口囓る。
「んんっ、冷たい……! でもこのなんていうか、雑味のない感じがいいですね」
シャクシャクと噛み砕くと、頭の火照りが少しずつ和らいでいくようだった。
――と思っていたのに。
「んんっ、れるっ、れろろっ……」
「……っ?」
真天先輩はアイスを囓らず、先端を舐めていた。赤い舌を出してレロレロと。
「はむっ、れろっ、ああむっ……んむっ、ちゅぶぶっ……♪」
ぷっくりした上下の唇で挟みつつ、丹念に啜ったりもする。溶け出した果汁と唾液が混じり、彼女の口元をベトベトに濡らしていく……。
「ま、真天先輩? 変わった食べ方しますね」
「んっ……ゆっくり食べてと言われましたから。すぐになくなっちゃうのも、もったいないですし♪」
俺を見つめながら……というよりあえて視線を向けながら棒アイスをチュパチュパする。目を逸らさなければいけない気がした。
しかし彼女はそんな俺の思惑を読み取ったかのように。
「唯人くんのも食べてみたいなぁ。ちょっと交換しませんか?」
「あ、ああ。いいですよ」
俺は自分のを差し出そうとしたが――
「いえ、そのまま持っててください。はあむっ♪」
「ちょ、ちょっと?」
自分から咥え込みにいった?
「ぺろっ、れろっ、んんっ、ふううっ……唯人くんの、おいし……♪ ちゅりゅっ、んぢゅっ……」
かかりそうになる髪の毛を掻き上げながら、俺の棒を可愛らしく頬張る。
いちいち体を前後に揺らすものだから、また胸がブルンブルンしまくって……!
「んっ、れるろっ……もっと食べちゃって、いいれふか……?」
「う、うん……真天先輩の好きなだけ」
「んふふっ、それじゃあ遠慮なく。じゅるるっ♪」
「我和様のほうからグイグイ出し入れするのもありかと」
「狩谷さんは黙っててくれませんかね?」
……ともあれ、アイスのおかげで体はほどよく冷えてくれた。
「えっと……真天先輩、このあとはどうしますか?」
「しばらくはおとなしくしてます。ところでこんなのも持ってきたんですが」
真天先輩は自分の荷物から何かを取り出した。チューブタイプの容器で、UVという文字が見える。
「ああ、日焼け止めですか。俺はそういうの持ってこなかったな」
「唯人くん、塗ってくれませんか?」
「お、俺が?」
「自分じゃ手の届かない部分もありますから」
そう言いながら、真天先輩はレジャーシートの上にうつ伏せになった。
紐のような生地を食い込ませた、剥き出しで無防備なヒップが俺の前に晒されて……。
「か、狩谷さんがやってくださいよ」
「お断りいたします。お嬢様は我和様をご指名なさったのですから」
冷徹に突き放されてしまった。
「ほらほら、早くぅ♪」
「せ、背中だけですからね! 俺が塗るのは」
容器の蓋を開けてクリームを手の平に取る。適量がどれくらいかわからないが、ちょっと多めにしておこう。
「じゃあ、いきますよ……」
手の平をそっと、真天先輩のなだらかな背中に押し当てる。そしてクリームをゆっくりと擦りつけていく。
「んっ……くすぐったい……♪」
俺が手を動かす度に真天先輩のボディはピクッとする。お尻は意識的に見ないようにした。
しかしそうすると今度は、うつ伏せになったことでムニュリと潰れるバストがどうしても目に入る。横から覗くそれはとても柔らかそうで……。
って、そうだ。目をつぶればいいんだ。それでも背中にクリームを塗りつけるくらい造作もない。
俺は視界を閉ざした。落ち着こうと努めながら手を動かしていたが……。
「ひゃんっ♪」
「うわっ?」
慌てて目を開けた。
ああなんと! 俺の手の平はいつの間にか彼女のお尻を触っていた……!
「す、すいません! わざとじゃないんです!」
「目を閉じれば大丈夫などと油断なさるからですよ」
ツッコミを入れる狩谷さんである。
「謝らなくていいですよ。そのままお尻にも塗ってくれませんか?」
「やりませんってば!」
「ふふっ、そうですか。もう背中は十分です。じゃああとは、自分でやりますね」
真天先輩は起き上がり、俺から日焼け止めクリームを受け取った。
両手いっぱいにクリームを取ると……俺がさっき触ってしまったお尻をむんずと鷲掴みにする。
「んっ……普通の水着なら、こんなところに塗る必要はないのですけどね♪」
ぬりぬり、ぬりぬり。わざわざ俺に背を向けて、見せつけるようにクリームを塗り込んでいく。彼女の手の平がその大ぶりな桃をたわませる……。
「唯人くん、塗り残しがないかチェックしてくれませんか?」
「お、俺しばらく向こうに行ってます!」
勇気ある撤退である。俺は真っ青な海に向かって全力で逃走した。




