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プリンセス・サーバンツ 〜スローライフ希望だったのに魔族の姫として働かされてます〜  作者: みずほたる
望んだのはスローライフ。――なのに大陸統一を目指されています。
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姫様、王都に向かいます。

「——このままだと、この村は詰むわね」


通貨がない。


つまり、報酬が払えない。


報酬がなければ働かない。


働かなければ発展しない。


……詰みである。


姫様のしもべプリンセス・サーバンツを設立するにあたり、今やらなければならないことを懸念として述べた。


「ところで通貨ってやっぱり金貨とかですか? 見てみたいです」


七海は目を輝かせたが、


「一枚も流通してないわよ。森の外と簡易な貿易をしてるけど物々交換だもの」


「それでよく村を立ち上げられましたね」


「勢いよ。勢い」


しかし、私には一応の策はあった。


「ヴィオラ。この森の周辺で一番お金を持ってそうな国はどこ?」


「それならばカシュタルの街を含んだ領地を治めるアンダンテ王国かと」


「じゃあ、その王様に会いにいくわ。オカリナ。同行してくれない? ヴィオラと七海は村の発展に尽力しててちょうだい」


「かしこまりました! 王の暗殺、是非この悪魔大元帥オカリナにお任せいただけるのですね?」


「そんなことしないわよ。あのフリフリドレスを買ってもらって、この村のスタートダッシュのために一気に経済を爆発させたいのよ」


カシュタルの街では高価すぎて買い取ってくれなかったが王様なら話は別かもしれない。


「資本金ってどこの世界でも必要なことがわかったわ。さて、お金を取りに行こうか」


こうして私とオカリナ、何故かリィナが西の国の首都に向かうことにした。




「資本金持って帰ってきてください。でないとこの村、終わります」


村から出る時に七海に釘を刺されたが、私だって詰みたくはない。


「でも、アポ無しで王様って会えるものなのかしら?」


「真正面から行って拒む者を切り刻んでいけば、いずれ会えます」


「オカリナは相変わらずじゃのう。女神である妾が来たと言えば、向こうから出迎えてくれるであろう」


「女神よ。これまで貴様が讃えられたのを見たことがないが、よく言えたもんだな」


「信仰が足りん国など、滅びても問題ない」


「奇遇だな。私としては滅ぼすことに関しては同意見だ」


この2人を連れてきたことに後悔しかなかったのだが、残した方が問題を起こすと思うことにした。


——この時の私は、まだ知らなかった。この旅がとんでもない騒動になることを。


カシュタルで水を売った資金で、なんとか馬車に乗ることができた。


「この馬車は古の悪魔姫(デビルプリンセス)様が乗っ取った。首都に向かってもらおう!」


「いや、元々首都に向かいますんでご安心を」


「馬主よ。慈愛の女神の加護を授かりたくはないかのう? 今なら特別サービスで与えてやるのじゃが」


「いえ、結構です」


他に乗客がいて、


「……乗る馬車、間違えたかもしれん」


「あの、降りてもいいですか?」


と、話声がしたが私は聞かなかったことにした。


それよりも、どうやって王様に会えるかを考えたかった。




2日後、アンダンテ王国首都フェルマータにようやく辿り着いた。


馬車を降りた瞬間、思わず足を止める。


「……なによ、これ」


目の前に広がっていたのは、これまで見てきたどの街とも違う光景だった。


石畳の大通りはまっすぐ王城へと続き、その両脇には隙間なく建物が立ち並んでいる。


木の家なんて一つもない。見渡す限り、白い石造りばかり——


「……建築費、いくらよこれ?」


通りには人、人、人。


商人が声を張り上げ、露店では果物や肉、見たこともない加工品が並び、香辛料の匂いと焼きたてのパンの香りが入り混じって漂っている。


その間を、装飾の施された馬車や、鎧を身に纏った騎士たちが当たり前のように行き交っていた。


「……金、めっちゃ動いてそうね」


思わず本音が漏れる。


「姫様、目が輝いております」


「当たり前でしょ。資金が手に入ったら全部買い占めてやるんだから」


「さすが姫様。発想が侵略者ですな」


「違うわよ、経済活動よ」


私は即座に訂正した。


ふと、空を見上げる。


街の中心には、周囲の建物とは比較にならないほど巨大な城がそびえ立っていた。


白亜の壁に、いくつもの塔。旗が風に棚引き、その存在感は遠目からでも圧倒的だ。


「あれが……王城」


「ほう。なかなか立派ではないかのう。妾の神殿と比べると見劣りするが」


「存在しないものと比べるのやめてもらえる?」


そんなやり取りをしながらも、私は視線を城から逸らさなかった。


——あそこに行けば、資金が手に入る。


そう考えると、自然と口元が緩む。


「さて」


私は軽く手を叩いた。


「問題は——どうやってあそこに入るか、よね」


とりあえずダメ元で城に向かうと2人の門番に止められてしまった。


「貴様ら魔族だな! 何の用だ!」


「王様に商談を持ちかけにきただけよ。神のドレス買い取ってくれないか? ってね」


たしかアシュタルの街の道具屋がそう言っていた気がするので嘘ではない。


「魔族の言うことが信じられるか! 帰れ!」


調べもしないで頭ごなしに断られてしまう。見た目で判断されるのは嫌な気分になる。


「門番よ。こやつが言っていることは本当じゃ。アシュタルの道具屋に売ろうとしたら買い取れる金がないと言われてのう。こうなったら王くらいしか買い取れる者がおらんのじゃ」


リィナが私の前に出て弁護をしてくれた。


「アシュタル。あっ、おまえは!」


「フッ、やっと気づいたのか。妾こそ世界三大神の1人、慈愛の女神リィナじゃ」


偉そうに胸を張るリィナだが、


「慈愛の女神リィナ様を騙る怪しい詐欺まがいのことをしている女がアシュタルの民を惑わせたという報告を受けている! 自首しにきたのか!」


「え?」


「この魔族と詐欺師を捕えよ!」


「え?」


——数秒後。


「いや待って、私も巻き込まれてるんだけど!?」

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