第十話 悲しさはどこまで連鎖するのか
ミスカンドラと別れ、行く先に目的もなく歩いていると、城の隅で一人の男の子がしゃがんでいた。
見た目はお世辞にも綺麗とは言えなく、ボロボロの洋服とボロボロのぬいぐるみを持っていた。
「どうしたんだ? こんなところで?」
俺が話しかけるとその子は目を丸くして驚き、どこかへ走っていってしまった。
なんで逃げるのだろう?と思ったが、思えば今の俺は魔王だ。この姿に子供が驚くことも仕方のないことだ。
すでに俺の視界にはさっきの少年は見えなくなっている。
別にその少年のことが特別気になると言うことはなかったが、これといって城内ですることもなかったので逃げた少年を探すことにした。
とは言っても、あの少年の行く当てなど全く分からないため、とにかく城の隅々を探し回った。
まだ知らなかった部屋や、前の戦争のせいでボロボロになった箇所など、城内の新たな発見はあったが、肝心の少年はなかなか見つからなかった。
もう探し始めてからどれほど経っただろう。明るかった空ももう暗くなっている。
もしかしたら、あの少年はこの城の近くから離れていってしまったのかもしれない。
それならこれ以上探しても仕方がない。お腹も空いてきたことだし、夕飯を食べに食室へ向かおうと歩みを進めた時、誰かの声がした。
「お母さーん、お父さーん。もう僕一人は寂しいよ。そろそろ出てきてよ」
俺は声の元へと向かうと、そこにいたのはさっきの少年だった。
「おい、君」
俺が話しかけると、少年はまた驚いた顔、いや恐怖を感じている顔をしてその場から逃げようとした。
しかし、今度こそ少年の腕をガシッと掴み、逃げるのを阻止した。
「さっき言ってた意味、どう言うことだ?」
俺が聞いても少年は恐怖に押しつぶされている顔をして、一向に言葉を発そうとはしない。
そこで俺は考えた、質問の方向性を変えてみようと。
「お母さんやお父さんに会いたいのか?」
すると少年はさっきまでが嘘のように流暢に話し始めた。
「うん。会いたい! 会いたいよ!」
「そうか。じゃあ俺がお母さんとお父さんの元へ連れて帰ってやろう」
きっとこの少年は迷子だろう。まだ俺はこの国の土地勘はないが、アージェンタム達に頼めば両親くらい見つかるだろう。
「ほんと!」
この時の少年の顔はさっきとは別人のように純粋で無垢だった。この俺が子供欲しいなと思うほどに。
「あぁ、俺に任せろ。じゃあ君の家はどこら辺にあるんだ?」
すると少年は東の方向を指差した。
「あっち側か、じゃあ俺達と一緒に探そうか」
「あっ、でももう無くなっちゃった。この前の戦いで」
「え? じゃあお父さんとお母さんは」
「あの戦いの途中でどっか行っちゃって、そこから分からない」
「そ…そうか…」




