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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
念願のスローライフを送ったら、討伐対象になりました。
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姫様、喫茶店を改装します。

近くの喫茶店へ入り、私たちはセイレーンから事情を聞くことにした。


四天王たちは「港を見てまいります」と言い残し、それぞれ散策へ向かっていく。


席に着いたセイレーンは、深々と頭を下げた。


「ここは私が治める歌島でございます」


「それで、何でいきなり襲いかかってきたのよ?」


私が尋ねると、セイレーンは申し訳なさそうに肩をすくめた。


「あなたから強大な魔力を感じましたので、この島を征服しに来られたのだと勘違いしてしまいましたの」


「それで船ごと沈めようとしたわけ?」


「……返す言葉もございません」


セイレーンは再び深く頭を下げる。


「申し訳ございませんでした」


私はため息をつきながら、出されたコーヒーを一口飲んだ。


「まあ、結果的に誤解だって分かったんだからいいけど」


「寛大なお心に感謝いたしますわ」


そう言うと、セイレーンはようやく安堵したように胸をなで下ろした。


「それで、私たちは冒険者ギルドから『呪われし歌姫の謎を解いてほしい』って依頼を受けて来たのよ」


古の悪魔姫(デビルプリンセス)様が冒険者ギルドの依頼を?」


「訳あって冒険者も兼任してるの」


「左様でございますか」


セイレーンは小さく頷く。


「その『呪われし歌姫』とは、ワタクシのことでございます」


「えっ?」


思わず聞き返した。


「あなた、本当に呪われているの?」


「はい」


最初に会った時にも聞いたが、どうやら本当のようだ。


「……これをご覧ください」


そう言うと、セイレーンは胸元へそっと手を添え、服を少しだけずらした。


そこには――黒い紋様が刻まれていた。


「百年ほど前に刻まれたせいで、太陽が沈むと歌えなくなる呪いをかけられてしまいました」


「……ちょっと待って」


私は首を傾げる。


「つまり、それまでは夜中でも歌ってたの?」


「はい。暇さえあれば大声で歌っておりましたわ」


「呪われて正解じゃない」


「なんてひどい……」


セイレーンは目に涙を浮かべる。


私は少し考えてから口を開いた。


「……こう言っちゃ悪いけど」


「あんた、あまり歌うまくないわよ?」


「えっ!?」


「歌唱力というより、魔力で押し切ってるわね」


「ワタクシ、ずっと歌ってきましたのに!」


「夜中まで歌われたら、近所の人は迷惑だったでしょうね」


セイレーンは口をぱくぱくさせたまま固まってしまった。


「呪われし歌姫は見つけたし、原因もだいたい分かったから帰るわ」


「お待ち下さい! どうか私の呪いを解いて下さいませんか?」


「嫌よ。呪いを解いたら島中の人に恨まれるわ」


「でしたら歌唱力を磨きますので!」


「上手かろうが下手だろうが、夜中に歌われたら近所迷惑なのよ」


セイレーンは肩を落とし、しばらく黙り込んだ。


「ちなみにだけど、この島ってあなた(セイレーン)が統治してるの?」


「ええ」


「どうやって?」


「芸能プロダクションをやっておりまして、歌手を輩出しております」


「ほう」


「所属する歌手を島中のお店へ派遣し、お客様を呼び込んでおりますの」


なるほど。歌で島の経済を回し、その利益で統治しているわけだ。


港からここまで歩いてきて、私は一つ気になったことがあった。


「もしよかったらだけど、島をより住みやすくするために私たちに投資するつもりない?」


古の悪魔姫(デビルプリンセス)様に投資? 恐喝の間違いでは?」


「違うわよ!」


私は叫ぶと、紙とペンを取り出した。


「見た感じこの島に足りないものを書くわ」


私は思ったことを書いていく。


「水洗トイレ?」


「まずはこの喫茶店で試しましょう。」


「効果がなければ料金はいらないわ。」


「……本当に?」


「ええ。効果が出たら、その時に払ってくれれば十分よ」


「少々お待ち下さいませ」


セイレーンはベルを鳴らして、


「店長、少しよろしいでしょうか」


カウンターの奥から初老のマスターが顔を出した。


「こちらの方が、お店を改装させていただきたいとおっしゃっております」


「改装ですか?」


不安な表情を見せるマスター。


「四天王たち、お願い」


私が声をかけると、影から土産を片手に散策へ向かった四天王たちが次々と姿を現した。


「何、観光を楽しんでるのよ」


「ハッ、つい......」


そんな四天王たちを見てマスターは私に不安げな表情を見せる。


「急にそう言われましても……」


「だから成功したら払ってくれればいいの」


「それなら、一度お願いしてみましょう」


こうして、小さな喫茶店の改装計画が始まった。


セイレーンがいなくなった後、打ち合わせをすることにした。


「この喫茶店の問題点はトイレね。相変わらずよくわからない不衛生極まりないやつよ」


スターフィールド以外ではおなじみの、穴を掘っただけのトイレがどうしても嫌だ。


「自動開閉タンクレス温水便座にしたいわ」


「それは魔法ですか?」


「トイレの名前よ」


「そんなもの用をたせれば何でもいいのでは?」


「あんたトイレをバカにするんじゃないわよ。飲食店はトイレで始まりトイレで終わるのよ?」


「お客様は料理を食べに来るのであって、トイレを見に来るわけではありませんよ」


「じゃあトイレだけ改装するわよ」

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