6.僕の愛しい番
(???視点)
「アミィ……」
今日という日を、僕は何度夢見ただろう。
眠りについた彼女の傍に歩み寄る。
やっとだよ、やっと愛しいアミィに触れることができるんだ。
「遅くなってごめんね……」
月明かりの射しこむ寝室。
ベッドで眠るアミィの顔に前髪がかかっていた。
かわいい顔がよく見えなくて、僕はそっと指先で髪をかき分けた。
――!!
目元が光って見える。
可哀想に……泣きながら眠ってしまったんだね。
泣き濡れたアミィの目じりに口付けて、まだ乾かないその涙をペロリと舐めとった。
今日、アミィが十七歳になった。
これでもう、森の掟に阻まれることはない。
成人した番には、僕たちも姿を見せ、直接触れることが許される。
だからやっと迎えに行けるんだって、朝からずっとドキドキしてたんだ。
日が暮れたらすぐ人型になって、いつもの離れに飛んでったのにアミィの姿はどこにもなくて……
荷物も片付けられていて、嫌な予感しかしなかった。
そういえばここしばらくアミィの歌声が聞こえてこなかった。
歌声が途切れると、僕にはアミィの居場所がわからなくなってしまう。
だって、僕らは歌で繋がっているから。
不安な気持ちに駆られて、必死になってアミィの気配を探っていると、微かに彼女の歌声が届いた。
僕はありったけの霊力を使って、その声の残響をたどったんだ。
そうしてようやくアミィの居場所を探り当てたと思ったら……もうこんな時間で。
ねぇ、なんでこんな遠く離れたロンバルディの地にいるの?
そう思ってこの森の動物達に聞いてみれば、今日、ロンバルディの坊ちゃんが花嫁を迎えたんだって!
はあ? ふざけてんの?!
アミィは僕の番なんだよ?
何年もずっと、アミィだけを見守って今日この日を待ちわびてきたのに。
それをロンバルディの坊ちゃんが、横からかっさらったってこと?
……もう、やっちゃっていいかな?
しかもこんな寂しい離れにまたひとりぼっちで寝させるなんて――
……ん?
いや、そこはむしろ助かったって喜ぶべきところだよね、うん。
どういうつもりか知らないけど、今夜、アミィに手を出されてなくてホント良かったぁ……
僕は眠るアミィの身体から、男の匂いがしないことに心から安堵している。
けど念入りに探ると、ほんの少しだけアミィのおでこからイヤな感じがして、すかさず自分の唇で上書きしておいた。
そのままゆっくり、アミィのベッドに潜り込む。
僕は緊張しながら、おそるおそる彼女に触れた。
起こさないように、そっと。
そっと、胸に抱き寄せる。
ああ、柔らかいな……
ずっと、ひとりぼっちで寂しそうなアミィを見守ることしかできなかった。
番が成人するまでは、どんなに助けてあげたくても見守ることしかできないんだ。
それが森の掟だから。
でも……やっと、こうして今夜抱きしめてあげることができた。
アミィからは甘い匂いがして、ついかじりつきたくなる。
僕は少しだけって言い訳しながら、アミィの頬に自分の頬を寄せた。
そんなことをしても、彼女は少し身動ぎしただけで、目を覚ますことはなかった。
こんな遠いところまで連れてこられて、よほど疲れたんだね。
もう大丈夫だよ。
「誕生日おめでとう、アミィ。これからは僕がずっと傍にいるからね」
だから、安心して眠って……
僕は愛しいアミィを胸に抱きしめて、その背中をさすりながら眠りについた。




