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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
24/47

姫様、聖女と雌雄を決します。

結局、トランプで決着をつけることになった。


「七海。準備お願い」


「はい。かしこまりました。準備してきます」


それからしばらくして。


「準備できました!」


七海に呼ばれ、私と聖香はホールへ向かった。


そして。


床一面を埋め尽くす大量のカードを前にして、聖香は完全に停止した。


「……多くないですか?」


「千枚あるからね」


「……」


聖香は床を見渡した。


もう一度見渡した。


「頭おかしいんですか?」


「失礼ね。ちゃんと用途別に分けてあるわ」


「用途があることに驚いてるんですが」


カードには絵のようなものが描かれていた。


だが、普通のトランプではない。


「というか、トランプって言ったのに、数字もマークもないじゃないですか」


「学校の教材で使ってるからね。これで読み書きを教えてるのよ」


「識字率を下げるための教材ですか?」


聖香は呆れながら一枚持ち上げた。


そこには、紫色の謎の物体が描かれている。


「ちなみにお聞きしたいんですが、これは何ですか?」


「犬よ」


「え?」


「犬」


「どう見ても溶けたナスですよね?」


「どこをどう見ても犬よ」


「子供の感性を破壊する目的でもあるんですか?」


さらに別のカードを拾う。


今度は茶色い四角に、棒が四本生えていた。


「……これは?」


「椅子」


聖香は無言でカードを置いた。


そして両手で顔を覆う。


「どうしました?」


「世界が怖くなってきました……」


それを見て、オカリナが腕を組みながら頷いた。


「神を超越した姫様の芸術に、ついに言葉を失ったようだな。おとなしく姫様の軍門に下るが良い」


「芸術ならまだよかったんですよ……!」


聖香は深いため息をついてから聞いてきた。


「……で、これで何をするんですか?」


「しりとりで勝負よ」


「トランプ要素どこ行ったんですか!?」


「裸足で逃げていったわ」


「比喩のクセが強いんですよ」


私は床に並ぶカードを指差した。


「まあ先行をあげるわ。好きなのを選んで」


「じゃ、じゃあ……これで」


聖香がおそるおそる拾い上げたのは、灰色の生き物が描かれたカードだった。


「それ、レッドドラゴンじゃない。最後に「ん」がついたから、あなたの負けね」


「ロバじゃないんですか!?」


「どう見てもレッドドラゴンよ」


「もうこの国の“どう見ても”が信用できないんですが!? あなた、これが何かわかる?」


聖香は「たぬき」のカードを見せると、オカリナは胸を張って、


「ふっ、悪魔大元帥の知識量を試すつもりか愚か者め。アンモナイトにしか見えんぞ」


「......アンモナイトなんですか?」


少しの沈黙。


そして少し汗を垂らして私は答えた。


「......アンモナイトよ」


「何故、視線を逸らすのです?」


「文句ばっかりうるさいわね。ならあなたが書いてみなさいよ」


私はそう言うと、七海が紙とペンを聖香に手渡したのを見て言った。


「お題はそうね。古代ローマ帝国の......いや、ビザンツ帝国の方がいいかな......」


「あの、難易度爆上げ、やめてもらっていいですか? そもそも判断基準どうするつもりですか」


「じゃあ、たぬきでいいわよ」


「そんなの簡単ですね」


聖香はスラスラと書いて見せてきたが、


「アンモナイト書けって言ってないわよ?」


「どう見てもたぬきですよ!」


それを見ていた七海が、


「二人とも絵の才能が絶望すぎる」


と、小声でため息をつくと、途端に私の体から絶望の波動が溢れ出してくる。


「突然なんですか、闇のオーラなんか出して」


私は波動が広がるのを見つめながら答えた。


「多分、あなたの絵があまりにも絶望的だったので、私の古の悪魔姫(デビルプリンセス)成分が刺激されたのよ。つまり、あなたは聖女と周りからチヤホヤされてるくせに、今、世界を闇に染めようとしてるのよ!」


「そ、そんな......!」


聖香は、ありえないといった表情で一歩後ろに下がると、七海が一歩前に出て小さく頭を下げて言った。


「申し訳ございません。私がお二人のあまりにもひどい絵の才能に絶望を感じてしまいました。それがどういうわけか姫様に反応したかと思います」


「とりあえず、闇に染められるわけにはいきませんので、ちょっと失礼します」


聖香は両膝をつき祈るようにして手を組むと、白い輝きがあたりを包み出す。


光と闇の波動が重なった時、床に並んでいた千枚のカードだけが、一斉に宙へ舞い上がった。


そしてカードが収縮し人の形へと変わっていく。


何が起きているのかわからず、ただ見ているだけだったのだが、


「神が産まれようとしてます......」


「何余計なことしてくれてんのよ! 四天王っていう便利なインフラ要員を創り出せるチャンスだったのに!


しかし、神はすぐ生まれた。私より背が高くまるでモデルのような美人。


「私は裁きの神フォルテ。悪を裁き、世界を正しく導き——」


そこまで言った瞬間。


バァン!!!!


ホールの扉が乱暴に開いた。


「姫様。勇者と名乗る者が、うどん屋で食い逃げをしたとかで捕まえてきました! いかがいたしますか!?」


裁かれる者第一号は勇者だった。


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