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其の百十二…『昼休み怪談部事始め:『人形にまつわる話『その3・後編』』』

 この話は『其の百五』の『続き』である。『人形』にとり憑かれて『幻覚』の世界で生きているという、立派な『霊障被害者』である『桂川彰浩さん』に『本物の霊能者:氷室麗華さん』は『妖刀』を向ける。なぜならその『霊障』が『桂川彰浩さん本人』でもあるからだそうだ。



「…………すでにあなたの『母親』から『事情』も聴いてるわ。『あなた』は長期の『引きこもり生活』の中で『亡き父親』からもらった『就活のための費用』で『人形ラブドール』を買ったそうね。『父親』は『失意』の中で病死し、そのせいであなたは『人形』に強く『執着』するようになった……そしたら『人形』がある日突然『動きだし』て、それからあなたは『人気漫画家』という『幻想』の中で生きるようになったと……」と『氷室さん』



 彼女は『廊下』から『日本刀』を『キラリ』と鈍く輝かせながら『一歩』、また『一歩』と慎重に『桂川彰浩さんの部屋』へと『距離』を詰めていく。対する『桂川さん』は『腰を抜かして』いたが、『奥さん』に促されて『ハッ』として何とか立ち上がった。



「…………『母親』はすべてを見ているわよ。いい加減『思い出し』なさい『桂川彰浩』、そしてその『人形』を『あなた自身の手』で『破壊』しなさい。あなたは『霊障』によって『認識』と『記憶』を『ゆがめられて』しまっているわ。その『人形』を破壊しない限り『あなた』は『霊障(自分自身)』から『自由』になれない。さぁ、いい加減『夢』から覚めて『現実』を思い出すのよ……!!」と『氷室さん』



「く、来るなぁ! 『部屋』に入って来るなよ! 入って来たら『何が起こるか』分からないぞぉ!!(金切声)」と『桂川彰浩さん』



『桂川さん』はどうやら『手のひらサイズの見えない人形』と、さらには『奥さん』を守ろうとしたようだった。だが『氷室さん』は『部屋のドア』の前まで『迫る』と、そこでいったん『停止』してしまう。


 その背後には『ノアさん』が『弓矢』を構えていたし、『悠さん』も『長槍』をどこからともなく取り出して『穂先』を『桂川さん』に向けていたわけだが、その『二人』も『微動だ』にしなくなる。『桂川母子』はしばらくその様を眺めていたが、やっぱり『堰守衆』はそれ以上は動こうとしない。



 なので『桂川彰浩さん』が一転して『高笑い』を始めて、


「…………ははは! なるほど! 『そういう』ことか! 確かにあんたらはさっき『俺に現実改編能力がある』とかなんとか言ってたな! つまり『プロの退魔師』といえども『俺』に『近づく』ことが『できない』わけだ! はははは! おい『あんた(ノアさん)』! その『弓矢』を俺に『撃った』らどうだ!? それなら届くんじゃないか!?」



 それでも『ノアさん』は何もせずにただただ『舌打ち』をするだけだった。すると『氷室さん』が、


「…………『弓矢』でも結局『同じ』よ。『現実改編能力』がある限り『矢』が『桂川彰浩』に『到達』すること『絶対にありえない』わ」



「あはは! 『素直』に認めるんだな! じゃあ一体あんたらは『ここ』に何しに来たんだ? あははははは! もしかして『俺たち』を『笑わせる』ためにきたのかよ? 見てみろ『妻』も腹抱えて笑ってるじゃないか! 『お笑い堰守衆』だなぁ! あははははは!」と『桂川彰浩さん』


『ノアさん』と『悠さん』が『え? なんでそんなに正直に言うんですか!?』と驚いた顔になり、『桂川母』が目を『白黒』させ、『桂川彰浩さん』が笑いのあまり『奥さん』の方に向いた。



 その『瞬間』、『氷室さん』が『日本刀』を振り下ろす!!



 ブゥン!!



 すると実に『不思議なこと』が起こった。『日本刀』の『切っ先』からまるで『羽根無し扇風機』みたいに『突風』が吹き起り、それが『空中』を走って『桂川さんの奥さん』に『衝突』し、『炸裂』したのだ!



 バガァン!!



 何が起こったのか『桂川彰浩さん』には理解できなかったようだ。彼は『強烈な風』に一瞬視界を奪われて『ひっくり返り』、『突風』でちぎられた『奥さんの首』が『空中』に舞い上がる。



 その様を『妖刀』を通して『氷室さん』が『視認』しながら、


「…………『あなた』が『油断』する『一瞬』を待っていたわ。さすがに『これ』は『あなた』でも『予想外』だったから『防御』できなかったようね……さぁ改めて『目を覚まし』なさい『桂川彰浩』。あなたの『妻』はなぜ『首』が斬り落とされても『血』が一滴も出ないのかしら?」



 ゴトン! ゴロゴロ……、



 舞い上がっていた『奥さんの首』が『鈍い音』を立てて床に落ち、『桂川母』が『悲鳴』を上げて『尻餅』をつく。そのまま『首』が『風』に煽られて『氷室さん』の足元に転がってきたので『髪の毛』を掴んで拾い上げた。



「…………『これ』こそが『桂川彰浩』の『精気』を吸って『生きた人間のふり』をしていた『人形』よ。さぁ、『このざま』を見せられてはさすがのあなたの『甘い夢』も覚めざるをえないでしょう? 目を開けて『刮目』なさい……! あなたの『霊障』はこれで『解けてる』わよ!」と『氷室さん』



「…………やっぱりあの『桂川彰浩』が持っていた『見えない人形』は『存在しない人形』だったわけですね」と『ノアさん』


「あの『ラブドール』こそが『呪いの人形』そのもの。安心して下さい『桂川彰浩さんのお母さん』、これで『怪異』は無事退治できましたから」と『悠さん』


「…………ほ、本当に『退治』できたんですか?? ああ、よ、よかった……(へなへな)」と『桂川母』



『恐怖』で尻餅をついていた『母親』が今度は『安堵』で脱力してその場にへたり込んだ。どうやら『桂川彰浩さん』には『美人妻』に見えていた『ラブドール』は『母親』にはちゃんと『人形』のままで見えていたらしい。『桂川彰浩さん』には『現実改編能力』があったのだが、なぜか『母親』にだけは効いてなかったというわけだ。『堰守衆』は後日に『桂川母の家系』について『調査』したとか(余談)。



 そして『氷室さん』は『人形の首』を掴んだ状態で『顔を手で覆っている桂川彰浩さん』に近づいて、


「さぁ、ちゃんと『これ』をみなさい。そうすればあなたは『現実改編能力』を失って『普通の生活』に戻れるわ。あなたは『霊能力』を獲得した代わりに『寿命』を代償にしていたのだから、これでやっと『元気』に……」



「……や、やめろぉ! 近づくな『人殺し』! こっちに来るなあああああ!!」と『桂川彰浩さん』



 彼は『正気』に戻ったはずなのに『金切り声』をあげて自分の『目』を必死に隠し、さらには何でも適当に投げつけて『氷室さん』を遠ざけようとする。



「落ち着きなさい『桂川彰浩』! 私は『あなたの妻を殺した』わけじゃないわ! これは『あなた自身が生み出した『呪いのラブドール』』で、あなたをその『霊障』から『解放』しただけ……」と『氷室さん』


「いいやお前は『人殺し』だぁ! 『俺』が『現実』に戻ったからって何の『いいこと』があるんだ!? 『現実』に『絶望』して『自殺』しようとしたやつなんだぞぉお!!」と『桂川彰浩さん』



 彼が投げた『ゲームコントローラー』が『氷室さん』の偶然当たって『人形の首』が落ちる。すかさず『桂川彰浩さん』がそれを『奪取』して自分の懐に抱きしめながら、



「……『あんたら』のせいで『思い出したくない』ことを『思い出した』ぞ!! 『あんたら』に『俺』の『絶望』が分かるか!? 『医者』から『彰浩さんは先天的な軽度の『知的障害』です』って言われた時の俺の『気持ち』がよぉ!! 『空気読めない』し『他人の感情をくみ取れない』からどこに行っても皆から『性格が悪い』と陰口叩かれ、しかも『易怒性(怒りを抑制できない)』と『易疲労性(人より疲れやすい)』のせいでいつも『言われたこともできない、自己弁護をくりかえす怠惰な屑』扱いで『いじめ』の『標的』だ! でもわかってても『自分』ではどうしようもできないんだよ! なのに皆『努力が足りない』しか言わないし! …………」



 彼は『泣きじゃくり』ながらしゃべり続ける。そのため『氷室さん』も黙り、『ノアさん』と『悠さん』は『桂川母』を見る。



「…………昔から『絵』だけが『得意』だったけど、それは『全てが並以下』だった俺が『唯一人並みにできたこと』だからだ! でも結局『人並み』だから『SNS』でも『下手糞のくせに絵師様気取りの馬鹿』としか言われないし、『出版社』に送っても『一次選考』すら通らないんだ! 後は『自分の部屋』で『シコシコ』自分を慰めることくらいしかできない……なんで『俺』をこんな風に産んだんだよ『お袋』ぉ! なんでもっと『平均的な知能』に産んでくれなかったんだよ!! こんなんだったら『中絶』してくれた方がずっとましだったじゃねぇかよぉ!!」と『桂川彰浩さん』



「うぅ……ごめんね彰浩……本当にごめんね……」と『桂川母』


「「! …………この『屑野郎』!!!」」と『ノアさん』と『悠さん』



『母親』が『涙』を流しながら『息子』に謝る姿を見て『若手ホープ二人』が反射的に『沸騰』して『桂川彰浩さん』を睨みつける。だが『彼』は『呪いのラブドールの首』を『体』にもう一度くっつけてから、



「…………そんな『俺の絶望』が『お前ら』なんかにわかるかよ(真顔)。『甘い夢から目覚めて現実を見ろ』だぁ? 『現実』を見た瞬間『俺』は『死ぬ』しかないんだよ……! だから『お前ら』は『人殺し』なんだ。『俺』は絶対に『地獄げんじつ』には戻らない……放っておいてくれ……『俺の本当の人生』は『現実』にはないんだよ……」



 彼がそういうとともに『ラブドール』が『再起動』し、彼が再び『幻想の世界』に戻ったことが『全員』に理解できた。だが『氷室さん』は『妖刀』をしまうことなく、



「…………あなたにとり憑いているのは『縊鬼』の仲間の『人間に絶望を植え付けて自殺に誘導する悪霊』だわ……! 確かに『あなたの苦しみ』は私たちには理解できないでしょうけど、それでも『悪霊に殺されかけている人』は絶対に見逃すわけにはいかない……何としてもあなたを『現実』に引き戻すわ……だって『私たち』を呼んだのは『あなた自身』なんですもの……!」と『氷室さん』




 だが『桂川彰浩さん』がそこで実に『不思議そうな顔』で『氷室さん』達を見て、


「…………えっと、あなた達誰ですか? あ、もしかして『俺』の『ファン』ですか? 困るな~! 『母さん』も簡単に家の中に入れないでよ~!」






 そこから『堰守衆の若者三人』は『何度』も、それこそ覚えている限りでも『30回』以上は『桂川彰浩さん』がひきこもる『幻想世界』に『挑戦』し続け、そのたびに『彼』を『現実』に引き戻すことに『成功』したらしい。



 だが『成功』するたびに『桂川彰浩さん』は『地獄のような現実に戻りたくない!』とすぐにまた『幻想世界』に引きこもり『記憶』を消してしまうのである。なのでそのうち『ノアさん』と『悠さん』は『諦め』たそうだが、『氷室さん』最後まで『意地』になってやめようとしなかった。



「…………えっと、あなた達『誰』です? あ、もしかして『俺のファン』…」と『桂川彰浩さん』



「いい加減にしなさい! すでにあなたの体は『骨と皮』だけの状態になっているのよわからないの!? すぐにでも『入院』しないと『死ぬ』わ! 『生きてさえ』いればいくらでも『やり直し』は効くの! それなのにそんな簡単に諦めないで! 『私たち』もできる限りの『支援』はするから……」と『氷室さん』



「『姉御』! もう『あれ』は無理っす! 『説得不可能』っす! あいつは『自分の意志』で『幻想』の中にいるんです! もう帰りましょう! こんなの『時間と体力の無駄』っすよ!」と『ノアさん』


「何を言ってるのあなた達まで!!! じゃあどうして『桂川彰浩』は私たちを呼んだのよ!?」と『氷室さん』


「そこが『あの男』の『本当に愚かな所』なんですよ!! あの『男』は『意思が弱い』から『幻想の世界』にも完全に『逃避』しきれないんです! 多分『死ぬしかない』と思いながらも『死ぬのが怖い』んですよ! もうこの男は無視しましょう『姐さん』! 『こいつ』にかまけて『他の怪異』が野放しになったら、それこそ『化け物ども』の『思う壺』ですよ!!」と『悠さん』



『二人の弟子』に止められても『氷室さん』はやっぱり諦めなかった。彼女は本当に『意志が強い』のだ。だがどれだけ『同じことを繰り返して』も『桂川彰浩さん』が『現実』に戻ることはなかった。



 結局彼は『最期』は『美人の妻』の膝枕の上で『恍惚そうな顔』で、


「…………こうやって『綺麗な奥さん』と『かわいい子供と孫たち』に看取られて、『天才漫画家』の名誉とともに『あの世』に行ける『俺』は『世界一の幸せ者』だよ……できることなら『ひ孫の顔』もみたかったな、ははは……すまない『マリア』、『先に逝く』俺を許してくれ……」



 彼が『息を引き取った』のは『氷室さん』たちが駆け付けてから『一か月後』だったという。その後『呪いの人形』も二度と動くことは無くなり、『堰守衆』が引き取って『焼却処分』したのだそうだ。

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