お姫様の夢。
「ちょっとー?彩樹、大丈夫ですかー?」
「は?なにが」
午後最後の授業後。
私の意識は平岡の声で少しだけ覚醒した。
「ボーっとしてんな?保健室行ってくれば?」
「あー、大丈夫。嘘だけどね」
朝からずっと頭が重い。
頭がデカクなったのかと思って、朝鏡で確かめたが、いつものサイズだった。
私は馬鹿か。
「おい、まじでおかしいぞ?」
「元からじゃない?」
「それもそうか」
真顔で頷く平岡に蹴りを入れた。
瞬間。
「あっ………」
「おいっ!」
倒れた。ぶっ倒れた。
音が変な風に聞こえる。
ぐわんぐわんする。
「の…脳みそ吐きそう」
「ンなわけないだろ!ちょっ、いいか?」
「は?え?あ。」
霞む視界の中、目線が高くなった。
クラスから黄色い声が上がる。
え、なになに、この状況。
なんで叫んでるの?え、なに?
程なくして理解する。
私、平岡に抱っこされてる。
しかも、お姫様抱っこってやつ。
「離せっ!!!」
抵抗する。
「ほーら、暴れんな馬鹿。」
「るっせぇ!」
いつもなら飛び降りれるけど、今日はなんだか力が入らない。
ギュッとされてる所が、温かくて気持ち悪い。
「保健室行くからな、あばれんなよ。」
平岡の声。
「てめぇ!」
その後、私のよく知ってる声が聞こえた気がした。
「お兄……ちゃ、ん?」
その直後、私の意識はぶっ飛んだ。
私は、夢を見ていた。
夢だと分かったのは、隣にお兄ちゃんがいたから。
もうずっと、お兄ちゃんと一緒に歩いてない。
きっとこれは、小学校3年生位の時だ。
お兄ちゃんが自分と、私のランドセルをぶっ壊して、2人仲良くリュックで登下校していた。
「お兄ちゃん?」
「ん?なに?花夜」
「花夜ね、中学校でもお兄ちゃんといっぱい遊びたいっ!」
「あたりまえだろ?花夜は弱いから、俺が守ってやるよ」
小学校の時は、私もお兄ちゃんも、口数が今よりずっと多かったとおもう。
「花夜、お兄ちゃんのこと、ずっと大好きだからね!」
「あぁ。俺も!」
恋人同士の様な会話をしてる私達をみて、思わず微笑んだ。