第24章 結婚式場のオーナー
この式場を営んで、もう数十年になるのお。
この式場は、ワシの人生そのものになるんじゃな。
数多くの若人が、ここを経て、新たな人生を送り始めたんじゃ。
最近は、簡易な式が流行っているようで、やりがいを感じないんじゃがな。
その昔は、それはそれは派手な演出じゃったのにのお。
~ ・ ~
ほお、そうか、お前さんの所の末っ子、結婚するんか。
式はもう挙げたけど、ちゃんとした式じゃ無かった?
なんじゃそれ?
ああ、地元でもう一回、結婚式を挙げ直すのかぁ。
律義な奴じゃのう。
うむ、1週間後で良ければ、ちょうどドタキャンされとるから、会場が空いとるぞ。なんでも、マリッジブルーを拗らせて、話が白紙になったのだとかのぉ。
あ、これは聞かなかったことにしてくれんか。信用問題じゃからな。
なぁに、キャンセル料は頂いておる。全額ではないが、赤字にはならん。
で、この日を外すと、先が結構埋まってはおるんじゃが……
本当に良いのか?
招待状とか、ドレスとか、準備に色々と掛かるもんじゃぞ?
まあなぁ。お前さんの力なら、何とか出来るんじゃろうなぁ。
どうせ、キャンセル料は頂いておるからのぅ。
間に合わんくても、お前からキャンセル料は取らないでおいてやるわい。
うむ。そっちのスーパーにウチのプランナーを寄こすからの。
~ ・ ~
お父様に頼まれたのですね?
はい、お任せください。
お勧めのプランは、こちらになります。
え?
ゴンドラプラン、本当にいいんですか?
最近はすっかり稼働率が落ちてしまって、こちらとしては助かるというか、張り切りますけど。ご本人様の了承を得ないままですと……
ああ、全部任せて下さるんですか。
お急ぎなんですね。承知致しました。お任せ下さい!
でも、そうしますと、お値段の方が、こんな形に……
宜しいんですか? 本当に?
は、はい! 最高の結婚式にしてみせますとも!
ええ、絶対、絶対に間に合わせます。
ウチの式場の総力を挙げて、間に合わせてみせますとも!
~ ・ ~
新郎新婦に会ったのは、なんと、当日の事じゃった。
ああ、なんて立派な若者なんじゃ。
わしには分かる。分かるんじゃ。
こ奴は出来る。素晴らしい奴じゃ。
わしの結婚式会場に、最上級の仕事を与えてくれたからのう。
スタッフも総出で、張り切って仕上げてきたんじゃぞ?
そうか、分かるか。一流の仕事人のお前さんなら、きっと分ってくれると思っておったぞ。
そうじゃ。お前さんのご両親も、ここで結婚式を挙げたんじゃぞ。
しかしなぁ、最近の若いもんは、地元で結婚式なんて、挙げなくなってしまったからのお。
お前さんはなんて、なんて親孝行な息子なんじゃ。
立派じゃ、立派じゃぞ……
花嫁さん、本当に綺麗な人じゃな。
そして、どこかで見たことがあるぞ。
間違いない。
アメリカからの米輸入問題を解決した、ラーメン外交の立役者だったお嬢さんじゃろう。
あれはキレイじゃった。よく覚えておる。
ああ、そうかぁ。あのお嬢さんの婿に、お前さんがなるんじゃな?
……いや、違うな。それなら、地元で結婚式なんぞせんじゃろう。
先に結婚式を済ませたとか、言っておったな。
あれか、皇龍の結婚式か!
知っておる。この界隈では珍しい結婚式の情報が入って来るからのう。
ああ、あの結婚式を取り仕切ったのは、お前さんかぁ。
なるほど、道理で若いのに貫禄があるわけじゃな。
そうかそうか。道理でのう……
でも、美しく着飾った新婦の前でデレデレするのは、どんな男でも変わらんもんなのじゃ。
ワシは、そういう男たちをたくさん見て来たからのぉ。
おまえさんの親父さんも、そんな感じじゃったよ。
おまえさんたち、本当に親子なんじゃな。まるでそっくりじゃよ。
(終わり)




