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『世界の果てまで、ただ知りたいから!好奇心の翼 ~四つの世界を巡る少女の記録~』  作者: 新米オッさん兵士


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第22話 浮遊舞踏会と、銀と紫の舞

エアリアル・クラウンの十日目の夜は、特別に美しい星空に包まれていた。

リリアはリアナの屋敷の控室で、鏡の前に立っていた。銀と淡い青のグラデーションが施されたドレスが、風の魔法で軽やかに広がっている。胸元と袖に散りばめられた小さな風の結晶が、動きに合わせてキラキラと光を反射し、銀色のセミロングヘアに編み込まれた細いリボンが優雅に揺れていた。紫の瞳が興奮と少しの緊張で輝いている。

「わぁ……本当に、私なの……?」

ウィンディがリリアの肩の上で「きゅううう~!」と大きな歓声を上げ、四枚の翼を忙しく羽ばたかせた。白と水色のふわふわした体が興奮で少し青く光っている。

リアナが後ろから近づき、優しく微笑んだ。

「とてもよく似合っているわ、リリア。銀髪と紫の瞳に、このドレスは完璧よ。今日は私の正式な客人として、堂々としていなさい」

リアナ自身も深みのある水色のドレスを着ており、金髪に風の宝石を飾った姿はまさに空中貴族の令嬢そのものだった。彼女はリリアの肩に手を置き、耳元で囁いた。

「緊張している?」

「はい……少し。でも、すごく楽しみです。空の皆さんがどんな風に踊るのか、どんな音楽が流れるのか、全部知りたいんです」

リアナはくすっと笑った。

「あなたらしいわ。ウィンディも一緒に連れて行きましょう。あの子がいれば、きっと場が和むわ」

浮遊馬車で会場へと向かう道中、リリアは窓から見える夜の雲海に息を飲んだ。無数の浮遊島の灯りが星のように輝き、中央の巨大な浮遊宮殿「クラウン・ホール」が青白い光を放っている。ホール全体が風の魔法で軽く浮かび、周囲を光の橋が何重にも取り囲んでいた。

会場に到着すると、豪華な光の拱門が一行を迎えた。門をくぐった瞬間、優雅な弦楽器と風の笛の音がリリアを包み込んだ。広大なホールは天井が開いており、夜空と雲海がそのまま見渡せる。床は透明な風の結晶でできており、足を踏むたびに淡い光の波紋が広がった。

「すごい……ここが、浮遊舞踏会……」

貴族たちが優雅に集まり、ドレスやタキシードが風に合わせてふわふわと浮かんでいる。リリアとリアナが入ると、視線が一斉に集まった。

「リアナ様の客人……下界の人間?」

「銀髪が美しい……」

リアナは堂々とリリアの腕を取り、貴族たちに紹介していった。

「私の客人、リリア・ヴェルンよ。地上から空を求めて来た、純粋な記録者。今日は特別に招待したわ」

最初は冷たい視線もあったが、ウィンディがリリアの肩で「きゅう~♪」と可愛く鳴くと、周囲の空気が少し和らいだ。ある貴族の老婦人がウィンディを見て微笑んだ。

「まあ、可愛らしい雲精霊……」

舞踏会が本格的に始まると、中央の舞台で風のオーケストラが演奏を始めた。音楽は軽やかで、風の流れをそのまま音にしたような旋律だった。

リアナがリリアの手を取った。

「まずは私と一緒に。ステップは昨日練習した通りよ」

二人はホールの中央へ進み、軽く浮かびながら踊り始めた。ドレスの裾が風に広がり、リリアの銀髪が夜空の中で輝く。ウィンディは二人の周りをくるくる回りながら、小さな風を起こしてリリアを支えてくれた。

「右足を滑らせるように……そう、上手よ、リリア」

リリアは最初はぎこちなかったが、音楽と風に身を任せるうちに、自然と笑顔になった。

「楽しい……! 本当に、空を飛んでるみたい!」

周囲の貴族たちも徐々に輪に加わり、ホール全体が優雅な舞で埋め尽くされた。リリアはリアナと何度も交代で踊り、他の貴族の青年ともペアを組んだ。誰もが最初は驚いた顔をしていたが、リリアの純粋な笑顔とウィンディの可愛さに、徐々に温かい視線に変わっていった。

休憩時間に、リアナはリリアをバルコニーへ連れて行った。そこからは雲海と星空が一望できる最高の場所だった。

「どう? 空の舞踏会は」

「最高です……! みんな綺麗で、音楽も、風も、全部が夢みたい。リアナさん、誘ってくれて本当にありがとう」

リアナは少し照れくさそうに視線を逸らした。

「……あなたが来てから、空が少し変わった気がするわ。下界の人間が、こんなに純粋だなんて思わなかった」

ウィンディが二人の間にちょこんと座り、浮かぶフルーツを「きゅう!」と嬉しそうに食べている姿を見て、リアナは珍しく大きな笑顔を見せた。

夜が更けるにつれ、舞踏会はクライマックスを迎えた。ホール中央で巨大な風の魔法陣が輝き、全員が一斉に浮かび上がって大円舞を踊る。リリアはリアナと手を繋ぎ、ウィンディを肩に乗せたまま、夜空の中でくるくると回った。

「えへへ……世界中で一番素敵な夜だ……!」

舞踏会が終わった後、リリアは宿に戻り、興奮冷めやらぬままベッドに座ってノートを広げた。今日はこれまでで一番長い文章を書き続けた。

『第10日 浮遊舞踏会

 ドレスは風に当たるたびキラキラ光って、まるで星の欠片をまとっているみたいだった。

 音楽は風そのもので、体が自然に浮かんでしまう。

 リアナさんと最初に踊ったときは緊張したけど、すぐに楽しくなった。

 ウィンディがずっと周りを飛んで、みんなを笑顔にしてくれた。

 貴族の皆さん、最初は冷たかったけど、ウィンディのおかげで優しい目で見てくれた。

 夜空の中で大円舞を踊った瞬間、胸がいっぱいになった。

 空の民も、地上の人と同じように笑ったり、楽しんだりするんだ。

 この旅は、知ることだけじゃなくて、

 人と繋がることの素晴らしさも教えてくれている。

 ウィンディ、リアナさん、ゼフィールさん……

 みんなと出会えて、本当に幸せ。

 明日からも、もっともっと空を知りたい。』

ウィンディはリリアの銀髪の中に深く潜り込み、今日一番幸せそうな長い寝息を立てていた。

リリアは窓の外に広がる夜の雲海を見つめながら、静かに微笑んだ。

銀色のドレスは部屋の椅子に掛けられ、風の結晶がまだ淡く光っている。

浮遊舞踏会という華やかな夜は、リリアの心に新しい色を加えた。

好奇心の翼は、今日も美しく、優雅に羽ばたいていた。

(第22話 終わり)

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