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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、産業革命の予感です。

スターフィールド。


世界の中央にある魔の森と北に位置する元聖法国を支配する、古の悪魔姫(デビルプリンセス)が治める国の名称である。


世界に向けて発信したこの日、人類は魔族の再興に畏怖したといわれる。


しかしその一方で、こんな王女と側近がいた。


「話を聞く限り、ウチの国より発展してるよね」


「ハイ。生活水準が高く、就職率100%。治安もいいそうです」


「研究予算は?」


「潤沢かと」


「行くわよ」


「判断が早すぎません?」


「だって、魔族の国が人間の国より幸福度が高いってなに?」


「研究バカしかいない我が皇国は主食が未だに芋ですからね」


「もしよ? もしウチの国も併合されたら好き放題研究させてくれるかしら?」


「それは......しかし皇女様。歴代築いてきたコンダクタ皇国を研究がしたいからという理由で魔族に引き渡すのは、先代が泣き崩れるでしょう」


「聖法国ホルンも魔族領になって豊かになったみたいだし、先代も許してくれるに違いないわ。行きましょう。スターフィールドの首都トランペット村に!」


「首都が何故村なんですかね?」


「そんなこと知らないわ。でも直接行くならまずホルンかな。聖香ちゃんにも久しぶりに会いたいし」




一ヶ月後。ホルン領。


「聖香様。本日の申請書はこちらです」


メイドという名の職員が山のように積み上げられた書類を聖香の前にある机に置く。


「オリンさんの畑を川に繋げたい? 却下です」


聖香は即決断のもとに不採用の箱に入れる。


「綾子、寝てないで手伝ってくれません?」


「歌詞を考えて徹夜だったんだよ」


「誰も聞かない歌のことよりも、仕事の効率を考えてくれません?」


新領主となった聖香は週に五日こんなことばかりやっていた。


秘書の綾子は週に二日だけまともに仕事をこなしていた。


「聖香様。コンダクタ皇国の皇女裕美子(ユミコ)様がお目通りを願っております。追い返しますか?」


「いや、皇女相手に何を言ってるんです。お通しして下さい」


聖香は応接室に入ると、一人の少女がテーブルの上に広げられた設計図を夢中で眺めていた。


金色の髪は所々跳ねている。


皇族らしい豪華なドレスを着ているにも関わらず、その袖にはインクの染みが付いていた。


聖香が入室したことにも気付かず、少女は呟く。


「なるほど。この水路設計なら流量効率が——」


「皇女様」


「あ、ごめんなさい。考え事してたわ」


「いえ、相変わらずですね」


あなた(聖香)は祈るのやめたの?」


「はい。今はここの領主をさせていただいております。で、皇女様は何を?」


「裕美子でいいわよ」


「いえ。私は今は領主という立場ですので」


「で、領主って実際どう? 研究できる?」


「休みは確保されてますので出来はしますが、まさか姫様に取り繕おうとしてます?」


「私は研究さえ出来れば大体満足だからね。それにこの屋敷で見たのよ」


「何をです?」


「水洗トイレ。私なら温水便座を開発できる!」


「それはありがたいです」


「でもこの世界って電気の概念ないでしょ? 発電から考えないといけないのよね」


「それでしたら雷の四天王の一人ボルトさんと相談してみては?」


「誰? なんか禍々しい雰囲気あるけど」


「ほぼ全裸ですけど、雷系のインフラ要員みたいで、最近レベルが上がって姫様と使い道を模索してるって聞きましたよ」


「姫様って神なの?」


古の悪魔姫(デビルプリンセス)ですが、あの村に世界三大神も住んでますよ」  


「とりわけ姫様を紹介してくれない? 私の知識を上乗せしたら、この国は産業革命を起こせるわ!」


「でも、私は忙しいんです」


「出しちゃいなよ。この国にはあるんでしょ?」


「何を出すんです?」


「有給」


「まだそこまでは進んでないんです。法律も未だに働かざるもの食うべからずだけですし。まあ、私は行けませんが紹介状を書きますので誰かに渡して下さい」


「誰かとは?」


「どなたに渡しても姫様に届きますよ」


「どういうこと?」


「この国に住む者は姫様のしもべプリンセス・サーバンツに登録する義務がございますので、例え村娘であっても姫様に届きますよ」


「どんな教育されているのよ」


「学校でまず教えるのは文字の読み書き、そして履歴書の書き方ですから」


「学校で!?」


「はい」


「何を育てるつもりなの!?」


「人材です」


こうして裕美子は聖香から招待状を受け取り、トランペット村に向かった。


「ここから先は毒キノコしか生えてませんので注意って、なんなのよ」


森に入ろうとした際に立て札を読んで少し後悔をする裕美子。


「しかしこの注意書きを見ると、姫様も案外親切なのかしら」


そう呟いた直後。


「そこのお姉ちゃん!」


背後から子供の声がした。


振り返ると籠を抱えた村の少年が立っていた。


「その辺のキノコ食べちゃ駄目だよ」


「ええ、立て札にも書いてあったし」


「違う違う」


「違うの?」


「商品だから」


「商品?」


「うん。毒キノコ農園」


「農園!?」


少年が指差した先には、見渡す限りの毒キノコ畑が広がっていた。


「毒キノコのせいで誰も近づこうとしなかった森なんだけど、姫様のおかげで需要が増えてさ」


「毒キノコの需要って何!?」


「食用」


「食べるの!?」


「もちろん毒は抜くよ。姫様のコックさんからやり方を教わったんだ」


「普通のキノコの需要増やそうとは思わないわけ?」


「この森、毒キノコしか生えないから仕方ないよ」


裕美子は思わず毒キノコ畑を見渡した。


誰も価値を見出さなかったものに価値を与える。


それがこの国の発展の理由なのかもしれない。


この発想に裕美子は胸を打たれ、少年に紹介状を渡したのだった。




場所は変わって洋館(私の自宅)


「最近ダークエルフが増えてない?」


「ただの日焼けしたエルフですよ。海の家しかトランペット村には観光名所がありませんから休みの日はみんな海水浴に行っちゃうんですよ」


私の疑問に七海があっさりと答えてしまう。


「海っていったって、ただの湖じゃない」


「人気がありすぎて職人まで海に遊びに行ってしまい、築城が遅れております」


「それはそれで仕方ないよ」


「で、何を書いてるんです?」


「日傘よ。売れるかなって思って」


「可能性はあるかと。それにしても私は日頃この屋敷にひきこもっていますが、姫様、よく日焼けしませんね」


「紫外線耐性があるのよ。多分」


そんな話をしていたらオカリナが鼻息荒くしてやって来た。


「姫様。毒キノコ農園で働く子供が聖女の紹介状を持って来ました。なんでもコンダクタ皇女が面会を求めているそうです」


「どこにあるのよそれ?」


「知りません。とりあえず抹殺しましょう」


「紹介されて来た人を抹殺してどうするのよ」

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