姫様、福利厚生を求めます。
「幹部というと、悪の秘密結社とかにいるアレだろうか?」
「違います」
「四天王的な?」
「近いですが違います」
「じゃあ何よ」
「姫様が国の重要人物を任命するのです」
「それを先に言いなさいよ」
「本当に私が勝手に決めていいの?」
「当然です。スターフィールドの人事権は全て姫様にございます!」
ヴィオラはそう言い切ると、七海も頷いている。
じゃあ、簡単そうなところからいくか。
「トランペット村の村長はヴィオラ。ホルン村は聖香ね」
「ホルン領がホルン村になるのですか?」
聖香が聞いてくると、
「だって首都が村なのに、地方都市が領だったらおかしいじゃない」
「ならばトランペット村を、例えば首都トランペットとかにしたら良いのではないでしょうか? そもそも大陸で一番発展しているトランペットが村という定義がおかしいのです」
「私は田舎に住みたいから村のままがいいのよ」
「人口が増えたらどうするのですか?」
「村民が増えるだけでしょ」
「百万都市になったら?」
「大きな村」
「定義が雑すぎます」
「私はこれから静かなところでスローライフを送りたいんだから、村のままがいいの!」
「スローライフなんか送れるわけないじゃないですか。やること山積みですよ?」
「幹部って、私にスローライフを送らせるためにいるんじゃないの?」
「幹部をとりまとめるのが姫様でございます。転生前、国会中継で総理大臣が必死に毎回質疑応答してるの見たことないですか?」
「えー、あんなのやりたくない!」
「やらないために、幹部を取りまとめ、民のことを第一に考えなければなりません」
「じゃあ、いつ休めるのよ?」
「姫様次第です」
「ちゃんと仕事を片付ければ休めます」
「今の予定ですと百年後くらいでしょうか」
「さっきの私の話聞いてた?」
「何言ってるんだろうと思って聞いてました」
聖香は引き下がらないので、
「七海。あんたを私の参謀兼秘書に任命するわ。このわからず屋を説得して」
「わかってないのは姫様でございますが」
「そうなの!?」
「姫様は古の悪魔姫でございます。睡眠をとる必要はございませんし、体力も無尽蔵。あげくに病気に対して耐性がございます。休む理由がございません」
「古の悪魔姫を馬車馬だと置き換えないで!」
私が望んだのは姫様扱いであって、国家元首ではなかったはずである。
「でも姫様。良い報告がございます」
七海は真面目な顔を崩さない。
「私は人間ですので、週休二日がございます」
「そうね。秘書が休みだったら私も休めるわね」
「ですので、代理秘書も任命なさって下さい」
「どこがいい報告なのよ!」
「民は喜びます」
「私が喜ぶ報告しなさいよ! 私にも福利厚生をちょうだいよ!」
「姫様に必要ございます?」
「私のために作った制度が、私だけに使われないって理不尽よ」
「ご安心ください」
「なによ」
「姫様専用福利厚生として、仕事部屋の椅子を高級品にしておきます」
「そういう問題じゃない! せめて私にも週休二日制を要求するわ!」
「では裁きの神フォルテ様に審判を下していただきましょう」
「裁判にまでなる問題なの?」
「はい。休みの二日間は無政府状態になりますので」
「二日間は幹部たちでなんとかしなさいよ」
「そのために、気軽に選ぶのをおやめ下さいませ」
「ぐっ......」
そう言われると慎重に決めなくてはならない。
困ったらすぐに泣きついてくるような者。
目を離せない者は論外だ。
なんか近くで目を輝かせている期待に満ち溢れたオカリナが、まだかまだかといった感じで見つめてくる。
目が離せない人、堂々の第一位なのに。
なぜか本人は自信満々である。
だがその前に国にはなくてはならない人がいる。
真ん中の方でこっちを見ている彼女。
その名は水無月千尋。願望耕作という願ったものが収穫できるチート持ち。そして、スターフィールドの農業の基盤を支えてもらっている。
「千尋に食糧長官、開拓大臣、豊穣神代理に任命するわ」
「なんか肩書きが多いけど、わかりました」
「.....なんで敬語なのよ」
「もうただの姫様じゃないからです」
「やめてよ。今まで通りに接したいわ」
「なら、プライベートではそうします。プライベートがあれば。ですが」
「お願いだから週に一度は差し入れ持って来て」
「姫様。囚人みたいなことを言わないで下さい」
うーん。
ずっとこっちを見てくるオカリナが気になって仕方がない。
戦闘以外は壊滅的。
平常時は妹みたいで可愛いのだが。
「次、オカリナ」
「ははっ!」
「悪魔大元帥に任命するわ!」
「おおっ!」
「良かったわね。じゃ。次」
「姫様。お待ち下さい。悪魔大元帥って何をするんですか?」
「あんた今まで悪魔大元帥を自称してたじゃない!」
「カッコいい響きだったんで」
やはりポンコツである。
「有事の際に私を守るのよ」
「お任せください! で。平和な時は何をすれば良いのですか?」
「じゃあ鶏の世話でもしてなさい」
「ははっ!」
「姫様から鶏一羽を賜れるとは光栄です!」
「いや、仕事よ?」
「キャサリンと名付け、生涯大切に育てます!」
こいつ絶対、悪魔大元帥より鶏係の方が嬉しいわね……。
喜ぶオカリナと、それを見る私の前に、
「大元帥ときたら次は妾じゃな」
慈愛の女神リィナが前に出てきて、私は頭を抱えてしまうのだった。




