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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、世界会議へ行きます。

「この大陸の四分の一を占めているスターフィールドは、間違いなく大国です」


七海は地図を指差した。


「世界サミットをしたいなら、うちに来るのが筋なんじゃない?」


「魔族の大国に乗り込みたい首脳などおりませんよ。今回は東方にあるタンバリ国で開催されます」


「せめてアンダンテ王国にしてくれないかなぁ」


「何故ですか?」


「他国だと水洗トイレはないし、ベッドも木の板にシーツだけでしょ? 下手したら藁の上で寝ることになるじゃない」


「姫様でしたら最高級の部屋を用意されると思いますよ。主賓ですから」


「食事も豪華かしら?」


「そうですね。国家の威信もありますから、それなりに豪勢なお料理は並ぶでしょう」


「やった!」


「もっとも、我が国の食堂の足元にも及ばないとは思いますが」


「……そんなに?」


「毒抜きキノコ、千尋様主導のお野菜、アンダンテ産の海産物、各地の畜産品。食材の質だけなら、この大陸でスターフィールドに勝てる国はありません」


「毎日食べてるから気づかなかった……」


私は期待していただけに残念がると、


「姫様。是非サミットでスターフィールドがいかに素晴らしいか説いて来てください」


「なんでよ。魔王復活について聞かれたことだけに答えていたいわ」


「姫様。これまで他国が我が国に屈して来た理由はご存知ですよね?」


「私に仕事を押し付けたいからよ」


「いいえ」


七海は静かに首を横へ振った。


「利益があったからです」


「利益?」


「アンダンテ王国は上下水道と医療を手に入れました」


一本、指を折る。


「ホルン聖法国は住居と労働環境を」


二本目。


「テナー王国は治安維持を」


三本目。


「どの国も『魔族だから』従ったのではありません。『スターフィールドと手を組んだ方が国民が幸せになる』と判断しただけです」


「……そうだったわね」


私は思わず頷いた。


戦争で従わせたわけじゃない。


気付いたら、みんな勝手に寄ってきただけだった。


「東方諸国も同じです」


七海は地図の東側を指差す。


「彼らは敵か味方かを見極めに来るのではありません」


「じゃあ何しに?」


「自国へ、何を持ち帰れるかを探しに来ます」


「技術?」


「技術もです」


七海は一拍置いた。


「ですが、一番欲しいのは食料でしょう」


「また食料なの?」


「はい」


七海は真っすぐ私を見つめる。


「姫様にとっては毎日の食事でも、他国にとっては国を救う切り札なのです」


「……責任重大じゃない」


「ですので、今回は千尋様を連れて行くことをお勧めしたいのですが......従者が一人となると......やはりリィナ様でしょうか」


「なんで結局リィナなのよ?」


「だって、窓の外からずっと羨ましい顔をして見てるんですもの」


言われて私が窓を見ると、


ガラスにぺったり張り付いたリィナが、満面の笑みで手を振っていた。


「呼んだかのう?」


「ずっと盗み聞きしてたの!?」


「盗み聞きとは失礼じゃのう」


リィナは窓をすり抜けるように部屋へ入ってくると、胸を張った。


「偶然、散歩しておったら会話が聞こえただけじゃ」


「窓に張り付いてたじゃない!」


「散歩の途中で少し休憩しておっただけじゃ」


「ガラスに顔を押しつけて!?」


七海は小さく咳払いをした。


「まあ、千尋様は固有スキル(願望耕作)を除けば普通の女子です。危険に晒すのはやめた方がいいでしょう」


「妾は危険に晒されても良いみたいな言い方じゃのう」


「リィナ様は粉々に砕かれても次の日には復活するみたいですので姫様の盾としても有能です」


「慈愛の女神の存在価値を間違ってないかのう?」


リィナは目を細めると、私の影から四天王の一人、土のサムスが現れては頭を下げてこう言って来た。


「姫様。こんな女神より千尋を連れて行ってくださいませ。千尋は世界にとって必要な人間だと思います」


「あんたも突然現れては何を言い出すのよ」


サムスは真っすぐ私を見つめた。


「千尋は畑を耕し、作物を育て、人々へ笑顔で配る。それを誰よりも楽しんでおります」


「……そうね」


私は小さく頷いた。


千尋は収穫した野菜を見せびらかすわけでも、高く売りつけるわけでもない。


「姫様! こんなの採れました!」


そう言って笑いながら抱えてくるのがいつもの千尋だった。


「能力だけなら、いずれ真似をする者も現れるでしょう」


サムスは静かに続ける。


「ですが、千尋のような人間は育ちません」


「サムス……」


「さらに千尋の固有スキルは、新たな段階へ到達しました」


サムスは至って普通のカボチャを見せると思いきや、目と口があらわれては、


「キャハハハハ!」


口から波動砲が発射された。


「これはたまらん! 妾は逃げる!」


「あんた盾じゃないの!?」


しかし咄嗟に出た絶望の波動が身を守ってくる。


私は反射的に絶望の波動を放ち、爆発を相殺する。


窓ガラスがガタガタと震えた。


サムスは満足そうに頷く。


「これが、千尋の固有スキルの進化系――願望耕作召喚ウィッシュ・カルティベーション・サモンです」


「召喚?」


「育てた作物に生命を宿し、自ら戦わせることができます」


「キャハハハハ!」


カボチャは 手当たり次第に波動砲を放ち始めた。


「農業スキルの進化先がおかしいわ!」

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