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書籍化決定!!したらS級美少女の先輩が通い妻になった  作者: アライコウ
第一部 憧れの先輩が俺の妻になるまで

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44/90

エピローグ 真天先輩と歩む道

「わあっ、本当に唯人くんの本が……! しかも平積みですよ!」


 俺と真天先輩は地元から数駅の大型書店を訪れていた。ゴールデンウィークのデート以来だ。

 俺たちの学園は今日から夏休みに入っている。そしてちょうど本日が俺のデビュー作の発売日だった。


 当日になったら店頭で売られているのを一緒に確かめよう――前から決めていたことだったので、終業式のあとは家にも戻らず、すぐに電車に乗って駆けつけたわけである。


「じゃあ、一冊買っちゃいますね」

「えっ? 真天先輩にはプレゼントしたじゃないですか」


 本が完成すると発売日前に、著者用に何冊か出版社から送られてくるのだ。彼女にはそのうちの一冊をすでに渡していたのだが……。


「これは保存用ですよ」

「あ、なるほど」

「しっかりカバーをかけてもらって、大事にしまっておかなきゃ。うふふっ♪」


 そこへ、俺と同年代の男子が近づいて声をかけてきた。


「あの、もしかしてタダヒトさん?」

「はい、そうですけど」

「生徒会の動画いつも見てます! 『最強英雄は苦悩する』を買いに来たんですけど、まさか本人がいるなんて!」

「あ、ありがとうございます……!」


 俺の胸に感動の嵐が巻き起こっていた。

 俺の本を買ってくれる人が、目の前にいる。それも小遣いは決して多くないであろう十代の学生がだ……。


「握手してくれますか?」

「俺なんかの手でよかったら」


 彼は俺の手を強く握ってきた。


「実は僕も、小説を書いてみようかなって思ってて……でもいまいち一歩が踏み出せずにいたんですけど、何だか勇気をもらえた気がします。帰ったらやってみようかと!」

「そうですか。お互い頑張りましょう!」


 彼は俺の小説を手に取ると、興奮冷めやらぬ顔でレジに向かっていった。


「唯人くんのおかげで、小説を書く勇気が出てきた……そういう人が、これからもっと増えるはずですよ」

「……そうだと嬉しいですね」


 俺だって誰かの書いた小説を読んで、自分もこんな風に書いてみたいと思ったのが始まりだった。

 その俺が、また別の見知らぬ誰かを後押しできるなら……これほど作家冥利に尽きることはないと思う。


 買い物を済ませたあとは寄り道せず、地元に戻った。


「お父様とお母様の許しは得ていますから、夏休み中は毎日通いますね♪」


 真天先輩は制服姿のまま俺のマンションに来て、さっそくお昼ごはんの支度をしてくれる。


「聖川家の用事はないんですか? 旅行とか」

「ああ、それでしたら例年、海の近くの別荘に泊まりに行くんですけど――」


 真天先輩は少し照れながら口にする。


「今年は唯人くんと行けたらいいなって」

「お、俺とですか?」

「両親に何とか頼んでみます。というより、絶対許可をもらいますから!」


 思わず生唾を飲み込んでしまう。

 海の近くの別荘で、真天先輩とお泊まり。それはつまり――


「……わたしの水着姿、見たいでしょう? もう買ってあるんですから」

「マジですか」

「ちょっと大胆な感じのを選んだんですよ♥」


 真天先輩の水着……そんなのどんなものであれ大胆に決まっている……!


「精の付くお料理をいっぱい作らなきゃ! 少し待っててくださいね」

「は、はい。俺は執筆部屋にいますから」


 ドキドキする心臓を抑えながら俺はパソコンの前に移動した。

 まずはチャットツールを開くと、新規のメッセージが入っていた。早乙女さんからだ。


「……えっ?」


【㊗『最強英雄は苦悩する』の重版が決まりました!

 発売当日に重版はデビュー作としては大快挙っス!

 さらに続刊にもGOが出ました!

 さらにさらに! コミカライズもすることになりました!

 詳しいことはまた後日打ち合わせしましょう!】


 俺は呆然としていた。

 情報量が多すぎて、飲み込むのに少し時間がかかった。


 重版、続刊、そしてコミカライズ。

 絶対に実現してみせる――そう意気込んでいたものの、実際はどうなるかなんてわからなかったこと。


 それが、全部、全部……叶ってしまうのか……?


「う、うおおっ……」


 俺は椅子に座ったまま、背中を丸くして、動物のように唸った。

 ほんの少し前のまだ一投稿者に過ぎなかった俺に言っても、そんなこと絶対に信じてもらえないだろう。


 やっていける。俺は、この世界でやっていける……!


「そうだ、真天先輩にも教えなきゃ。いや、もう少し落ち着いてから……」


 俺は呼吸を整えた。まだパソコンの前にいることにしよう。

 よし、お次はメールのチェックだ。


「――ッッッ!」


 それは久しぶりの感覚だった。

 コンテストで受賞した時。

 真天先輩に新作小説を初めて読んでもらい褒めてもらった時。

 とても形容のしきれない大きな感情が、全身の隅々まで行き渡っていく感覚――


【企業様からのご連絡】


 そんな件名で始まるメールを、俺はまた呆然としながら目を通していった。


 何度も何度も読み直して……もうとても落ち着けなかった。


 俺は震えそうな足をどうにか動かしてキッチンに戻った。エプロン姿の真天先輩が振り向く。


「唯人くん? どうしました?」

「……重版が決定したそうです」


 真天先輩はハッとなって料理の手を止めた。


「『最強英雄』がですか? まあまあ、おめでとうございます!」

「それと、続きも出しましょうって……」

「じゃあ、二巻目を出せるんですね? すごいすごい!」

「あ、あと……コミカライズもするって……!」


 真天先輩のもともと大きな目が、さらに驚きに見開かれる。


「わあ……わああっ……!」


 もう言葉にならないみたいだ。


「そ、それと……!」

「ま、まだ何かあるんですか?」

「しょ、書籍化の打診がありました……『勇者は語り継がれたくない』の……!」


 公開からしばらく経って、読者は順調に増えていた。

 でもさすがにすぐに書籍化なんてしないよな。世の中そう甘くないよな。そう思っていたのに……まさかこのタイミングで……!


「唯人くん、それじゃあ……わたしの両親と約束したこと、もう叶って……?」

「えっ? あっ……そういえばそうだ……」


 高校生のうちに三冊を出し、コミカライズもすると約束した。

 真天先輩と結婚するために自分からそんな条件を持ち出して……まずは有言実行できるか見守ろうと言ってもらえたのだけど……。


「唯人くんっ……!」


 満面の笑顔で、真天先輩が抱き着いてきた。

 手を握ったことはあったけど、それよりもずっとずっと柔らかくて、温かな感触が全身を覆っていく。


「わたしたち、結婚できますっ!」

「う、うん……!」


 俺からも思い切って、愛しい人を抱きしめた。

 ああ、幸せに包まれるというのはこういうことだ。

 こんな素敵な女性が、仕事だけじゃなく、人生のパートナーになってくれる……。


「わたし、ますますサポート頑張りますから! 大ヒット作家を目指しましょうね!」

「ああ、任せてください! 真天先輩を養ってみせますから!」

「ふふっ……養うのはわたしだけ?」


 いたずらっぽく微笑む真天先輩。


「しょ、将来的には、家族全員を」

「ええ! 張り切ってくださいね、パパ♪」

「気が早すぎますって!」


 真天先輩は少し目を伏せ、頬を赤らめる。


「ところで、前に言いましたよね。何もかも上手くいったら、もっといいことしてあげるって」

「……うん、覚えてます」


 以前、頬にキスしてくれたことがあった。

 次は何をしてくれるんだろうと待ち焦がれていたんだけど、今日に至るまで何もなかったのだが……。


「いろいろ考えまして……ちょっと遅れましたけど、やっぱり一生一度の、デビュー作の発売日にするのが一番いいかなって」


 ふわりと天使が舞い降りる。

 ――というのは、ちょっと手垢にまみれた表現かもしれない。だけどそれ以外に思いつかなかったし、一番ふさわしいと思った。


 正真正銘の、ファーストキス。

 たっぷり十秒間はあっただろうか。真天先輩はゆっくりと唇を離した。潤んだ瞳でまっすぐに見つめてくる。


「唯人くん、これからもあなたの人生のヒロインでいさせてください」

「真天先輩、ずっと俺だけのヒロインでいてください」


 俺は小説では、今後もいろいろな女性を作り上げ、描いていくだろう。


 だけどこの現実では、彼女だけ。


 まだまだ新人作家の俺。きっとたくさんの困難が待っているはず。


 それでも真天先輩がいてくれれば、どんなことだって乗り越えていける。


 さあ、俺自身の物語は、ここからが本番だ。

これにて第一部・完となります。ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白かったと思われた方はぜひ★評価、感想をいただければ幸いです。

第二部も同じペースで更新していきますので、引き続きお楽しみください。

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