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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、隣国を困らせます。

「王よ。スターフィールドの王城について調査してきました」


場所は変わって、スターフィールドの南にあるテナー王国。コンダクタ皇国との狭間に揺れる中規模な国家である。


その王に仕える伊東裕太(いとう ゆうた)は実際に見て来たスターフィールドの実態を話すことにした。


「古の悪魔姫は先日幹部を任命し、さらに地盤の強化に努めております」


「また何か始めたのか」


テナー王は深いため息を吐いた。


スターフィールドの名を聞くたびに嫌な予感しかしない。


水を売り、


毒キノコを主食文化として成功させ、


聖法国を飲み込み、


コンダクタ皇国から併合を打診され、


今度は王城まで完成させた。


勢いが異常だった。


「就職率百%、週休二日制、残業時間ゼロ、なんか翌年からボーナスを支給する制度を思案中らしいです」


「ボーナスとはなんだ?」


「何故だ?」


「働いたご褒美だそうです」


「意味が分からん」


「半年同じ職場で働いたら三ヶ月分の賃金を支払うところから始めるとか。やってることが景気のいい日本です」


裕太は転生者だった。


彼は今でも死んだ理由に納得をしていない。


コーラを飲んだら毒を飲んだと天使に勘違いされて、死亡判定されたからだ。


文句を言ったが開き直る天使が、三つの願いを叶えたうえで転生させてくれるというから、


スポーツ万能でありたい。


モテたい。


楽して生きたい。


と、答えた。


こうしてテナー王国にて青年の姿のまま転生をし、王に仕えたのだが身体能力全般が最高レベルになったせいで、


「裕太、騎士団の訓練を頼む」


「裕太、使節団の護衛を頼む」


「裕太、魔物討伐を頼む」


仕事が山積みだった。


そして、王(老人)が時間を持て余した時、毎回お茶だの食事などに呼び出された。


「こんなジジイにモテても......」


最後の願い。


楽して生きたい。


明日食べるものもない者が多いこの世界で彼は、貧民からしたら楽をして生きているように見受けられていた。


願いは叶っている。


しかし、なんか違う。


これが裕太が毎日思う疑問だった。


王の命令で隣国スターフィールドの偵察に行った。


古の悪魔姫(デビルプリンセス)が治める魔族の国。


領内と呼ばれる森に入ると食べ物は毒キノコしか生えていない。


「終わってるな」


それが第一印象だった。


トランペット村に着くと、日本にあった平屋建て住宅が並んでいた。


公園があり、水道やトイレが完備。


しかも魔族はほぼおらず、人間やエルフ、亜人種が共存していた。


「あなた、初めての方ですね?」


裕太を見るなりエルフが声をかけて来た。


偵察だとバレたのか?


逃走という言葉が頭をよぎった時、


「まずは姫様にしもべプリンセス・サーバンツにて登録なさってください。住居と仕事が与えられます」


「いや、俺は旅行者で……」


「失業中ですか?」


「違う」


「ご安心ください」


「聞け」


「当村の就職率は百パーセントです。旅の方も安心して働けるよう短期バイトもございます」


「ハローワークかよ」  


言われるがまま施設に入り、受付に行くと、神様っぽい女がいた。名札には裁きの神フォルテと書いてある。


裁きの神が何故受付嬢をしているのかわからない。


「お主の能力を裁いてやる」


一方的にフォルテは裕太の額に手を当てると、


「まるで戦いに行くために生まれて来たような男だな。しかし、姫君は争いは好まぬ。宝の持ち腐れだな」


と、勝手なことを言われると従者認定証サーバント・ライセンスと書かれたカードを渡された。


「お主にできる仕事は大工か水道の設備だ」


「いやいや、俺の実力なら親衛隊長くらいはできるはずだ」


「親衛隊長という仕事はない。姫君には悪魔大元帥オカリナがいれば十分だ」


「悪魔大元帥だと? そいつに勝てばいいんだな? どこにいる?」


「今頃は自宅で鶏の世話をしているはずだ」


「悪魔大元帥が?」


「うむ」


何故、悪魔大元帥が鶏の飼育をしているのかわからなかったが、敵地でも戦う理由ができたことで教えられた家に向かった。


「ここだな」


ようやく辿り着くと家の裏から悲鳴に近い声が聞こえてきた。


このツインテールの女がオカリナ。なるほど。確かに鎌を背負っている。見た感じはただの小娘なのだが。


しかしオカリナは裕太に気づかず、鶏らしき生物に魔力を吹き込んでいる。


「おい。俺と勝負しろ」


威勢良く言ったはずなのだが、その声にオカリナがビックリした。


鶏は急成長、いや、違う何かに変化して気づけば家より大きな漆黒の竜がいた。


その巨体から漏れる瘴気だけで周囲の草木が枯れている。


「鶏を早く成長させて、卵をたくさん生ませるはずだったが、死の竜(デスドラゴン)に進化させてしまったじゃないか」


「種族が違いすぎないか?」


「貴様がいきなり声をあげるからだ! 姫様からいただいた鶏に何ということをしてくれるんだ!」


「元に戻せないのか?」


裕太が聞くとオカリナは呆れた顔をして、


「鶏と竜は種属が違いすぎるだろう。貴様は馬鹿なのか?」


「今、進化させていただろうが」


「仕方がない。死の竜(デスドラゴン)を育てて卵を産ませよう」


「飼うのか?」


「姫様からいただいた品だ。大切に扱わなければならん。しかし、飼う場所がない。どうしたものか」


一人で考え込むオカリナだったが、


「そうだ。逃げたことにすれば姫様も許してくれるだろう。テナー王国にでも捨てれば人間どもを根絶やしにできるし、世界征服への道もまた進む。いい考えだろう?」


いい考えかどうかは別として、テナー王国の密偵に話すのは絶対に間違っている。


「捨て犬、捨て猫、捨てドラゴンはお勧めしないな」


こんな竜をテナー王国(自分の国)に不法投棄されたら、たまったもんじゃない。


「確かに。ところで貴様は誰だ?」


「お前を倒しに来た者だ!」


「なにっ!」

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