11.「三人目」
2階にあるアサの部屋は元が広くないところに、さらにひどく散らかっていて、アサは急いで3人の座る場所を作ろうとしていた。
そこにはコミック雑誌や脱ぎ捨てた服、背番号の入ったユニフォーム、ティッシュやら新聞なんかが乱雑に置いてあり、床も見えない有様だった。
「アサは何かスポーツでもしてたの?」
シンがさほど興味もなさそうに話題を振る。
「そう、いくつかめの小学校では野球、一個前の中学だとバレーやってた。でも毎回チームと仲良くなる前に親父の転勤でね、もう母さんもいないから洗濯やらお弁当やらも面倒で、もう今回はやる気ないんだ。」
アサはさっきと打って変わり敬語をやめてすっかり話しやすくなったのか相手の反応も見ずにシンとも話せている。
先ほどの名前の話もそうだが、アサの母親が亡くなったのはそう前のことではないのだろう。
母親の話をするときだけ少し揺れたように強くなる語気に、まだ癒えていない喪失を感じさせた。
「棚のレコード見てもいい?」
シンはそう言うと答えも待たずに十数枚あるレコード棚を見始めたので俺もシンに倣った。
「toe10か、最近不良天国って流行ってたよね、こっちは侍隊の君とだけだ、これも結構いい曲だよね。赤い分度器も、キムラの新曲もある!」
最近テレビで流れるポップスグループのレコードが並んでいて、そちらにも造詣の深いシンは少し興奮している。
「そうだよ、違う学校にいってもみんなと話が合うようにって親父と母さんが無理して買ってくれるんだ、親父は一緒に聞いても最近はこれがいいのかってよくわからなそうだけど。」
その光景を思い出したのか少し笑いながらアサが言う。
「コウとシンの言うバンドっていうのは、ジャイアンツとかスパロウズみたいなギターとかドラムとかの人たちのことでしょ?それともアンカーズみたいにコントもやったりするの?」
「もちろんああいうのも最高だしバンドだ。ギターもドラムも必要。でもやるのはああいう曲でも、ましてやコントでもない、ロックンロールさ。」
俺がいうと、アサはなんのことやらという感じでぽかんとしている。
「ロックって、親父が話してるのを聞いたことあるけど、、もう禁止されてるとかの。どんな音楽なの、そんなにヤバいやつなの?」
「そうだな、ヤバいはヤバいのかもな、シン。」
アサの語彙が足りない様子が面白くてシンに話を振る。
「そうだな、とりあえずもうアサはメンバーだ、僕がさっき決めた。コウはギター、僕はピアノ。ベースとドラムと、ギターがもう1人足りないんだ、好きなのを選んでよ。」
シンは身勝手なことを言い切ってから首を傾げて数秒考えると、
「そうだな、ヤバいもヤバい、まだアサが聴いたこともない頭と胸にズドンと来るやつのことさ。今から僕の部屋で聴いてみよう。」




