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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、絶望と慈愛の意味を考えます。

私、千尋、リィナは東の大国タンバリに向かってカボチャの馬車で移動していた。


敵襲があったらカボチャから波動砲が放たれるらしい。


「千尋さ。カボチャの馬車はまだわかるよ? 波動砲って何?」


「私って願った物を栽培できるじゃない? 試しにレーザービーム放てるカボチャ作れないかなーって思ったらできちゃったわけよ」


私は目を細めて千尋のステータスを確認した。


固有スキル願望耕作ウィッシュ・カルティベーションはレベル2へ進化している。スキルを持ったカボチャ、大根が栽培できるようになったらしい。


ちなみにカボチャは移動手段と波動砲が実装され、大根はロケットランチャーとして使えるらしい。


「スターフィールドも今じゃ大国だからね。もし襲われても、私は足手纏いになりたくないからね」


ゲームで召喚士と聞くと、伝説の魔獣が出て来そうなんだが、この世界の召喚士は物騒な野菜を畑から呼び出すらしい。


しかも、そのカボチャも大根も普通に食べられるそうだ。


口から波動砲が出るカボチャなんか毒キノコよりも抵抗があるのだが。


「姫様は波動砲耐性もあるから食べられるよ?」


「いや、だから耐性があるからってわざわざ率先して食べたくないのよ」


私は嫌がると、リィナがお茶を飲んだあとに言った。


「ミナエよ。物騒な客人が近づいとる。数は五十といったところかのぅ」


大根(ロケットランチャー)ぶっ放す?」


「いや。私も試しておきたいことがあるのよ」


国が大きくなるにつれて攻められる可能性が高くなることに不安がなかったわけではない。


オカリナを始め戦闘に適した従者(しもべ)は何人もいる。


しかし、私は神から認められた古の悪魔姫(デビルプリンセス)だ。きっと身を守るくらいの能力(スキル)はあるはずだ。


カボチャの馬車を数十人が取り囲んだ。


見た感じ野盗。スターフィールド内ではすっかりいなくなった連中も国境を離れるとこう簡単に現れるものなのか。


「金を出せば命だけは...って、おい!」


私は馬車から一人で降りると、絶望の波動ウェーブ・オブ・デスペアを発動させる。


絶望の闇が私の全身から溢れ出す。


それを、


絶望領域(デスペア・フィールド)


辺り一体を絶望に満たす。


「身体が……動かねぇ……!」


波動収束(ウェーブ・フォーカス)


「嫌だ……死にたくない……!」


全ての野盗を絶望で包み、収束する。


「ほう。古の悪魔姫(デビルプリンセス)の力をここまで扱えるようになったか」


リィナがお茶を飲みほしては言ってくる。


「良い物を見せてくれた礼に、妾も能力(スキル)を披露してみせよう」


リィナは静かに目を閉じ、胸の前で両手を重ねた。


「傷つき、迷い、憎しみに囚われし者たちよ」


「汝らの罪を責めようとは思わぬ」


「悲しみも、怒りも、絶望も、すべては弱き心が生み出したもの」


「ならば妾は、そのすべてを受け止めよう」


「世界に生きる命は等しく尊く、誰一人として見捨てられるために生まれた者はおらぬ」


「今こそ争いを忘れ、安らぎの中で眠るがよい」


神々しい光が辺りを包み込む。


私は思わず息をのんだ。


(さすが慈愛の女神……浄化魔法でも使うのかな)


リィナはゆっくりと目を開き、


女神バズーカ(物理攻撃)!」


どごぉぉぉぉぉぉん!!


遥か彼方の山が吹き飛び、数秒遅れて轟音が響いた。


「野盗のアジトごと消し飛ばしておいた。これで根城へ戻る場所もないじゃろう」


「詠唱の意味あったの!?」


「雰囲気の演出は重要じゃ」


「慈愛どこ行ったのよ!」


「アジトの者にも等しく慈愛を届けたまでじゃ」


「で、これどうするのよ」


千尋は意識を失っている数十人の野盗を指差す。


「起きなさい」


絶望に心を折られた野盗たちは、私の声に逆らうこともできず、ゆっくりと立ち上がった。


「誰も使ってない土地みたいだから、あなたたちで開拓なさい」


黙ったまま動き出す野盗たち。


「大丈夫なの? あれ」


「働けば治るわよ」


「絶望どこ行ったの!?」


こうして三人は再びタンバリに向かって馬車で移動を始めた。


野盗を更生させているうちに、家を失った流民まで「仕事がある」と聞きつけて集まってくるようになった。


「アジトを失った野盗じゃな」


「無関係者が間違いなくいたわよ」


「では全員まとめて働けばよい」


リィナは面倒くさそうに言うと、


「姫様ぁぁぁ!」


オカリナが猛烈なスピードで飛んできた。


「テレビを見ていたら東の国タンバリで謎の襲撃があり、壊滅したみたいです。いてもたってもいられず来てしまいました」


「は?」


「世界各国の代表者たちの暗殺を試みたものとチセリが実況してます」


つまり、今まで開拓民にしていたのは避難民だということになる。


「この襲撃は絶対に許すまじ悪態である。犯人は絶対に捕まえるべきだと言ってました」


「犯人ここにいるけど?」


私はリィナを指差すと、激怒するオカリナ。


「貴様……ついに女神をやめたのか?


「妾は野盗のアジトを間違いなく攻撃しただけじゃ」


「その攻撃の範囲内にタンバリも入ってたんだろうね。ちなみに、チセリは他になんと言っていたの?」


「専門家は『未知の超大型魔法』との見方を示しています! とか言ってましたね」


「未知じゃないわ。女神がバズーカ撃っただけよ」


こうして、サミットどころではなくなった場所にわざわざ向かう羽目になった私なのであった。

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