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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、封印の洞窟に向かいます。

スターフィールド。


それは、古の悪魔姫(デビルプリンセス)ミナエが治める魔族の国。


かつては毒キノコしか生えない森だったこの地も、今では多くの人々が暮らす国へと変わっていた。


最初の裁判から半年。


「姫様。お久しぶりでございます」


懐かしい声に顔を上げると、そこには聖香が立っていた。


かつて世界の聖女として魔族と戦うために祈り続けていた彼女も、今では一人の領主としての風格を漂わせている。


七海が手際よく紅茶を淹れてくれた。


「あら、美味しいですね」


「でしょ。品種改良を試行錯誤して、ようやく世に出せるようになったのよ」


「半年でここまで発展するとは……。来るたびに驚かされます」


「ただ、ちょっとした問題もあるのよね」


「なんです? 数に限りがあるとかですか?」


「いや、その紅茶に毒成分があってね」


ぶふーっ!


勢いよく聖香は吹き出す。


「なんて物を飲ませるんですか!」


「いや、毒耐性あるでしょ。聖女なんだから」


「耐性があるからってわざわざ飲みたくないですよ!」


「大丈夫よ。耐性がなくても三日くらい寝込むだけだから」


「働き手を寝込ませないでください。民をなんだと思ってるんですか」


「注意書きで毒耐性のない方は飲まないで下さいって書くから大丈夫よ」


「アルコールは二十歳から、みたいな言い方やめてください」


七海は静かにメモを取る。


「では商品ラベルに『毒耐性のない方はご遠慮ください』と記載しておきます」


「採用しないで下さい!」


「ところで今日は一体どうしたのよ?」


私は毒入り紅茶を一口飲む。


聖香は湯気の立つカップを静かに置き、真顔になった。


「ホルン領の北に封印の洞窟があるんですが」


「うん」


「魔王が復活しました」


ぶふーっ!


「……ですが、ご安心ください」


「え?」


「現在、|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》ホルン支部で住民登録の順番待ちをしております」


「さすが魔王。柔軟性が高いわね」


「封印の洞窟には、人間から逃げ延びた魔族が大勢身を寄せています」


「うん」


「その洞窟を開拓して魔王領にしたいので協力してほしい、と。」


「うん?」


「……まだ住民登録も終わっていないのに相談してきました。」


「勝手に開拓して独立して魔王国を作らせればいいじゃない」


「そんなこと許したら、ただでさえ業務に追われているのに祈らなければならないじゃないですか!」


「ていうか、なんで相談しにきたのよ」


「独立なんかしたらトップとして働かなきゃいけないじゃないか。そんなことをしたくて復活したわけじゃないとのことです」


「魔王としてどうなの? それ」


「姫様が言います?」


「私はいいのよ。働きたくないって言い続けてるのにこうなっちゃってるんだから」


「そんなわけで会ってみてくれません?」


「魔王に?」


「はい。面接してください。履歴書を持参させますので」


「結局また働かされるパターンじゃない!」






スターフィールドの実務は七海に任せ、私は聖香と補佐の綾子を連れてホルン領北部の封印の洞窟へ向かった。


「久々に会ったけど、あなたちゃんと働いてるの?」


私は綾子に聞くと、


「副業で地下アイドルをやらせてもらってます」


「ファンいるの?」


「老人がグッズを買ってくれます」


「あなた、勇者よね?」


「はい。勇者です」


「丸腰じゃない」


「どっかにやっちゃったみたいで。紛失届は出してますよ」


そんなたわいもない話をしていたら封印の洞窟に辿り着いた。


「姫様。邪悪なオーラを感じます。聖なる結界を張りますか?」


「そんなことしたら警戒されちゃうから、このままでいいんじゃない?」


「というか、面接するのに私たちが向かうっておかしくないですか?」


「魔王を呼んだら混乱しちゃうじゃない」


「姫様が統治してる国なので、魔王も村人とそう変わりませんよ?」


「早くそれを言いなさいよ。気を使った私が馬鹿みたいじゃない!」


「姫様。門番がいます」


聖香は指をさす方向に悪魔っぽいのが二人、道を塞いでいた。


「門がないのに門番なの?」


「多分気持ちの問題かと」


「誰の気持ちを汲み取っているのよ」


私は言うと、


「止まれ! ここをどこだと!」


悪魔が槍を突き出したが、


「あ、あなた様は......」


悪魔だかなんだか知らないが、私は世間では古の悪魔姫(デビルプリンセス)と呼ばれている。


私の方が格上なのだよ。


……そう思っていた。


「綾子さんだ!」


「おい」


どこからかサインペンを取り出して槍にサインをする綾子。


「あのさ。私にビビらないの?」


「誰?」


「デビルプリンセスなんだけど」


そう言われて、悪魔たちは顔を見合わせた。


「あー、ひいじいさんから聞いたことある。そういう姫がいたって話」


六百年も経てば、伝説なんてそんなものらしい。


「あの。私たち、魔王に会いに来たんです。案内していただけますか?」


聖香がお願いをすると、


「あっ、指名手配の奴じゃねえか!」


悪魔からしたら聖香は敵でしかない。指名手配されるのはわかる気がするのだが、


「あなたがた、綾子は勇者ですよ?」


「ないない」


手を横に降る悪魔たち。


「綾子。勇者として威厳を見せつけてやりなさい」


「申し訳ございません。このファン達を見てたった今、勇者を引退してアイドル一本で生きると決めました」


「今決めることじゃないでしょ!」


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