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《第2章 第2話 桜霊の継承者》

翌朝。

 校舎の窓から射し込む光が、やけに白く感じた。

 桜咲学園の中庭では、散りかけた花びらが風に乗って流れていく。

 月城朋広は、その光景をただ静かに見つめていた。


 昨夜の出来事――夢の中の少女の言葉が頭から離れない。

 「継ぐ者」

 その響きが、まだ胸の奥でくすぶっている。


 すると、不意に背後から声がした。

「……月城くん?」


 振り向くと、そこに立っていたのは桐生ひよりだった。

 まるで何事もなかったかのように、

 制服姿のまま微笑んでいる。


「ひより……?」

「どうしたの?顔が真っ白だよ。」


 夢の残像と現実が重なり、思わず息を呑んだ。

 彼女の存在そのものが“夢”の延長線のように見えた。


「昨日、君は……」

 言いかけて、言葉が途切れた。

 ――消えたはずの彼女が、目の前にいる。


 ひよりは小さく首を傾げ、手を伸ばした。

 その手が朋広の頬に触れた瞬間、

 また、あの“風”が吹いた。


 桜霊の香り。

 彼女の瞳に淡い光が宿る。


「覚えてる……あの夜、あなたが私を呼んだ声。」

「ひより……やっぱり……君は……」

 言葉が詰まり、喉が震える。


 彼女は笑った。

「私も、夢の中であなたに会ってたの。

 ずっと、何かを伝えようとしていた気がする。」


 その瞬間、校庭の桜が一斉に揺れた。

 まるで二人の再会を祝福するように。


放課後、二人は古桜の下に立っていた。

 春の光がやわらかく差し込み、風が二人の髪を撫でる。


「ここに来ると、心がざわめくの。」

 ひよりが呟く。

「懐かしいのに、初めてのような……そんな感覚。」


 朋広は頷いた。

「きっと、俺たちはこの桜に何度も導かれてるんだ。」


 彼の声に、ひよりはふっと笑みを浮かべた。

「それって……運命、なのかな?」

「そうだとしたら、もう逃げない。」


 その言葉に、ひよりの瞳が少し潤む。

 風が吹き抜け、桜の花びらが二人の間を舞った。


 その一枚が、ひよりの胸に触れた瞬間――

 淡い光が広がった。


 「ひより!?」

 朋広が手を伸ばすと、光は彼の掌に移り、

 彼の中で何かが弾けた。


 ――“記憶の継承”が始まる。


 頭の奥で、無数の映像が流れ込む。

 前世、そして“原初”の記憶。

 桜の下で誓った約束、散るたびに繰り返された出会い。


 ひよりの声が遠くで響いた。

 「次の春も、必ずあなたに――」


 光が消える。

 気づけば、彼は一人で立っていた。

 手の中には、淡く輝く花びらが一枚。


 その中心に刻まれていたのは、

 ひよりの名を象る“桜紋”だった。


 ――桜霊の継承は、ここから始まる。


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