姫様、国家プロジェクトを指示します。
魔導列車開発局。
と、いかにも廃部寸前の看板を見て、嫌な予感しかせずに中に入る。
「どうしたんですか?」
裕美子とルシアが突然現れた私に驚いていた。
「なんか世界中から狙われる存在になったから、いっそのこと観光客として迎え入れようって話になったのよね」
「なるほど」
裕美子は一枚の設計図を机へ広げた。
「でしたら、ちょうどいいタイミングです」
「完成したの?」
「駅舎の看板が」
「看板だけ!?」
ルシアが申し訳なさそうに頭を下げる。
「線路が一本もありませんので、まずは駅名を決めようかと……」
「順番がおかしいでしょ!」
「名前が決まらないと駅弁も作れませんし」
「駅弁の心配してる場合!?」
裕美子は真面目な顔で頷いた。
「旅の醍醐味ですから」
「そこだけ妙に納得できるのが悔しい……」
「現在の進捗ですと……」
裕美子は計算機を叩く。
「あと千年ですね。」
「増えてるじゃない!」
「だって一年かけてまだレール一本しかできてませんし」
「千年すら怪しくなって来た!」
「姫様。魔導列車開発を正式に国家プロジェクトに承認して下さい。ならば予算も人でも増え、開発が進みます」
「どれくらい早くなりそう?」
裕美子は再び計算機を叩くと。
「一年ですかね」
「国家プロジェクトってパワーワードすぎない?」
「同時に大陸中に観光施設を建てなければならないでしょうから、そちらはお願いしますね」
「え、私が?」
「大陸中の関係者を集めて会議だなんて、他に誰が出来るんです?」
「適当にやらせればいいんじゃない?」
「それでは各都市が姫様像を建設して、どこが一番大きいか競い合うだけです」
「この大陸、まともな人材いないの?」
私は絶望を覚えると、波動が人の形を作り出した。
「久しぶりに裸のオッサンが出て来たわね。で、何の四天王よ?」
「さすが姫様、我を四天王と見破るとは」
「出てくる人、みんな自称四天王なだけよ」
「我は観光の四天王ガイド。その土地にあった観光産業を提案することが出来ます」
「提案だけなんだ」
「レベル1なんで......」
「ちなみにレベル100になれば?」
「設計図くらいは描けます。」
「まだ作れないの!?」
かといって信用しすぎるのもどうかと思ったので彼を城に連れて行き、会議室にて意見を聞くことにした。
「トランペット村には、現在城と海の家くらいしか観光名所がありませんな」
ガイドは確かなことを言ったかと思いきや、
「ここは巨大な姫様像を作るべきかと進言します」
この四天王。本当にレベル1に達していいのか不安になった、その時だった。
「素晴らしい!」
オカリナが賛同する。
私は、オカリナもやはりまともな人材じゃないことを確信した。
「もしかして妙案だったんですか?」
七海が私の代わりに尋ねる。
すると、ヴィオラがすっと手を挙げた。
「姫様像。まさにスターフィールドの象徴として素晴らしいかと思いますが」
ヴィオラまで賛同してしまっていた。
「観光課として意見を求めます」
七海がひよりに聞くと、
「待ち合わせ場所としては有効かと。そこに露店を置いて姫様グッズを販売すると売り上げに期待できます」
「もう姫様像作る前提になってるじゃない!」
すると、ひよりが真面目な顔をして私に聞いてきた。
「もしかして遊園地みたいなテーマパークを想像しておりましたか?」
「そうよ! ジェットコースターとか観覧車とか、お化け屋敷とか!」
ひよりは静かに首を横へ振る。
「開発は魔導列車が最優先です」
「じゃあ、全部国家プロジェクトにするわ」
「承知しました。本日付で国家予算を編成し直します。」
「決定が早い!」
「来週には大陸中から首脳に来るよう伝達します。議題は『国家プロジェクト推進会議』でよろしいでしょうか?」
「七海の頭の中、全部国家プロジェクトでできてるの?」
一週間後。
ホルン領主、新屋敷聖香。
テナー領主、ユウタ。
アンダンテ国王女、フラット。
この三名と観光名所を決める会議が行われることになった。
ちなみに他の国は発展途上や自国の復興に追われており、「観光どころじゃない」と全会一致で欠席だった。
「私たちホルンは元聖法国として、教会の前に姫様像を作ることにしたわ」
「え? テナーも姫様像なんだけど」
自信満々に言う聖香に対して少し困った顔をするユウタ。
「この大陸、マジでまともな人材いないの?」
私は呆れた顔をしてフラット王女に期待すると、汗を垂らしながらこう答えた。
「申し訳ございません。我が国も姫様像でした。父が『恩人なのだから当然だ』と譲らなくて……」
だめだこいつら。早く何とかしないと。
「でも姫様。突然観光名所と言われましても......」
聖香は困った顔をしながら聞いてくる。
「確かに世界の流行がわからないと観光客を呼び込めないものね」
「ならば姫様。こちらから行ってみましょう」
「どこによ?」
「世界です」




