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変なのいるってよ  作者: 9どう?亜依


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10/12

『増えてたってよ』後編

その日の夕飯。

美咲はスマホで動画を見ながら言った。


「ママ、今日も猫おったん?」


「……いたわよ。今日は、3匹」


「3匹!? え、昨日2やったのに?」


「そうなのよ……なんか、増えすぎじゃない?」


「人気なんちゃう?ママの餌おいしいんやろ〜」


軽くからかわれて、恵子は笑い返したが、

違和感は消えなかった。


猫の増え方。

模様。

動きの一致。


(あれは……偶然の範囲なのかな)


食器を洗っていても、

庭の白い影たちが頭に浮かんで落ち着かなかった。



---


四日目の昼。

雲の薄い日で、庭に陽が柔らかく落ちていた。


恵子が洗濯物を取り込もうとして外に出ると――


「……4匹」


じわりと血の気が引いた。


昨日3匹だった白猫たちが、

今日は4匹、均等な距離で横一列に並んでいる。


揃い方が“自然の動物”ではなかった。


「……あんたたち……どういうことなの?」


問いかけても猫たちは一切鳴かない。

ただこちらを見つめている。


恵子は早足で洗濯物を抱え、

家の中に逃げるように入った。


(さすがに……おかしい)



---


その夜。

夕飯を食べ終えた美咲がふらっと庭を覗き、


「ママッ! ちょっと!」


驚いた声に恵子は急いで駆けつけた。


そこには——


5匹の白猫が、

完璧な半円を描くように並んで座っていた。


距離は昨日より近い。

庭の中央ではなく、

家にだいぶ寄った位置。


恵子の顔には、

もう笑いが生まれなかった。


「……ちょっと待って。なんで5匹なの?

増え方、普通じゃないわよね……」


美咲は苦笑気味に言った。


「ママが餌あげとるからやん〜。

猫カフェみたいになってるで」


(違う……そういう増え方じゃない)


恵子は胸の奥がざわざわして、

カーテンを急いで閉めた。


閉める直前、

5匹全員が、

同じタイミングで首をかしげた。


呼吸が止まりそうになった。



---


夜10時前。

美咲は寝室へ行き、静かになった家。


リビングだけに明かりが灯る。

恵子は落ち着かず、温かいお茶を淹れようとキッチンに向かっていた。


そのとき——


庭から砂のこすれる音がした。


「……風?」


カーテンの隙間からそっと見る。


外灯の薄明かりの下、

庭の中央に白い影が見えた。


5匹の白猫が、

家ぎりぎりの位置まで近づいていた。


庭と家の境界線、

ほぼ“ゼロ距離”だった。


「……嘘でしょ……」


白猫たちは微動だにせず、

ただ家を、

恵子を、

じっと見ている。


恵子が立ち上がると、

5匹全員が“わずかに”顔を持ち上げた。


その一致した動きは、

もはや自然ではなかった。


一歩、後ずさる。


5匹は動かない。

でも視線だけが、

ピタリと恵子に固定されていた。


恵子の喉が震える。


(もう……これ以上は無理)


カーテンを閉めかけたその瞬間——


白猫たちは全員、

同じタイミングで恵子の方へ顔を向けた。


完全に、

揃って。


可愛らしさは一切なく、

ただ、不気味さだけが残る表情だった。


恵子は震える手で、

カーテンを一気に閉じた。


閉める直前、

5匹の白猫は、

一斉にまばたきをした。

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