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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、聖法国に辿り着けません。

聖法国ホルン。


かつて神に祝福された聖なる都と呼ばれたその街は、今や瓦礫の山と化していた。


崩れ落ちた城壁。


半壊した大聖堂。


焼け焦げた街並み。


復旧作業に追われる騎士や神官たちの顔には疲労の色が濃い。


そして何より。


誰もが理解できずにいた。


なぜこうなったのかを。


「第三区画の捜索終了! 生存者三名を発見しました!」


「井戸の復旧を急げ! 飲み水が足りん!」


「神殿の食糧庫はどうなっている!?」


怒号が飛び交う中、一人の老人が崩れた大聖堂を見上げていた。


聖法国法王。


この国の最高指導者である。


「……まさか、あのような化け物が現れるとは」


法王の声はかすれていた。


突然飛来した一羽の鳩。


それは聖都上空で炎をまとい、伝説級魔獣カイザーフェニックスへと変貌した。


そして。


国を半壊させたのである。


「法王様」


背後から声がした。


振り返ると、そこには疲労困憊の聖騎士達が立っていた。


「オリン様がお戻りになりました」


「……そうか」


法王は小さく頷く。


やがて騎士たちが左右に分かれ、一人の男が現れた。


聖騎士団長オリン。


聖法国最強と謳われた闇魔法使いである。


しかしその表情は険しかった。


「状況は聞いておる」


周囲の騎士たちが頭を下げる。


オリンは瓦礫と化した街を見渡した。


そして低く呟く。


「聖女様がおられなくなって一週間」


「神の使いが現れ」


「国が滅びかけた」


沈黙が落ちる。


誰も反論できない。


法王が重々しく口を開いた。


「これは神罰なのだろうか」


するとオリンは即答した。


「違う」


その目は鋭かった。


「これは事故じゃ」


「……事故?」


「神の使いなら、もっと上手くやる」


法王は頭を抱えた。


まったく安心できない答えだった。


オリンは続ける。


「じゃが、これだけは確かじゃ。聖女様を連れ戻さねばならん。さもなくば、この国は本当に終わる。しかし聖女様は福利厚生という魅惑に取り憑かれ国を離れようとせなんだ」


「福利厚生だと?」


「まさに悪魔の所業に違いありません」


「しかし、聖女には勇者が護衛していたであろう」


「あー、そういえばいたのう」


「どういう意味じゃ」


「食い逃げで捕まって釈放されたようじゃが、なんか偉そうにワシに文句言っておったのう」


「勇者が?」


「勇者がじゃ」


「……」


その瞬間。


遠くで鐘の音が鳴り響いた。


復興の鐘ではない。


見張り台からの警鐘だった。


「報告!」


若い騎士が血相を変えて駆け込んでくる。


「南方街道に人影を確認!」


「何者じゃ!」


「それが――」


騎士は息を飲んだ。


古の悪魔姫(デビルプリンセス)と、愉快な仲間たちです!」


オリンは天を仰いだ。


「終わったな」


「オリン様!?」


「国が半壊したところを狙って侵攻してくるとは、まさに悪魔の発想じゃ」




そんなことを言われてるとは知らない私は、


「なんで徒歩なのよ!」


と、いつまでも目的地につかないことに苛立っていた。


「道が細くて馬車が通れませんから、仕方ないですよ」


聖香は平然と答える。


「あなた達といい、騎士団といい、よく村に来る気になったわね」


「移動は徒歩が基本ですから。それとずっと気になっていたのですが、村ってなんですか?」


「村は村よ。あなた達こそ国って呼んでるじゃない」


「だって国じゃないですか」


「どこがよ」


「王様がいて」


「いないわよ」


「軍隊がいて」


「従業員よ」


「住民がいて」


「村人よ」


「法律があって」


「働かざる者食うべからずだけよ」


「税金があって」


「給料から村に必要な経費を天引きしてるだけよ」


「……」


「……」


「あれ?」


困った私に従者として同行していた七海が言った。


「ちなみに人口は現在五千人ほどです」


「なんで増えてるのよ」


「移住希望者が後を絶ちませんので」


「ほらもう少しで国じゃないですか」


「でも、村よ」


私は言い張ると、オカリナが空を飛びながら戻ってきた。


「姫様。人間が住む街を発見しましたので戻ってきました!」


「ここからどれくらいのところにあったの?」


「徒歩だと三日くらいでしょうか」


「そんなに歩くの!?」


私の身体から絶望の波動が溢れ出た。


波動は力強く、人の形を作り出す。


闇はやがて消え、私に膝をついたまま挨拶をした。


「雷の四天王。ボルト、参上しました」


「挨拶はどうでもいいから服着なさいよ」


「これが正装なんですが」


アクアといいフレアといい、四天王はパンツ一丁が正装なのはどうにかしてくれないだろうか。


「ミナエさん。不審者です。通報しましょう!」


「誰によ。一応こんな見た目でも四天王だけあってインフラ要員としては優秀よ?」


「我々はインフラ要員ですか......」


「で、雷の四天王って言ったわね。電気自動車とか用意してくれるの?」


「いえ、我は悪ガキに怒鳴るスキルしかございませんが」


「ただのカミナリオヤジじゃない。帰りなさいよ」


「作り出されて即帰宅命令を出されても。レベルが上がればお役に立てるでしょう」


「現在レベルは?」


「1です」


「新入社員じゃない」


「四天王なのですが」


「試用期間中でしょ」


「で、我はどうすれば」


「裸のオッサン連れて行くの恥ずかしいから、布切れでいいから身を纏いなさい」


「まるで奴隷ではありませんか」


「じゃあ、毒キノコしか生えてない森で一人で生きる?」


「……」


「……」


「姫様について行くことを、我は決意しました!」


こうして私たち一行は変質者を連れて再び北に歩く羽目になるのであった。

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