姫様、総動員します。
スターフィールドの東にある大国タンバリ。
ようやく到着したと思ったのも束の間、
「瓦礫の山じゃない」
ホルン聖法国の時もリィナが野放しにしたカイザーフェニックスにより壊滅したのだが、これはこれでひどい有様である。
「スターフィールドに戻って復興班を形成しとこっちに来させて」
私はオカリナに命じると、
「姫様。これは領地を広げずチャンスなのでは? 私、学校で敵に胡椒を送るって言葉を学びました」
「胡椒を送ったってクシャミをするだけじゃない。塩よ」
「お言葉ですが、しょっぱいと言われるのと違いがわかりません」
「いいから七海に伝えて」
「七海は本日休みなのでは?」
言われたら休みだから今日ついてこなかったことを思い出した。
「私にツテがございます。その者達に派遣するよう指示して来ます」
オカリナはそう言うと、北西に飛んでいった。
「あの方角はホルン......?」
首を傾げると、見慣れた女王が走って来た。
「姫様。ご無事でしたか!」
「フラット王女。怪我はないみたいね」
おそらくアンダンテ国の代表としてサミットに参加していたのだろう。
「突然、砲弾が飛んできましてご覧の通りこの有様です。魔族の襲撃と話もありましたが魔族の頂点である姫様がサミットに参加する以上動機がわからないと説得はしております」
「気を使わせて悪かったわね」
私は労いの言葉をかけると、
「神の怒りがこの国を襲ったのじゃろう」
まるで他人事のようにリィナが言う。
「神の怒りですか。慈愛の女神様がそうおっしゃられるのならきっと.....」
「あ、犯人リィナだから。バズーカ打ちやがったのよ」
「なんてことを!」
「野盗のアジトを狙ったのは間違いない。国そのものが腐敗してる証拠じゃな。女神バズーカにて討ち滅ぼされても仕方がないのう」
「慈愛とは?」
「慈愛の前に妾は神じゃ。だから神の怒りは間違いではないのう」
さすが詐欺行為で捕まったこともある女神なだけあって口は達者だ。
「神の怒りというかスキルを自慢したかっただけよ」
「ミナエよ! 妾の味方じゃないのか?」
「私は相手が誰であろうが中立よ」
私は言い切ると、ぞろぞろと身なりが立派なおじさん達がやって来た。
「スターフィールドの姫君ですな」
「そうよ。なんかひどいことになってるわね」
「ハイ。何者かに襲撃にあいまして」
「怪我人は?」
「大聖堂に運びましたが......」
その様子だと治療が追いついていないのだろう。
私は指を鳴らすと、影から四天王たちが現れる。
「姫君。その裸の男たちはいったい?」
「本人たちは正装だと言い張ってるわ」
いちいち説明するのは面倒なので、
「フレア、暖が取れるよう整備して。アクアは綺麗な水を。サムスは住める住居を」
『かしこまりました!』
あとは医療班が欲しい。
ユリエルとクラリが来てくれれば助かるのだけれど。
「チセリはまだ来ていないの?」
「チセリというとテレビ局員ですか? 砲撃から避難する際に足をひねりまして、大聖堂で治療を受けています」
「チセリとスタッフに会いに行くわ。テレビ放送でスターフィールドの支援を訴えるのよ」
「姫様。私は?」
「超重要な役割があるわ。この国の元気な人に瓦礫を撤去してもらって、作物を栽培して。栄養を与えないと話にならないわ」
「わかった!」
「多分あんたたち世界の偉い人なんだろうけど、彼女に協力してあげて。この復興は時間との勝負よ!」
私は大聖堂に行くと、怪我をしたチセリたちがいた。惨劇を報道するために逃げ遅れたらしい。
「チセリ。カメラは動く?」
「もちろんです! カメラマンは無事です!」
「それなら全国放送よ。スターフィールドに緊急支援を要請するわ」
少し時間が経ったあと、
「姫様。スターフィールドより復興支援隊10万人到着しました」
ヴィオラが先頭に立って報告する。
「来すぎよ!」
「姫様の役に立てるチャンスなんか早々ないもんで」
「スターフィールド空っぽにしてない?」
「七海さんが休日出勤しております! 万が一の襲来があった時のためにうどん屋でアルバイトしている破壊神様を出前理由に呼び出しております」
「スターフィールドが破壊されるオチはないわよね?」
私は嫌な予感しかしなかった。
予想通り近くで魔法陣が浮かび上がると、聖香があらわれた。
「お待たせ致しました。ホルン領より8万人こちらに向かわせました」
「だから来すぎだって! 帰らせて!」
私はカメラの前で、
「ユウタ! テナーからはもう人よこさなくていいからね!」
と、訴えておいたのだが、
「復興支援は僕たち魔王軍にお任せを!」
オカリナを先頭に魔王軍が飛んできてしまった。
こうして”女神の怒り(自称)“によって崩壊したタンバリ国では、スターフィールド総動員による前代未聞の復興作戦が幕を開けたのであった。




