1-4 真天先輩と別荘へ
車はいつしか大通りを外れていた。
やがて見えてきたのは「ここから先、私有地につき立ち入り禁止」の看板。その向こうに伸びているのは、童話に出てくるような木々の緑あふれる小路だった。
そこからまたしばらく走ると、樹冠のトンネルが開けて再び青空が見えてくる。
その下に、俺たちが今日からしばし過ごす目的地があった。
「あちらが聖川家の別荘でございます」
狩谷さんの運転するベンツは、流れるように建物の横の駐車場に入った。
「さあ、着きましたよ!」
ルンルンと嬉しそうに車を降りる真天先輩。きっかり二時間のドライブだった。
外に出ると、むわっと暑い空気が肌に張り付く。しかしそんなことは気にならないほど俺は圧倒されていた。
二階建ての別荘は輝かしいばかりに白く、瀟洒という表現がピッタリだった。ヨーロピアンスタイルというのだろうか、塔みたいのが配置されていて、地元の住宅街ではまず見かけない造り。聖川家の邸宅と同じく、有名な建築デザイナーが手がけたんだろうと思った。
そして別荘が面しているのは、どこまでも雄大な海だ。ほのかな風と潮の匂いが鼻腔をくすぐってくる。
「すごいな……ここから先は私有地って看板がありましたけど」
「このあたり一帯、すべて聖川家の土地でございます」
狩谷さんは平然とスケールの大きなことを言う。
「提携している業者の他は、どなたも入ってくることはございません。あちらに浜辺が見えるでしょう? プライベートビーチでございます」
三人して海の方角を見つめる。数分も歩けば辿り着けそうな場所にそれは広がっていた。
「プライベートビーチなんて、本当に実在するんですね。俺は普通の海水浴場で遊ぶのかと思ってて」
「わたしの水着姿、唯人くん以外に見せるわけないじゃないですか♪」
真天先輩はニコリと微笑む。どこか妖艶な微笑みでもあった。
「それとも、唯人くんはかまわなかったんですか? わたしが他の人にジロジロ見られても」
一瞬口ごもる。真天先輩がどんな水着姿になるのかは、まだわからないけど――
「……それは絶対イヤです」
「でしょう? わたしだって、唯人くんだけに独り占めしてもらいたいんですから」
「独り占めはまた後ほどに。まずはお部屋にご案内いたしましょう」
トランクから荷物を取り出して、狩谷さんに付いていく。
玄関の扉が開かれると、絵画がいくつか飾られた文化的なエントランスが目に飛び込んできた。外観もそうだけど、本当にお金持ちの別荘って感じだ。
「前日にハウスクリーニングを行っておりますので、快適に過ごしていただけます。必要な食材や飲み物も、すでに運び込まれております」
「お料理はいつも通りわたしと、狩谷さんも手伝ってくれますので。ここにいる間は糖質制限なしでいいですよね?」
「は、はい。ごちそう楽しみにしてます」
靴を脱ぎ、スリッパを履いて階段を上っていく。
そして廊下を突き当たった一番奥の部屋に到達した。
「こちらがおふたりのお部屋になります」
……ん? おふたり?
部屋の中に足を踏み入れる。
丸テーブルに二個の椅子、化粧台、サイドボードといった調度品があって。
さらに、やたら幅広の……キングサイズと呼ばれるベッドが。
「ここは本来、旦那様と奥様の夫婦部屋です。おふたりがおられませんので、今回はお嬢様と我和様がご使用ください」
「えっと、お父さんとお母さんの許可は」
「この私、狩谷の判断でございます」
ポーカーフェイスでメガネクイッする敏腕メイドであった。
むにゅり、と二の腕に途方もない柔らかさが当たる。真天先輩がまたしてもその豊満なバストを押し付けていた。
「これから三泊四日、よろしくお願いしますねあなた♪」
「普通に呼んでくださいね?」




