其の百十四…『『食べ物は感謝してくれない』の話』
これは『昼休み怪談部部長』である『ユズハさん』の『友達』の『友達』である『アフレヤ(『良い時代に産まれた』の意味)・アジェイ(『おしゃべりで魅力的』と言う意味)さん』という『女子高校生(二年生なので先輩)』が話してくれた話である。
「こんにちわ。私は『万葉高校』に通ってる『アフレヤ』、『フレちゃん』とでも気軽に呼んでくれたらいいよ(笑顔)」と『フレちゃん先輩』
「『万葉高校』……聞いたことないんですけどどこの高校です??」と『私』
「『射水(富山県射水市)』の高校だよ。『フレちゃん先輩』のお父さんは確か『射水』で『魚の養殖』やってるんだよね?」と『ユズハさん』
「そうそう、この話は『パパ』が『会社』で育ててる『サクラマス』に関する『怪談』だよ~……あ、でもあんまし『怖くない』かもしんないから、私が『ここ絶叫ポイント!』って手で合図するからさ、その時にになったら『ぎゃああ!!』て悲鳴あげてよ。やっぱ『怪談』って『雰囲気』がすべてなところあるじゃん?(眩しい笑顔)」と『フレちゃん先輩』
「「そんな合図出される方が余計に怖くなくなりますよ(困惑)」」と『私』&『ユズハさん』
『射水』は『魚の養殖』が盛んな地域だそうで、『フレちゃんパパ』は『養殖の会社』に勤めていて、その会社では『川魚』は『陸上にある施設内の生簀』で育てており、また『ブリ』などの『海の魚』は『漁港の海水中に浮かんでいる生簀(四角形の網)』の中で飼育して大きくしているらしい。
そしてこの『会社』の『主力商品』が『サクラマス』だそうで、この魚は『稚魚時代』を『川』で過ごし、成長すると『海』に降りて行って『成魚』になり、『産卵』のために『子供のころ過ごした川』に戻って来るという『習性』があるそうだ。なので『サクラマスの養殖』では『稚魚』をある程度まで育ててから『川』に放流し、『戻ってくる季節』に河口付近に『網』を仕掛けて『捕る』というわけである。
そして『フレちゃんパパ』は基本的に『ブリの養殖』を担当しているそうだが、『小さい会社』なので『担当』は実際のところあまり明確に分かれているわけではないらしい。
それでも彼の仕事はもっぱら『海の魚たち』に『餌』をあげたり、『養殖用の網』を管理したり、定期的に開かれる『稚魚の放流イベント』の手伝いをしたりしているそうだ。『地元の子供たち』と一緒になって『稚魚』を『川』に放流するのである。実際『魚の養殖』は『富山』だけでなく『石川』や『新潟』でも盛んなそうで、特に『佐渡』は『サクラマスの養殖』で大変有名な土地らしい。ちなみに『フレちゃんパパ』の名前は『デイヴィッドさん』とのこと。
『デイちゃん、ちょっと『水中ドローン』動くか確認しといてくれない? また前みたいに『作業中にバッテリー切れ』は困るからさ』と『同僚の中野さん』
『ナカさん、俺の愛称は『デーブ』だって。『デーブ・スペクター』の『デーブ』ね? 『デイちゃん』はおかしいんだって』と『デイヴィッドさん』
『何でもいいよ(投げやり)。それよりバッテリーの件いい?』
『オッケーオッケー、飯食ったらやっておくよ』
『水中ドローン』とは『カメラ』を搭載した『水中用のドローン』で、それで『養殖用の網』が破れてないか『検査』するのだそうだ。北陸沿岸には『イルカ』が出没するのだが、そのイルカたちが『養殖用の網』を『噛みちぎって』から中の『魚』を食べることがあるからである(余談)。
「水産関係者にとって『イルカ』ってマジの『害獣』なんだよね~、畑を荒らしに来る猪や鹿と大差ないわけよ、普通の人たちは海沿いに『イルカ』が現れたら大喜びで撮影するだろうけど」と『フレちゃん先輩』
「そういえばなんか最近『シャチの群れ』も目撃されてたよね?? 『シャチ』なんかがやってきたら『養殖用の網』なんて全部台無しにされちゃうんじゃない??」と『ユズハさん』
「あ、『ユズハさん』、『シャチ』って実は滅茶苦茶『偏食』で群れごとに決まったものにしか食べないそうですよ。『エイのひれだけ』とか『サメの肝臓だけ』とか食べ物の好みが『滅茶苦茶狭い』からそこは多分問題ないと思います……『悪戯』で壊す場合は別でしょうけど」と『私』
さてさて、そんな『デーブさん』がたまたま『一人』で『養殖用の生簀』を見に行った時だそうだ。『生簀』といってもどこかの『施設内』にあるわけではなく『漁港の海中に浮きに吊り下がっている四角形の網』で、そこに『漁船』で近づいて『餌』を網の中に投げ込むのだ。そのために『餌を乗せたトラック』を運転して『漁港』に入ると、『平日の昼間』に『漁港内』で『五人くらいの子供』が踊っていたという。
『『『『『パパ』が流した♪ 『私達』を『流した』♪ 『ジョポジョポ』流した♪』』』』
『(なんだ変な歌だなぁ?? なにかの『アニメ』か??)……やぁ! 君たち『学校』はどうしたんだ?? もしかして『通信制』とか?? もしそうだったらごめんよ!(眩しい笑顔)』と『デーブさん』
『デーブさん』は『娘さん』と同じく『気さくな人』なので『なんとなく声をかけ』つつ『トラック』を降りたそうだ。この『漁港』は『交通アクセス』がよく『大きな市場』もあるので『観光客』が多いのだ。その人たちとの『会話』も彼の『楽しみ』の一つらしい。
すると『子供たち』が集まってきてその中の『一人』がいう。
『『パパ』が流したんだよ? 『ジョポジョポ』流したんだよ?? 『私たち』が皆『流れ』て行っちゃったんだ』と『一人』
『…………?? えっと、どういう意味だい?? 『パパ』っていったい誰? 君たちこのあたりの子供じゃないようだけど(漁港の周辺は漁師が多く住んでいて皆顔見知り)、もしかして『迷子』なのかい??』と『デーブさん』
『『パパ』が流したんだよ! 皆『流れて』いっちゃったんだ! 絶対に戻ってくるからね! 『パパ』が『流した』んだ、『皆』『ジョポジョポ』流したんだ、戻って来てほしいよね? だから戻ってきたんだよ?』と『子供たち』
『…………??? えっと、おじさんは本当にわからないんだ、いったいそれはどういう意味だい??』
『『パパ』が流したんだよ、『ジョポジョポ』流したんだよ、戻ってきたんだよ!』
『…………』
『子供たち』はずっと『パパが流した』とかの『よくわからない言葉』を『無表情』で繰り返すだけだった。そこで『デーブさん』がちょっと『あること』を思い出した。
(…………ま、まさか『光弘さんの娘さん』の『一件』のことを言ってるのか??)と『デーブさん』
『光弘さん』とは『去年』やめた『会社の元同僚』で、彼の『成人していた娘』が『妊娠』したが『恋人』から『お腹を蹴られ』て『流産』したという事件を思い出したそうだ。当然『恋人』は逮捕されたが『娘さん』も『精神疾患』になり、『光弘さん本人』も『娘の世話のため』といって『辞職』したのである。そのことで『デーブさん』は思わず『ごくり』とつばを飲み込む。
すると子供たちは突然『わぁ!』と叫んで、
『『流される』ぞ~! 逃げられないよ~!』
そう騒ぎながら『漁港』を走って出ていったのだった。『デーブさん』はしばらく自分の手で『左胸』に触れて『動悸』を確かめていたが、
『…………なんだったんだ一体……今日は『嫌な日』だな……ふぅ(溜息)』と『デーブさん』
その後『家』に帰って『妻と娘』のこの話をすると『二人』は、
『『パパが流した』って何?? 『光弘さんの事件』と『パパ』は無関係じゃん』と『フレちゃん先輩』
『そもそも『流産した子供』は『一人』でしょう? なんで『五人』もいるの??』と『奥さん』
『…………確かに。じゃああれは一体何の話をしてたんだろう……??』と『デーブさん』
『私とユズハさん』から言わせると『怪異は複数個所に同時に存在できるから数なんか関係ない』と思っているが、まあそれはいいだろう。
その『数日後』に『デーブさん』は『会社の同僚』と一緒に『漁師』を手伝うことになり、『夜』のうちに『漁船』に乗って『定置網』に向かった。到着すると『網』の中を見ると『大きいサクラマス』が沢山入っており、『漁師』たちは『今日は大漁だ!』と『歓声』をあげたしたらしい。
『ガハハ! これは『仕事』は『午前中』では終わらねぇぞ! あとで『飯』買って来てもらわねぇとなぁ!』と『漁師たち』
『網の中のサクラマス』が予想より多かったので『漁船の収納スペース』の中に一回では入り切らず、結果『漁船』と『港』を何回も『往復』させたそうだ。その後『漁港』で『魚の仕分け作業』が始まったのだが、そこで『デーブさん』は『漁船の船長』から『サクラマス』を『丸ごと二匹』貰ったのである。
『ほら『デーブ』もってけ! 『お前さんの会社』のおかげで俺らも『儲け』が出てるんだからこれくらいは持ってく資格がお前さんにはあるぞ! 嫁と子供に食わしてやれ!』と『漁師さん』
『ありがとうございます!(大喜び)早速帰って『刺身』にしますよ!』と『デーブさん』
『寄生虫がいるかもしれねーから一回冷凍しとけよ! ガハハ!』
他の『漁師』が『保存用の氷』と『発泡スチロールのケース』を貸してくれたので『デーブさん』が『サクラマス』を中にいれるとまだ『サクラマス』はかろうじて生きていたのか『口』を『パクパク』させる。
そして、『喋った』のだ。
『『パパ』が流したんだよ?』
途端に『デーブさん』が『サクラマス』を放り出して地面にへたり込んでしまった。彼が『真っ青な顔』で震えていると『漁師』の一人が怪訝な顔で近づいてきて、
『あん? どうしたデーブ!? 『ぎっくり腰』か!?』
『あ、ああ……! そ、その魚は『戻ってきた』んだ……『俺たち』が『流した子たち』なんだ……!!』と『デーブさん』
『デーブさん』は瞬時に『理解』してしまったそうだ。そして『漁師』も『彼の様子』を見るとおおよそ『察した』そうで、『サクラマス』をおもむろに拾いあげると『漁協』の『建物』に向かったという。
『あ、あの……ちょ、いったいどこへ??』と『デーブさん』
気になって『デーブさん』も追いかけると、『漁師さん』は『建物』の中にある『給湯室』に置いてあった『包丁』と『まな板』を使って『サクラマス』を『三枚』におろし始めたのである。
『わ!? そ、その魚はしゃべ……』と『デーブさん』
『……ここは『海』だ『デーブ』。『ガーナ』はどうか知らんが『日本』では『板子一枚下は地獄』なんて言葉もあってな、『海』は『化け物の住む世界』なんだよ。こんなことでいちいち『驚いてた』ら『海』では暮らしていけんぞ……おっし、二匹とも仕上がったぞ』
そういって『漁師さん』は『デーブさん』に『魚の切り身』を渡した。それから『白い歯を見せてニッコリ笑み』を浮かべて、
『……こうなったらもう『喋らない』ぞ。ほらもってけ、さっきも言ったが『寄生虫』には気をつけろ? 『一日』ほど『冷凍』しておけば死ぬから、そうしてから食えよ』
この話を『デーブさん』はまた『家族』に話したそうだが、『奥さん』も『フレちゃん先輩』も気にせず『刺身』にして食べたらしい。
『……なんか『嫌』じゃない?? だって確かに『稚魚』から見たら俺たち『養殖業者』は……』と『デーブさん』
『それじゃあ『パパ』は『肉』や『野菜』が『喋りだした』らそれも食べないってわけ? 私は普通に食べるよ? だって『お腹』すいてるもん』と『フレちゃん先輩』
『『健康的な体』になるためには『バランスのとれた食事』が不可欠よ。それに『人間』は『雑食動物』なんだから仕方ないわよ。そりゃあ『魚』の方は食べられたくないから『あの手この手』を弄してくるでしょうけどね。それで『餓死』しても『食べ物』が感謝してくれるわけじゃないでしょう?』と『母さん』
『『食べ物が感謝してくれない』……そんな考え方もあるんだね……『パパ』ちょっと『目から鱗が落ちた』気分だよ……(アーメン)』と『デーブさん』
『サクラマスの刺身』は普通においしく、その後は特に『病気』とかにもならなかったらしい。
そして『デーブさん』は今でもたまに『喋る魚』を『養殖』することがあるそうだが、もう気にしていないとか。
『『魚』は喋ろうが喋らなかろうが『DHAとEPA』が豊富なんだよ。俺は『長生き』したいからね(笑)』と『デーブさん』




