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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
13/47

姫様、王様に会いに行きます。

牢屋に入れられた。


それも、まとめて。


「……いや、なんで私まで?」


鉄格子の前で腕を組みながら、私は現実を受け入れようとしていた。


隣ではオカリナが満足そうに頷いている。


「姫様。見事な潜入でしたね」


「潜入じゃない。普通に捕まったのよ」


「結果的に内部に侵入できたので次は脱獄ですね」


「王様にフリフリドレスを売りにきたのに脱獄したら交渉すらできないじゃない。何をしに来たのよ」


私はドレスが入った風呂敷をオカリナにアピールをした。


反対側では、リィナがふんぞり返っていた。


「解せぬのう。女神である妾を牢に入れるとは」


「その前に聞くけど」


私はゆっくりと振り返る。


「……あんた、門番の言う通り、前にカシュタルの街で民衆から確かに金を巻き上げていたわよね?」


「巻き上げたとは失礼な。妾は慈愛の女神として——」


「“お金を払えば救われるのじゃ”ってやつ」


「…………」


一瞬の沈黙。


「まあ得たのは貨幣でなく、ただの真鍮と、前科一犯という不名誉だったわね」


「妾、女神なのに前科もちとは。悲しみ」


「悪魔大元帥の私より悪の存在と認められてしまうとは......やるな、女神よ」


「…………」


「妾、神なのじゃが」


「そこはもう争点じゃないのよ。ま、もうすぐ取り調べがあるでしょ。実際このフワフワドレスを見せたらって、フワフワじゃなくてシワシワになってるじゃない!」


風呂敷から出したら、ドレスが死にかけているようにぐったりした感じになっていた。


「なんでよ! 昨日までフワフワしてたじゃない!」


ぽふん。


触れた瞬間、ドレスは何事もなかったかのように元に戻った。


「なんだったのよいったい」


私は胸を撫で下ろすと、


「そのドレス、ミナエの魔力を定期的に注がんと萎むみたいじゃのう」


「つまりそれ、私の魔力で生きてる服ってこと?」


「正確に言うと、身体から漏れ出す絶望の波動を糧としてるんじゃろうな」


「そんな栄養素、聞いたことないんだけど」


そんなやりとりをしていると、兵士が2人やって来ては鉄格子がギィ、と嫌な音を立てて開いた。


「出ろ」


短く、冷たい声。


私たちはまとめて牢から引きずり出された。


「姫様、いよいよ拷問ですね」


「さらっと物騒な単語出すのやめてくれる?」


「安心してください。痛覚があるか試すいい機会です」


「このタイミングで?」


廊下を進むと、石造りの部屋に通された。


中央には長机。両脇には鎧姿の兵士。そして一番奥に、明らかに格が違う男が座っていた。


白髪混じりの髭、鋭い目つき。いかにも“王都の偉い人”という圧がある。


「……で、こいつらが例の」


「はっ。カシュタルにて騒動を起こした自称女神と仲間たちです」


「自称じゃないのじゃが」


リィナが即座に抗議するが、誰も聞いていない。


私は小さく手を上げた。


「私はこのドレスを王様に売りに来ただけよ」


「こんなドレスをか!」


男が乱暴にドレスを奪おうとしてきたので、


「王国に売りに来たって聞こえなかった? こう見えてもこのドレス、城一つや二つくらいの価値があるのよ? あなた、責任とれる?」


「……城一つや二つ? なら俺がもらってやろう。王も喜ぶだろう」


男の眉がピクリと動き、高笑いをする。


その態度を見てイラッとした。


【絶望の波動が発動します】


身体から、闇が溢れ出す。


「あんた、さっきから誰に物言ってるのよ」


「うわぁっ、なんだこれは!」


闇が男や兵士たちを飲み込もうとする。


【絶望の波動が人間を餌として求めています。許可しますか?】


闇が男に向かっていくが、


「拒否よ。今はセール中じゃないの」


ぴたり、と止まった。


男たちは泡を吹いたまま気を失っていた。


「さて、売りつけにいくわよ」


「姫様。絶望の波動を使いこなせるようになってきましたね!」


「イラついたら結果こうなっただけよ」


目を輝かせるオカリナに一瞬だけ微笑みかけ、王の間を探すことにした。


取り調べ室を出て階段を探す。


「姫様。下に降りる階段を見つけました!」


「普通上がる階段じゃないの!?」


「ならば破壊しますか?」


「出られなくなったらどうするのよ。とりあえず降りるわよ!」


というか牢屋に入れられた時、気絶していたわけでもない。普通に覚えているはずなのだが。 


牢屋は地下にあるもの。


その先入観、地味に恐ろしい。


階段を降りると、何故か誰かの寝室に辿り着いた。


「この城どういう構造してるのよ!」


「姫様。誰かが寝ています。暗殺しますか?」


「何の得があるのよ」


私は聞き返したが、その前にもう行動をとられてしまっていた。


「暗殺されたくなければ姫様のドレスを買え。買えばちゃんと暗殺する」


背負っている鎌に手をとるオカリナ。


「買う意味とは?」


一方当たり前の疑問を投げかける私。


しかし寝ている者は微動だにしない。


オカリナが生きているか確認しては起こしてなんか話し出す。


「姫様、こやつはただの盗人だそうです。疲れたから昼寝していたみたいです」


「この城の警備ザルすぎない?」


「そのザル警備に妾たちは捕まったんじゃがのう」


私たちは盗人を縄で縛って部屋を出ると、王の間にでた。


「なんだお前たちは!」


王冠を被った人物は威嚇してくる。


「旅の商人よ! 盗人を捕まえて来たわ!」


「いや、旅の商人が盗人を捕まえて寝室から出てくるなよ」


「売り込みルートの最短距離よ」


「絶対違うだろ」


私はドレスを広げた。


「で、買う?」


「買うか!! まず説明しろ!!」

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