1-6 真天先輩とプライベートビーチへ
食べ終わると、食後のコーヒータイムに。この別荘にも各種コーヒー器具は勢揃いで、狩谷さんの淹れてくれたお店で飲むような濃厚なカフェインを味わえた。
「唯人くん、午後はいよいよビーチに出ようと思うんですが」
真天先輩は優雅にカップを傾けながら言った。俺はもう心臓がバクバクしてしまっている。
「は、はい。海水浴……ですよね」
「お嬢様が男子に水着姿を見せるなど、小学校の水泳の授業以来だったかと」
「確かそうですね。今の学園も中学校時代も、水泳の授業は男女別でしたから。夏休みは毎年ここに来るので、普通の海水浴場やプールに行くこともなくて」
カップを置く真天先輩。穏やかに唇を曲げている。
「じゃあ、わたしが先にお部屋で着替えます。一足先にビーチに出ていますので、唯人くんは後から狩谷さんに連れて来てもらってください」
「……わかりました」
水着姿は海辺で初めて見せたいということらしかった。
俺はそのまま食堂に残り、心を落ち着かせようと努めた。
(真天先輩の水着姿……いったいどんな……)
昨夜、女性の水着の種類について調べた。
大きく分けてワンピースタイプとビキニタイプがあるのは知っていたが、そこからまたいろいろデザインが細分化するようで。
真天先輩は「ちょっと大胆な感じのを選んだんです」と言っていたから……やはりビキニだろうか? すると色はなんだろう。さっきまで着ていたキャミワンピのような白か。それとも正反対の黒か。赤か、青か、黄色か……?
やがて洗い物を終えた狩谷さんが俺を促した。
「お嬢様がビーチに向かわれました。我和様もお着替えくださいませ」
部屋に戻って服を脱ぎ、水着を履く。学園指定のスクール水着ではさすがにカッコ悪いので、柄物のちょっとオシャレなのをシャツと合わせて買ったのだ。
「……うん、なかなか決まってるかな」
真天先輩の恋人として最低限恥じない姿だと思う。
エントランスに向かうと、狩谷さんがメイド服のまま、両脇にビーチパラソルとクーラーボックスを抱えて待っていた。
「ほう……よくお似合いですね。ザ・夏の男という感じです」
「どっちか持ちますよ」
「ではクーラーボックスをお願いいたします。参りましょうか」
燦々と輝く夏の太陽の下に出る。
近年は地球温暖化がますます進んでいるのか、気温が四十度近くなることも珍しくなくなった。しかしここはそこまで暑くは感じない。
「わりと涼しいですね」
「海風の影響がございますから、ヒートアイランドの都会よりは快適ですよ」
道すがら、狩谷さんは積極的に話を振ってくれた。
「私が初めてここに来たのは、もう十数年前。それから毎年、ご家族のお世話係として同行させていただいております。もちろんお嬢様の水着姿も毎年拝見しておりました。うらやましいでしょう」
「そ、そうですね……」
「小学生の頃は、それはもう愛らしかったのですが……中学入学あたりからのご成長ぶりは本当に素晴らしく。合う水着がなかなかないと相談されることもありました」
刺激的なエピソードを聞きながら道を下りていくと――
「うわ……!」
左右を岩壁に囲まれた、全長百メートルくらいはありそうな浜辺だった。
ファンタジー世界のどこかみたいな、一点の穢れもない乳白色の砂が敷き詰められていて、穏やかに青色の波が打ち寄せている。永遠に続くような水平線の向こうに、これまた真っ白な雲がスクラムを組みながら浮かんでいる。
許可のある者以外は、誰も立ち入れない聖地。そんな美しい場所に、俺の恋人は佇んでいた。
「どうですか、聖川家のプライベートビーチは」
「すごいです……日本にこんな場所があったなんて」
真天先輩はジャージを着用していた。学園指定のものだ。
「唯人くん、素敵な水着ですね! 夏の男って感じです!」
「はは……さっきも狩谷さんに言われました」
その狩谷さんはせっせとビーチパラソルを設置している。俺はその傍らにクーラーボックスを置いた。
「わたしと海で過ごすために、頑張ってオシャレしてくれたんですね。嬉しいです」
「うん……真天先輩の前でカッコつけたくて」
すると彼女の頬がほんのり染まっていく。
「わたしも、唯人くんに……いっぱいドキドキしてもらいたくて」
真天先輩はジャージのファスナーに手をかけた。
俺が息を飲む中、ファスナーはゆっくりと、焦らすように下ろされていく。
最初に白い山と谷間があった。
次に、赤い生地が見えた。
――その形が奇妙だった。
ワンピースではない。しかしビキニでもなく。
真天先輩はジャージを上下とも脱ぎ捨てて、すべてを露わにした。
「………………………………ッッッ???」
それはV字型のような……いやV字そのものだった。
彼女の胸の大事な部分と、股間だけが絶妙に隠されていて。
俺が魚のように口をパクパクさせていると、真天先輩は天使の笑みで言い放つ。
「スリングショットっていう水着です♥ ちょっと大胆でしょう?」
「ちょっとどころじゃないですーーー!!!」




