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『世界の果てまで、ただ知りたいから!好奇心の翼 ~四つの世界を巡る少女の記録~』  作者: 新米オッさん兵士


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第23話 舞踏会の余韻と、雲の上の小さな冒険

浮遊舞踏会の翌朝、エアリアル・クラウンは柔らかな朝焼けに包まれていた。

リリアは宿のベッドからゆっくりと起き上がり、銀色のセミロングヘアを指で優しく梳いた。紫の瞳には昨夜の興奮がまだ残っており、頰が自然と緩む。部屋の椅子に掛けられた銀と青のドレスは、朝の光を受けて淡く輝いていた。

「昨日の夜……本当に夢みたいだった……」

肩のあたりにふわふわとした温もりを感じて手を伸ばすと、ウィンディが「きゅう~……」と眠そうな声で顔を出した。白と水色の毛並みが少し乱れ、昨夜の舞踏会で飛び回りすぎた疲れが残っているようだった。

リリアは優しくウィンディを抱き上げ、両手で包み込んだ。雲のような柔らかさと、ほのかに甘い風の香りが指の間から溢れる。

「ウィンディ、おはよう。昨日はたくさん飛んでくれたね。ありがとう。ウィンディがいなかったら、もっと緊張してたよ」

ウィンディは「きゅうきゅう♪」と甘えた声を上げ、リリアの頰に体をすり寄せてきた。小さな四枚の翼がぴょこぴょこと動き、朝の光を反射してキラキラ輝いている。リリアは笑いながらウィンディの頭を指先で丁寧に撫で、銀髪の中に戻してあげた。

テラスで朝食を取った。宿の主人が特別に用意してくれた、浮かぶ雲果実の盛り合わせと、風の香りのする温かいミルク。リリアは一口ごとに味わいながら、昨夜の思い出をノートに書き始めた。

『第11日 朝

 舞踏会の余韻が、まだ胸の中に残っている。

 銀色のドレスを着て空を舞った感覚は、言葉にできないくらい素敵だった。

 ウィンディが私の周りを飛んでくれたおかげで、怖くなかった。

 リアナさんの手が温かくて、貴族の皆さんの視線も、だんだん優しくなった気がする。

 空の音楽は、風そのものだった。

 体が自然に浮かんで、夜空と雲海がぐるぐる回った……

 こんな経験、世界中のどこにもないと思う。』

朝食の後、ゼフィールが宿を訪れた。銀色の短髪を朝風になびかせ、今日は少しカジュアルな風の衣装を着ている。

「おはよう、リリア。昨夜は華やかだったね。貴族たちの間で、あなたとウィンディの話題で持ちきりだよ」

「えへへ……本当ですか? ウィンディのおかげです!」

ゼフィールは微笑みながら提案した。

「今日は少しゆっくり浮遊島を回ってみないか? 舞踏会で疲れたと思うから、のんびりした島がいい。『ミスト・ガーデン』という、雲の花がたくさん咲いている島があるんだ」

「行きたいです! ウィンディも連れて行きますね」

三人は小型の浮遊ボートでミスト・ガーデンへ向かった。島は名前の通り、薄い霧に包まれた美しい庭園島で、無数の雲の花が風に揺れ、淡い色のパステル調の花弁がゆっくりと舞っている。

リリアはボートから降りると、すぐにノートを取り出した。

「わぁ……この花、雲から生えてるみたい! 触ると冷たくて、でも柔らかい……匂いは甘いミルクみたい……」

ウィンディは大喜びで花の間を飛び回り、「きゅうきゅう!」と興奮した声を上げながら、花びらを追いかけている。時々疲れてリリアの肩に戻り、甘えるように体を預けてきた。

ゼフィールは花畑のベンチに座りながら、静かに語った。

「この島は、昔から癒しの島として知られている。貴族たちも疲れたときに訪れるんだ。……リリア、舞踏会はどうだった?」

「最高でした! みんな綺麗で、音楽も、風も……でも、一番嬉しかったのは、リアナさんが私のことを客人として紹介してくれたことと、ウィンディが一緒にいてくれたことですね」

午後になると、三人は島の奥にある小さな泉へ移動した。泉の水面は鏡のように澄んでおり、周囲に浮かぶ光の蝶が舞っている。リリアは泉のほとりに座り、ウィンディを膝の上に乗せて休憩した。

ウィンディはリリアの指を小さな翼で包むようにして、「きゅう~」と幸せそうに鳴いた。リリアはウィンディの体を優しく撫でながら、ふと呟いた。

「ウィンディ……あなたと出会ってから、空の旅がもっと楽しくなったよ。ありがとう」

そのとき、遠くから軽い風の音が聞こえてきた。リアナが小型の浮遊ボートでやって来たのだ。金髪を風になびかせ、水色の軽やかなドレスを着ている。

「みんな、ここにいたのね。昨夜の舞踏会の後、皆さんがリリアのことを褒めていたわ。特にウィンディの可愛さが話題よ」

リアナは泉のほとりに座り、リリアと並んだ。珍しく穏やかな表情で雲海を眺めている。

「リリア、あなたが来てから……私の世界が少し広がった気がする。下界の人間を、ただの迷惑だと思っていたのに……あなたは違うわ」

リリアは照れくさそうに笑った。

「私も、リアナさんと出会えてよかったです。最初は怖かったけど、今は大好きです」

夕方近く、四人は一緒にミスト・ガーデンを散策した。雲の花を摘んだり、浮かぶ蝶を追いかけたり、ウィンディが花びらで遊ぶ姿をみんなで笑ったり。穏やかな時間がゆっくりと流れていった。

夜、宿に戻ったリリアはベッドに座り、今日の出来事をこれまでで一番長く、細かくノートに書き連ねた。

『第11日 ミスト・ガーデン

 雲の花は本当に幻想的で、風に舞う姿が夢のようだった。

 ウィンディが花の間を飛び回る姿が可愛すぎて、ずっと見ていたくなった。

 リアナさんが自ら来てくれて、一緒に過ごせて嬉しかった。

 泉の水面に映る空の景色は、地上では絶対に見られない美しさ。

 みんなで笑いながら花を摘んだ時間は、宝物になった。

 舞踏会の余韻と、今日の穏やかな一日で、

 空の旅がますます好きになった。

 ウィンディ、リアナさん、ゼフィールさん……

 この出会いが、もっと大きなものになっていく予感がする。

 明日からも、たくさん知りたい。

 空のすべてを、ちゃんと記録したい。』

ウィンディはリリアの銀髪の中に深く潜り込み、今日一番幸せそうな長い「きゅう~……」という寝息を立てていた。

リリアは窓を開け、夜の雲海と浮遊島の灯りを眺めながら、静かに微笑んだ。

舞踏会の華やかさと、今日の穏やかな一日。

どちらも大切な思い出になった。

好奇心の翼は、今日も優しく、穏やかに羽ばたいていた。

(第23話 終わり)

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