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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
念願のスローライフを送ったら、討伐対象になりました。
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【PV4,000記念】 姫様、異世界に行く夢を見ました。前編

ある日。


ミナエモン城(仮)で昼寝をしていた私は、こんな夢を見た。


「星野美苗さん、ご愁傷様でした」


天使が、一応申し訳なさそうに頭を下げる。


「……今度はなんで死んだのよ?」


「ゴキブリもどきと間違えまして」


「もはやゴキブリですらないものと間違えるって、どんな神経してるのよ!」


「まあまあ。今回も三つ願いを叶えて転生させますんで」


ふむ。


どうせ夢だ。


だったら今度こそ、完璧な願いを考えてやる。


「今度は赤ん坊からスタートしたい」


これなら、いきなり四十五歳から十八歳になるなんてこともない。


「衣食住に困らない生活を送りたい」


これで、毒キノコしかない森に放り出されることもない。


「それから、周りから姫様扱いされたい」


完璧だ。


赤ん坊からスタートして、みんなからチヤホヤされて、衣食住にも困らない。


今度こそ悠々自適な人生が待っている。


「それでは、いってらっしゃーい!」


こうして、私は再び転生することになった。


――そして。


目を開けると、青い空が見えた。


ん?


背中に感じる地面が硬い。


というか――。


周り、森じゃない?


「おぎゃ……」


声が出ない。


身体もまともに動かない。


間違いない。


私は赤ん坊になっている。


そこまではいい。


願い通りだ。


だけど。


誰もいない。


家もない。


食べ物もない。


目の前に広がっているのは、どこまでも続く森だけ。


…………。


まさかの捨て子スタート!?


天使は馬鹿なのか!?


私から絶望の波動が放たれると、天から声が聞こえてきた。


【ミナエは虫を倒した。


ミナエは1の経験値と鉄貨1枚を手に入れた。


ミナエはレベルが上がった。


力が1上がった!


素早さが1上がった!


賢さが1上がった!


スキル『二足歩行』を習得した!】


二足歩行ってスキルなの!?


そう内心思いながらも、ゆっくりと立ち上がってみる。


立てた。


生まれて数分で立てた。


「おぎゃ!」


よし。


これならなんとかなる。


とりあえず、人里を探そう。


そう思って一歩踏み出した瞬間――。


ぐぅぅぅぅ。


お腹が鳴った。


「おぎゃ……」


そうだった。


今の私は赤ん坊だ。


当然、お腹も空く。


だけど、周りにあるのは木、草、キノコ。


…………キノコ?


嫌な予感がする。


私は近くに生えていた紫色のキノコを見る。


【猛毒キノコ】


「おぎゃああああああ!」


また毒キノコじゃない!


私は毒キノコをむしっては、適当に放り投げた。


とにかく、人里を探そう。


姫様扱いをしてくれる人生が待っているはずだ。


途方もなく歩くこと数十分。


【ミナエは女神を毒殺した。


ミナエは5の経験値を得た。


ミナエはレベルが上がった!


スキル『会話』を習得した!】


え?


さっき投げ捨てたキノコを食べた女神がいるってこと?


その瞬間、喉の奥が妙な感覚に包まれた。


「あー、あー」


声が出る。


「しゃべれる!」


生後数十分で二足歩行して、普通にしゃべれる赤ん坊。


我ながら気持ち悪い。


いや、それよりも――。


「女神を毒殺ってどういうことよ!?」


私は慌てて来た道を引き返した。


数分ほど歩くと、草むらの中に誰かが倒れている。


金色の髪。


白い服。


そして、その手には見覚えのある紫色のキノコ。


…………。


「まさか」


恐る恐る近づいてみる。


「リィナ?」


「話しかけるでない。妾は死んだことになってるのじゃ」


「あっそ。ところで、近くに村か街はない?」


「トランペット村が近いのう」


「わかったわ」


私はリィナを放っておいて、トランペット村に向かうことにした。



トランペット村。


「とりあえず何か食べたいわね」


赤ん坊姿で村を探索することにした。


しかし――。


「迷子らしい。保護したから連れてきた」


村人にあっさりと捕まってしまった。


「お嬢ちゃん。どこから来たの?」


「目覚めたら森に捨てられていたのよ」


「赤ちゃんのくせに生意気ね」


「トランペット村ならヴィオラがいるでしょ?」


「ヴィオラ村長はおりますが」


「呼んできて」


しばらく待つこと。


「身体は小さいのに態度がでかい子が保護されてるって聞きましたが、どこの誰の子でしょう?」


ヴィオラがやって来た。


「ミナエよ」


「知らない名ですが」


どうやら登場人物などは同じ設定だが、私の知っている世界とは違うらしい。


これからどうしたもんかと考えていると――。


「魔物が現れたぞ!」


村人が慌ててやって来た。


「子供たちを集めてください!」


ヴィオラが勢いよく立ち上がる。


「いや、何残酷なこと普通に言ってるのよ。大人が倒せばいいじゃない」


私が言うと、ヴィオラは眉間にシワを寄せた。


「倒したら経験値が入って、レベルが上がっちゃうじゃないですか」


「上がったらいいじゃない」


「レベルとは年齢ですよ?」


「……は?」


「歳を取ると老化しちゃうじゃないですか」


「ちょっと待って。レベルが上がったら歳を取るの?」


「あたりまえじゃないですか」


何よ、そのあたりまえ。


「エルフとはいえ、歳は取りたくないんですよ」


「つまり?」


「みんなレベル20くらいを維持したいんですよ」


「年月では歳を取らないの?」


「あたりまえじゃないですか」


だから、何よそのあたりまえ!


そこへ村人が駆け込んでくる。


「村長! 子供たちを集めました。ほどよく経験値を蓄えさせましょう!」


続いて、別の村人が血相を変えて飛び込んできた。


「村長! 大変だ! マタベエがメタリックスライムを倒してしまって、85歳になっちまった!」


「なんですって!?」


ヴィオラが血相を変えて飛び出していく。


私も気になって後を追った。


村の広場には、子供たちが集まっていた。


その中心で――。


「げほっ、げほっ……」


腰の曲がった老人が杖をついている。


「まさか……」


「マタベエです」


「さっきまで子供だったのよね!?」


「八歳でした」


「一気に七十七歳も老けてるじゃない!」


「メタリックスライムは経験値が多いですから」


そんな問題!?


ヴィオラがマタベエの肩に手を置く。


「マタベエ……」


「村長……」


「どうしてメタリックスライムなんか倒したんですか!」


「普通のスライムだと思ったんじゃ……」


「八歳だったのに、もう口調までお爺ちゃんになってる!」


「身体に精神が引っ張られるんです」


嫌な世界ね!


「母ちゃん……」


人混みから一人の女性が飛び出してきた。


「マタベエ!」


「母ちゃん……」


二十歳くらいの女性が、八十五歳の老人を抱きしめる。


「息子が母親より六十五歳も年上になってる!」


どういう家族構成よ!


「安心してください」


ヴィオラが優しく微笑む。


「マタベエ。もう魔物を倒してはいけませんよ」


「わかった……」


「次にレベルが上がったら、寿命で死ぬかもしれません」


「そんなゲームオーバー嫌すぎるでしょ!」


そのとき。


「村長! 魔物が村に近づいています!」


そうだった。


そもそも魔物が現れたから、子供たちを集めていたんだった。


ヴィオラが振り返る。


「では、レベルの低い子から順番に戦わせましょう」


「待ちなさい!」


私は子供たちの前に立った。


「こんな小さな子たちに魔物と戦わせるつもり!?」


「ですが、子供はある程度レベルを上げないと大人になれませんよ?」


「…………」


そうだった。


この世界では、魔物を倒さなければ歳を取らない。


「じゃあ、魔物を倒さなかったら?」


「永遠に赤ちゃんです」


私は自分の身体を見る。


…………。


嫌だ。


それはもっと嫌だ。


「ちなみに、私は今何歳なの?」


「鑑定してみればよろしいのでは?」


そうだった。


【ミナエ 種族:悪魔姫】


【レベル3=年齢3歳】


「三歳!?」


いつの間に!?


「虫を倒してレベルが上がって、女神を倒してまた上がったから……」


だから二足歩行と会話を覚えたのか!


全部つながった。


「悪魔姫ですって!?」


ヴィオラが派手に驚く。


「何を今さら?」


「悪魔姫は寿命七千年と聞いたことがあります」


「それが何か?」


「魔物退治にうってつけです」


「私の寿命なんだと思ってるのよ!」


「姫様。どうか村をお救いください!」


ヴィオラが深々と頭を下げる。


それにつられるように、村人たちも一斉にひざまずいた。


「姫様!」


「お願いします!」


「村をお救いください!」


…………。


確かに願った。


周りから姫様扱いされたい、と。


でも――。


「こんな姫様扱い、誰が望んだのよ!」


その瞬間、村の外から轟音が響いた。


ドォォォォン!


「姫様! 魔物が来ました!」


「何が来たの!?」


村人が青ざめながら答える。


「経験値が大量にもらえる魔物です!」


「一番来ちゃ駄目なやつじゃない!」


私は三歳の身体で、村の外へと引きずられていったのだった。

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