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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、魔王と対峙します。

「今決めることじゃないでしょ!」


私が頭を抱えていると、


「随分、入り口の方が騒がしいですね」


奥の方から落ち着いた声が聞こえてきた。


「この声は?」


どこかで聞いたことがあると思った次の瞬間、


「姫様と愉快な仲間たち!」


カメラを抱えたチセリとテレビクルーが飛び出してきた。


「誰が愉快な仲間たちですか!」


聖香がすかさずツッコむ。


「……あんた、何でこんなところにいるのよ?」


私が呆れながら聞くと、チセリは胸を張った。


「明日から、ついにテレビの全世界放送が始まるじゃないですか!」


そうだった。


スターフィールド国内だけでは市場が限られる。


そこで七海の提案により、各国へモニター(受信機)を一台ずつ無償提供することになったのだ。


『まずは使ってもらうことが重要です。需要が生まれれば、向こうから問い合わせが来ます』


という七海の作戦である。


ちなみに魔族が運ぶと警戒されるため、エルフの長でもあるヴィオラを中心に各国へ設置してもらった。


「そうか……明日から放送なのね」


ようやく思い出した私に、チセリはニヤリと笑う。


「はい! なので、記念すべき第一回放送は――」


チセリはカメラへ向かって両手を広げた。


「魔王復活、完全生中継です!」


「視聴率より世界を混乱させないで!」


「絶対バズりますよ!」


「炎上しかしないわ!」


チセリはさらに懐から一枚のプラカードを取り出した。


そこには大きく、


『ドッキリ大成功!』


と書かれていた。


「これを最後に見せれば大丈夫です!」


「ドッキリって言ったら魔王復活がなかったことになっちゃうじゃん!」


チセリは腕を組んで少し考え込む。


「では、『密着! 姫様二十四時』に変更します」


「私を知らない他国の人からしたら誰得なのよ。それより、綾子がしばらくアイドル気分だから付き合ってあげて」


「綾子は視聴率がイマイチなんですよね」


「本人の前で言う?」


「ファン三人しかいませんし」


「そのうち二人がここにいるわ」


門番の悪魔たちは嬉しそうにサイリウムを振っていた。


「綾子さーん!」


「新曲、楽しみにしてます!」


「ほら!」


「……仕方ありません。何か企画を考えます」


チセリはテレビクルーと相談を始めた。


こうしてチセリたちと綾子を置いて、私と聖香は洞窟の奥へと進むのだった。


「ここが魔王の部屋ですね」


聖香は扉の前で立ち止まり、小さく息を吐いた。


「なんで今になって復活したのかしら。六百年前、ちゃんと封印したんでしょ?」


「封印したのは何世代も前の聖女です。私がこの世界へ来た時には、すでに封印されていました」


「じゃあ、ずっと祈ってたの?」


「はい。毎日祈るのが仕事でした」


「祈るのやめたから復活したとか?」


「……それは多少あるかもしれません」


聖香は苦笑する。


「でも、会ったこともない相手に祈り続けるのって、精神的に結構きついんですよ?」


「それはそうね」


私は素直に頷いた。


「じゃあ、その答えは本人に聞きましょうか」


そう言って、私はゆっくりと魔王の部屋の扉を開いた。


「姫様」


聖香は静かに、でも通る声で言う。


「面接する気まんまんです!」


「本当に魔王よね? てか、今更だけど魔王と悪魔姫ってどっちが格式上なのよ?」


「魔王って勇者と同じで自称ですから、姫様の方が上なのでは?」


「魔王って自称なの?」


「はい。誰かに任命されるわけではありませんし」


「そうなの?」


「極端な話、明日から私が魔王ですと言い出せば魔王です」


「ハードル低っ!」


「もちろん実力が伴わなければ誰も認めませんけど」


「なるほどね」


私は少し安心した。


「じゃあ私は?」


「姫様は神様に任命された古の悪魔姫(デビルプリンセス)です」


「正式なやつ?」


「正式です」


「つまり――」


「格式だけなら姫様の方が上ですね」


「よかった。面接で敬語使わなくて済むわ」


「そこなんですか」


私が聖香とそんなやりとりをしていたら、広い玉座の前で直立不動だった青年が、


「あの。とりあえずお座り下さい」


と、緊張した様子で私たちに言ってきた。


「何言ってんのよ。座っていいかどうかは私が決めるのよ」


「自称って聞いた瞬間、急に強気になりましたね」



高級な椅子に座ると、部下の魔族がハーブティーを持ってきた。


「これ、履歴書です」


見たことのある様式で丁寧な文字で書かれていた。


「なんで日本の大学卒業してるのよ」


「転生したら魔王だったんです」


「履歴書に志望理由でなく死亡理由書いてるの初めて見たわ」


「今でも納得いってないんですよね」


「てか、魔王のくせに何で自警団から感謝状もらってんのよ」


私は壁を見た。


魔王城とは思えないほど大量の感謝状が飾られていた。


「底なし沼で子供が溺れていたら助けるのは当然かと思います」


そう言えば、うちで働いているコックのミールも、勇者に村を滅ぼされたと言っていた。


……この世界、本当に勇者が正義とは限らないらしい。慈愛の女神も前科八犯だし。


「でも、世の中から見たら僕はやはり討伐対象らしく何百年も前に勇者と聖女に封印されました」


「どうやって封印を解いたのよ?」


「先日、テレビが送られてきまして」


「テレビ?」


「封印されていたので受け取れなかったんです」


「うん」


「配達員さんが『受け取りのサインをお願いします』と言いながら封印を解いてくださいました」


「封印より荷物優先なの!?」


「『不在票を入れる場所がありませんでしたので』とおっしゃっていました」


「配達員の責任感が強すぎる!」


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