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白銀の王と歌姫のお話~アマーリエは恋がしたい~  作者: コトリちゃん


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8/22

7.白銀の王

 なんだかとても良い夢を見たような気がします。

 あたたかくて、少しくすぐったい。

 こんな私をぎゅっと抱きしめてくれる、あの優しい腕の温もりがまだ背中に残っているようです。


「ふふっ」


 思わず笑みがこぼれました。

 鳥のさえずりが聞こえて、窓の方を見るとカーテンの隙間からは朝陽が差し込んでいました。


 ああ、なんて気持ちの良い朝なのでしょう。


『アミィ、起きたの?』


 ――ッ?!


 ふいに声がして、思わず飛び起きました。

 見ると、私の横で白銀の毛に覆われた子犬が身体を丸めてこちらを見ています。

 その瞳は、とても印象的な金色でした。


「犬?」


 人の声がしたのに、そこにいるのは犬です。

 どういうことなのか理解できずに固まっていると、


『アミィ? 僕は犬じゃないよ。これでも僕は狼で、この大陸の森を守ってるんだ』


 狼で、森を守っている。

 となると、あれかしら?

 この国の神話にも出てくる、白銀の王……?


『そうだよ、アミィ。僕はその血を引くもの。まだ王じゃないけどね』


 えーと、ちょっと待ってください……

 心の声を読まれてる?

 さっきから寝起きの頭がきちんと働いてくれなくて、混乱しまくりです。

 

「あの、まずあなたのお名前を伺っても?」


 私は目の前の小さな狼に尋ねてみました。


『僕の名前はネーヴェ』

「ネーヴェ?」

『そう。で、君はアミィ、僕の愛しい番』


 番……私が??


「いやいや、待って。番とか言われても困るわ。だって、私はこれでも《《一応》》結婚したばかりなのよ?」


 私が慌ててそう返すと、ネーヴェは何故かクスクス笑いました。


「え、何?」

『いや、だって、困るのはアミィが《《一応》》は結婚してる事であって、僕が狼だってところじゃないんでしょ?』


 ……え?

 あ、確かにそこには考えが及んでいませんでした。


「ふふっ」


 なんだかおかしくなって、また笑ってしまいました。


『僕の大切なアミィ』


 白銀の狼ネーヴェは、揺らめく金色の瞳で私を見つめながら、まるで甘えるように擦り寄ってきます。


 そういえば、ネーヴェは私のことを愛称で呼んでくれるのですね。

 恥ずかしながら、私は今まで誰からも愛称で呼ばれたことがないのです。


 なんだかとても嬉しくて、私は思わずネーヴェの体を撫でました。


『ふぁっ』

「あっ、ごめんなさい! 触ったらダメだった?」


 ネーヴェが身を捩ったので、私はサッと手を引っ込めました。


『いや、違うよ。あまりに気持ちがよくてつい……』


「気持ちいいの? じゃあ、触ってもいい?」

『もちろんだよ。あとで、僕もアミィに触れていい?』


 小さな狼のネーヴェが、私を見上げて聞きました。

 ふふっ、なんてかわいいお顔なのかしら。


 その時の私は、この可愛い姿にすっかり油断していました。

 だからうっかりこう答えてしまったのです。


「もちろんよ。私、あなたをたくさん撫でたいわ。だからあなたも、私に好きなだけ触れていいからね」



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