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聖母バフが強すぎる、隠れ里へようこそ~魔王軍を殲滅した最強の娘たちが、実家でママの『あーん』を待っています~  作者: 寝不足魔王


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第23話:精霊たちのクリーニング屋? 里の洗濯物が輝きすぎる件

 隠れ里『聖母の箱庭』の洗濯場には、かつてないほどに清涼で、神聖な魔力の渦が巻き起こっていた。

 事の始まりは、水路に居着いた水の精霊「プル」が、サツキに頭を撫でられながら放った一言だった。


『お母様の石鹸の匂い、最高! こんなに優しくて香ばしいお水、精霊界の友達にも教えてあげなきゃ勿体ないよ!』


 サツキが「あらあら、プルちゃん。お友達を呼んでくれるの? 賑やかでいいわねぇ」と、近所の子供を招くような気軽さで微笑んだ瞬間、里の空流が激変した。


 ヒュオオオオッ! と、心地よい微風が里を駆け抜ける。

 空から小さな竜巻のような「風の精霊」たちが舞い降り、どこからともなく「光の精霊」たちが金色の粒となって降り注いだ。彼らは皆、サツキが干したシーツの「太陽の匂い」と、サツキ自身の放つ圧倒的な母性に引き寄せられてきたのである。


「あらまぁ! キラキラした子がたくさん! いらっしゃい、みんな。ちょうどお洗濯を始めるところよ」


 サツキが大きな洗濯籠を地面に置いた瞬間、精霊たちの「クリーニング無双」が幕を開けた。

 それはもはや家事という概念を通り越し、世界創生にも似た神聖な儀式へと昇華されていた。


『任せて! 私が汚れを一瞬で弾き飛ばすよ!』

『私は風でシワを伸ばすね!』

『私は聖なる光で一気に乾かしちゃう!』


 水の精霊プルが、魔法で生み出した超高圧かつ超低刺激な清浄水流で衣類を包み込み、繊維の奥底に潜む目に見えない微細な汚れまでを一瞬で分解・排除する。

 そこへ、ダンスを踊るように舞い降りた風の精霊たちが、衣類を空中で高速回転させた。遠心力と繊細な風圧を完璧に制御し、余分な水分を分子レベルで弾き飛ばしながら、一本一本の繊維をふっくらと立ち上がらせていく。

 仕上げは光の精霊たちの出番だ。彼女たちは紫外線――もとい、浄化の聖光を一点に集中させ、わずか数秒で「完璧な殺菌と完全な乾燥」を完了させた。


「まぁ……! お洗濯物が、もはや眩しくて直視できないほど真っ白だわ! 助かるわぁ」


 サツキのシャツが、物理的な白さを越えて自ら発光し、神聖なオーラを纏ってカゴの中へ収まっていく。

 この「家事の効率化」という名の奇跡を前に、黙っていられない者たちがいた。


「ちょっと! ママのシーツを干すのは、私の『神速』の特権なんだから! 精霊たち、そこを退きなさい!」


 アリアが、普段は伝説の魔獣を屠るための抜剣術を「洗濯物を広げる動作」へと全振りした。

 シュパパパパッ! と残像を伴う腕の動きで、アリアは物干し竿に次々と衣類を掛けていく。しかし、風の精霊たちがふわりと衣類を浮かせてしまい、アリアの手が届く前に完璧な配置で空中に整列させてしまう。


「あぁぁ、もう! 私の出番が! 私の、ママへの貢献度が減っちゃうじゃない!」


「……不快。……精霊、……物理法則、……無視。……効率、……良すぎる。……ママ。……私の、……魔導乾燥、……必要?」


 ルナが、自身の火炎魔法を極限まで精密に制御し、衣類を傷めない「心地よい温風」を掌から放とうとする。だが、光の精霊たちが放つ浄化の熱量は、湿気だけを狙い撃ちにして消滅させるという反則じみた精度を誇っていた。


「お黙りなさい! お母様の衣類に触れていいのは、選ばれし家族である私だけですわ! 不浄な……いえ、お気楽な精霊ごときが、お母様の家事に参加するなんて、百億年早いですわよ!」


 セシルが「ママ専用の最高級洗剤(自作の神聖魔法入り)」を手に参戦し、里の洗濯場は最強の乙女たちと精霊たちによる「ママのお手伝い権」を巡る、火花散る戦場と化した。


(きゅう、きゅうっ! ……おい、そこの風の精霊! ママのスカートを捲り上げすぎだ、不敬だぞ! 光の精霊、ママに直接光を当てるな、眩しいだろ!)


 縁側の特等席から、地響きのような念話を放ったのは現場監督のシロである。

 伝説の天狐であるシロの威圧に、精霊たちが「ははーっ!」と一斉にその場に平伏し、里の洗濯場に鉄の規律が生まれた。


(……よし。僕の指示に従え。プル、すすぎは三回だ、ママは肌が敏感なんだからね。風、シワは一ミクロンの狂いもなく伸ばせ。光、生乾きの臭いなど万死に値する、完璧に浄化しろ)


 シロが「現場総監督」として君臨したことで、里の洗濯物はもはや「衣類」ではなく、着るだけで全ての状態異常を無効化する「伝説の防具」へと昇華された。


「あらあら、みんなのおかげで、午前中にお仕事が終わっちゃったわ。助かるわぁ。……よし、ご褒美に、今日はみんなで『干し芋』を食べましょうね」


 サツキが、庭の棚でじっくり乾かしておいた「加護たっぷりの干し芋」を大皿に盛って持ってきた。黄金色に透き通ったその芋は、サツキの愛情を吸い込み、噛むほどに優しい甘みが溢れ出す。


『ぷるぷる! お母様、私、このお芋のためなら一生ここで洗濯する!』

『私も! 王都の荒い風より、ここでお芋食べてる方が千倍幸せ!』


 精霊たちは、サツキの全肯定スマイルと、その「お母さんの味」の破壊力に完膚なきまでに骨抜きにされ、もはや精霊界へ帰る気など一ミリもなくなった。


「あらあら、大家族になっちゃったわねぇ。シロちゃん、明日からはおやつの量をもっと増やさなきゃね」


(きゅう。……まぁ、家事が楽になるならいいけどさ。……でも、ママ、僕の毛玉取りだけは、精霊じゃなくてママの指でやってね? これだけは、絶対に譲らないんだから!)


 シロが甘えるようにサツキの手に鼻先を寄せ、満足げに喉を鳴らす。

 里を包むのは、石鹸の清潔な香りと、サツキの穏やかな笑い声。

 世界のバランスを司るはずの精霊たちすらも「おやつ」と「褒め言葉」で忠実な従業員にしてしまう、隠れ里の恐るべき(温かい)平和は、今日も空高く発光する洗濯物と共に続いていくのであった。


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