表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
PR
51/102

小話 破壊神、アルバイトを始めます。

ある日、いつも通り部屋に閉じこもり、ベッドに寝転がってゲームをしていた私は、突然強烈な眠気に襲われた。


そして――


篠宮紬(しのみやつむぎ)さん。御愁傷様でした」


気がつくと、見知らぬ場所に立っていた。


目の前には頭に天使の輪を浮かべた少年。


ああ、これは夢だな。


そう結論づけることにした。


「紬、死んでしまったのです?」


どうせ夢だ。乗ってやろう。


「はい。残念ながら」


「死因は?」


「説明が難しいのですが……」


天使は困った顔をした。


「ゲームでゲームオーバーになったじゃないですか」


「はい。レベルが足りませんでした」


「で、間違ってプレイヤーを死亡させてしまいました」


「理不尽なのです」


「本当に申し訳ございません」


深々と頭を下げる天使。


どうやら夢ではないらしい。


理不尽だが、本当に死んだようだ。


まあ、いいか。


学校にも行っていなかった。


友達もいない。


家族ともろくに口をきいていない。


生きていても仕方がなかった。


紬はそう思った。


「お詫びとして、あなたに三つの力を与え、転生させてあげます」


「神様になりたいのです」


「他には?」


「ありません」


「え?」


「神様だけでいいのです」


「欲がなさすぎません?」


「面倒なのです」


天使はしばらく悩んでいたが、


「わかりました」


天使は笑った。


「とびっきりの神にしてあげます」


と頷いた。


「では、良い転生を」


天使の声が遠ざかる。


そして紬の意識は闇に沈んだ。



次に目を開けたとき。


紬は公園のベンチに座っていた。


周囲には人間だけではない。


エルフ。


獣人。


様々な種族が行き交っている。


漫画で見たような異世界そのものだった。


「ここはどこなのです?」


近くを歩いていたエルフの女性へ声をかける。


「スターフィールドよ」


聞いたことのない国名だった。


古の悪魔姫(デビルプリンセス)ミナエ様が治める国よ」


悪魔姫。


なんだか怖そうである。


紬が身構えると、女性は苦笑した。


「そんな顔しなくても大丈夫よ」


「怖くないのです?」


「世界一福利厚生が充実してるから、とても住みやすいわよ」


「本当に悪魔姫なのです?」


「悪魔姫よ」


ますますわからなかった。


「住民になりたいなら、|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》に行けば家と仕事を紹介してもらえるわ」


「家も?」


「家も」


「仕事も?」


「仕事も」


異世界なのに、悪魔姫が統治してるのに何故か福利厚生がしっかりしている。


紬は少し感動した。



プリンセス・サーバンツ本部。


「いらっしゃいませ」


受付のエルフが笑顔で迎える。


「住民登録をしたいのです」


「かしこまりました」


手続きを終えると、水晶玉による適性検査が始まった。


しばらくして受付が首を傾げる。


「珍しいですね」


「何がです?」


「適職が一つしかありません」


「勇者とか魔法使いですか?」


「うどん屋です」


「うどん屋なのです?」


神様になったはずなのに。


適性がうどん屋だった。


「まずはアルバイトからになります。住居はワンルームでよろしいですか?」


「はい」


紬は少しだけ泣きそうになった。



地図を頼りに職場へ向かう。


店の看板には、


『うどん処 がんぞう』


と書かれていた。


店内へ入る。


「ヘイ、ラッシャイ!」


奥から現れたのは筋骨隆々の獣人だった。


白い手ぬぐい。


太い腕。


無数の火傷の跡。


どう見ても職人である。


「今日からアルバイトのツムギです」


「おう」


店主は短く答えた。


「ワシはガンゾウ。うどん一筋三十年だ」


「三十年」


「うどんを打つために生まれ、うどんを打つために生きている」


「他に趣味はないのです?」


「ない」


即答だった。


「裏で着替えてこい」


「はい」



紬が扉を閉めた瞬間。


ドォォォォン!!


店の壁が吹き飛んだ。


「……」


「……」


二人とも固まる。


「お前、何した?」


「普通に扉を閉めただけなのです」


「そうか」


「驚かないのです?」


ガンゾウは厨房を見た。


うどんは無事だった。


「うどんに被害は出てねぇ」


「それだけなのです?」


「それだけだ」


職人だった。



更衣室へ向かう。


ロッカーを開ける。


制服を取り出す。


ロッカーを閉める。


ドォォォォン!!


更衣室が消えた。


「店長」


「なんだ」


「更衣室がなくなったのです」


「外で着替えろ」


「雑なのです」



トイレを流した。


トイレが消えた。


厨房の蛇口をひねった。


流し台が消えた。


窓を開けた。


窓が消えた。


二時間後。


店は厨房と机だけになっていた。



「修理依頼を受けて来たんですが……」


呆然とした声が響く。


現れたのはトランペット村村長ヴィオラだった。


「ほぼ更地ですね」


「テロだ!」


ガンゾウが叫ぶ。


「村にテロリストがいる!」


「姫様のお膝元にそんな命知らずがいるとは思えませんが」


ヴィオラは紬を見る。


「この子は誰です?」


「ツムギといいます。先ほどから働くことになったのです」


「なるほど」


ヴィオラは真顔になった。


「姫様への報告案件ですね」


「え?」


「おそらくこの子は神です」


「え?」


「しかも破壊神ですね」


ガンゾウが目を輝かせた。


「商売繁盛の神か?」


「話聞いてました?」


その瞬間。


バキン。


誰も触っていない店の看板が真っ二つになった。


「あ」


紬は空を見上げた。


「……ごめんなさいなのです」


「確定ですね」


ヴィオラは遠い目をした。


「七海様が頭を抱える未来が見えます」


「誰なのです?」


「スターフィールドで一番苦労している人です」



その頃。


城ではミナエが昼寝をしていた。


「姫様」


七海が書類を持って現れる。


「なに?」


「新しい神様が発見されたそうです」


「へぇ」


「破壊神です。早速うどん屋をほぼ消滅させたそうです」


沈黙。


「返品できない?」


「無理です」


「そう……」


ミナエは毛布を頭まで被った。


「寝る」


「現実逃避しないでください」


こうしてスターフィールドに新たな住民が加わった。


後に国中の建物を恐怖に陥れることになる少女、


篠宮紬。


破壊神である。


なお、本人は最後まで、うどん屋の適性が出た理由の方が気になっていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ