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『世界の果てまで、ただ知りたいから!好奇心の翼 ~四つの世界を巡る少女の記録~』  作者: 新米オッさん兵士


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第21話 浮遊舞踏会と、銀色のドレス

エアリアル・クラウンの八日目の朝は、特別に美しい光に満ちていた。

リリアは宿のテラスで深く息を吸い込み、銀色のセミロングヘアを朝風に優しくなびかせた。紫の瞳は眼下の雲海を映して輝き、遠くに連なる浮遊島が朝陽を受けて淡い金色に染まっている。肩の上でウィンディが「きゅう~♪」と元気よく鳴きながら、四枚の小さな翼をぴょこぴょこ動かして朝の体操をしていた。

「ウィンディ、今日はいよいよ浮遊舞踏会だよ! ドレスを着て、空を舞うんだって……すごく楽しみ!」

ウィンディはリリアの頰に飛びつき、ふわふわの白と水色の体をすり寄せて甘えた。「きゅうきゅう!」という可愛い声が朝の風に溶けていく。リリアは笑いながらウィンディを抱き上げ、頰ずりした。雲のような柔らかさと温かさが、胸いっぱいに広がる。

朝食はテラスで。浮かぶ雲果実のジャムを塗ったパン、香りの違う三種類のハーブティー、そして小さな風の結晶で飾られたクッキー。リリアは一つずつ丁寧に味わいながら、ノートに細かく書き留めた。ウィンディは自分の小さな皿に置かれた果実を突つき、「きゅう!」と喜びの声を上げている。

食事が終わると、リアナからの迎えの馬車が宿の前に到着した。今日はリアナの専属仕立て屋が同行しているという。馬車の中でリアナは上機嫌だった。

「リリア、今日は一日かけてドレスを仕立てるわ。私の屋敷の工房を使うから、ゆっくり時間をかけましょう」

「わぁ……本当ですか!? ありがとうございます、リアナさん!」

リアナの屋敷に着くと、すぐに工房へ案内された。広々とした部屋には無数の布地、風の魔法で浮かぶリボン、輝く結晶が並び、十人以上の仕立て師が待機していた。

「この子が今日の主役よ。銀色の髪と紫の瞳に合う、最高のドレスを作って」

仕立て師の女性がリリアの体を丁寧に測り始めた。布地を何十種類も当てられ、リリアは目をキラキラさせながら質問を連発した。

「この布、風に当たると光るんですね! このリボンは浮かぶんですか? ドレスはどうやって空を舞う仕組みなんですか?」

リアナは椅子に座って優雅にお茶を飲みながら、時々笑っていた。

「あなた、本当に何でも知りたがるのね。……まあ、いいわ。浮遊舞踏会では、ドレスに風の魔法陣を縫い込んで軽く浮遊させるの。ステップを踏むたびにふわっと舞い上がるわ」

ウィンディは作業台の上でくるくる回りながら、浮かぶリボンを追いかけて遊んでいた。仕立て師の一人がウィンディを見て微笑んだ。

「この雲精霊も一緒に連れて行くんですか? とても可愛い……」

ドレスは三時間かけて完成した。色はリリアの髪に合わせた淡い銀と青のグラデーション。スカート部分は風の魔法で軽やかに広がり、胸元と袖に小さな風の結晶が散りばめられている。背中は大きく開き、動きやすいデザインだ。

リリアは鏡の前に立ち、息を飲んだ。

「わぁ……これが、私……?」

ウィンディが「きゅううう~!」と大きな声を上げて喜び、リリアの肩に飛び乗った。リアナは満足そうに頷いた。

「とても似合っているわ。あなた、意外と貴族のドレスが似合うのね」

午後からは舞踏会の練習が始まった。リアナが自ら相手をして、基本的なステップを教えてくれる。空中で軽く浮かびながら踊るのは最初は難しかったが、ウィンディが小さな風を起こして支えてくれるおかげで、徐々に上達した。

「右足を一歩、左足を滑らせるように……そう、上手よ」

夕方近く、リアナはリリアに小さな耳飾りをプレゼントした。

「これは私の家宝のひとつ。紫の宝石があなたの瞳と同じ色よ」

リリアは胸がいっぱいになり、深々と頭を下げた。

「リアナさん……本当に、ありがとうございます。空に来てよかったって、改めて思いました」

夜、宿に戻ったリリアはベッドに座り、今日の出来事をこれまでで一番丁寧に、長い文章でノートに書き続けた。

『第9日 浮遊舞踏会の準備

 リアナさんの工房は夢の国みたいだった。

 何十種類もの布地が浮かんでいて、全部触りたくなった。

 完成したドレスは銀と青のグラデーションで、風に当たるとキラキラ光る。

 ウィンディがずっと一緒にいて、励ましてくれた。

 舞踏会のステップは難しかったけど、ウィンディの風が助けてくれた。

 リアナさんが教えてくれるときの顔が、すごく優しくて嬉しかった。

 明日は本番の舞踏会。

 貴族の皆さんと一緒に空を舞うなんて、想像しただけで胸がどきどきする。

 この旅で出会った人たちに、ちゃんと感謝を伝えたい。

 ウィンディ、明日も一緒に綺麗に踊ろうね。』

ウィンディはリリアの銀髪の中に深く潜り込み、幸せそうな長い寝息を立てていた。

リリアは窓を開け、夜の雲海と浮遊島の無数の灯りを眺めた。銀色のドレスを隣に掛け、紫の瞳に静かな期待を宿す。

明日という日は、きっとこれまでの旅で一番華やかな一日になる。

好奇心の翼は、今日も優しく、しかし確実に広がり続けていた。

(第21話 終わり)

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