表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
PR
59/102

姫様、天下を取らせます。

「包囲する理由が全員バラバラなんだけど!」


私のツッコミを聞いたフォルテは、大きくため息をついた。


「傍聴人は静粛に。これより証人尋問を行う」


「証人?」


「ピクルスを勧めた店員を召喚する」


法廷中がざわついた。


フォルテは短く呪文を唱える。


次の瞬間、信長と義元の間に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「ガチモンの召喚術じゃない……」


魔法陣から現れたのは、エプロン姿の青年だった。


「証人、名は?」


「明智光秀と申します。ハンバーガー屋でアルバイトをしております」


「こやつじゃ! 前世も今回もワシを陥れた奴は!」


「被告人は黙られよ。証人。あの日の出来事を詳しく申せ」


「被告は注文時に『ピクルスは抜け』と申しました。しかし、マニュアル通り『一度お試しください』とご案内いたしました」


「被告人。今の証言に異論はあるか?」


「ワシがピクルスを吐き出した途端、血相を変えて『敵は本能寺にあり!』などと叫びおったぞ! そういやこやつ、前世でも謀反を起こしおったわ!」


「余は敵に討たれたが、そなたは味方に討たれたとはのう!」


義元が腹を抱えて笑う。


「何で被害者同士でマウント取り始めるのよ!」


私が思わずツッコんだ、その時だった。


信長が刀を実体化させる。


「おのれ、好き勝手言いおって! 二人まとめて刀の錆にしてくれるわ!」


刀の切っ先を義元と光秀へ向けた瞬間――


ドンッ!


信長の身体が見えない力に押さえつけられ、床へ叩き伏せられた。


「ぐおっ!」


「ここは裁判所じゃ。暴れるでない」


フォルテが淡々と言い放つ。


どうやら念動力のようなもので強制的に押さえつけたらしい。


「はっはっはっ! 信長よ、その名の通り地に落ちたな!」


義元は腹を抱えて笑い続けていたが、


「ぐあっ!」


義元の身体も見えない力に押さえつけられ、床へ叩きつけられる。


「笑う暇があるなら静粛にせよ」


フォルテは一切表情を変えない。


「な、何故余まで……」


「法廷で騒いだからじゃ」


それを見た光秀は青ざめた。


「わ、私は何もしておりません!」


「証人はその場から動くでない」


「はいっ!」


光秀は背筋を伸ばし、直立不動になった。


「最初からそうしておればよい」


フォルテは静かになったのを確認してから、


「被告人代理よ。この証言に対して何かあるかのう?」


レクスに問いかける。


レクスはゆっくりと立ち上がり、胸に手を当てた。


「はい。弁護側として申し上げます」


「申してみよ」


「ピクルスは抜けと言ったのですから、被告に非はありません」


「うむ」


「しかし、断りきれなかった被告にも落ち度があります」


「ほう?」


「戦国の覇者たる者、ピクルスくらい断固として断るべきでした」


「なるほど......」


「さらに刀を抜いた件につきましては全面的に被告が悪いです」


「うむ」


「よって弁護側としては……」


レクスは一礼する。


「死刑で良いかと思います」


「結局死刑じゃないか!」


激怒する信長。


「お待ちください」


ルールーが静かに立ち上がる。


「被告を死刑とするのであれば、ピクルスを勧めた証人にも責任があります。さらに、その接客マニュアルを採用した原告にも管理責任があります」


一拍置いて、ルールーは真顔で言い放つ。


「よって、三名とも死刑です」


「まさかの余たちにも飛び火じゃと!?」


義元が青ざめる。


「折角生き返る際、次こそは天下を取りたいとお願いしたのに……」


光秀は肩を震わせた。


「なに!? ワシも同じことを願ったぞ!」


信長が目を見開く。


「お主らの言い分は十分にわかった。判決を下す」


木槌を叩くフォルテ。


「判決」


法廷が静まり返る。


「死刑はさすがに却下じゃ」


「助かった!」


「命拾いしたぞ!」


「ありがとうございます!」


「その代わり」


木槌が高らかに鳴り響くと、次の瞬間、法廷の中央に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「突然召喚されましたが、ここは?」


現れたのは聖香だった。


「ホルン領主新屋敷聖香よ。突然の呼び出し申し訳ないのじゃ」


フォルテは木槌を掲げる。


「ホルン領で観光名所を作っておるじゃろう?」


「戦国時代村のことでしょうか?」


「そうじゃ。この者たちを使え」


「えっ……」


聖香は三人の顔をじっと見比べた。


「うーん……」


三人は期待に満ちた表情で胸を張る。


「信長役か!?」


「余は今川義元じゃぞ!」


「私は光秀役ですね!」


聖香はにこりと微笑んだ。


「三人とも落武者役ですね」


「「「なんでじゃーーっ!!」」」


「皆さま、一度は敗軍となっておりますので」


「そこだけ妙に説得力があるな!」


その叫びは法廷中に響き渡ったのだった。




一ヶ月後。


「姫様、ホルン領で戦国時代村がオープンしました」


執務室にて、あれ以来裁判になるほどの事件が起きていない報告を受けていた私に七海が話しかけてきた。


「他国から珍しさに観光客が押し寄せているみたいです」


「あの三人はどうしてるの?」


「戦国演舞に出演しております。信長様は毎日本能寺で討たれ、義元様は桶狭間で討たれ、光秀様は山崎で討たれております」


「それ、演技じゃなくて実体験じゃない!」


「迫真の演技が話題となり、テレビドラマへの出演も決定いたしました」


「本人たちは『次こそ天下を取る』と張り切っております」


「もう芸能界で天下を取ってきなさいよ!」


天使に願った天下取り。


……まあ、芸能界でも天下は天下だ。


私は少しだけ応援することにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ