特技?
「花夜ちゃんの部屋広いね〜」
「そうですか?」
「うん!凄い広い!」
そんな広い(?)部屋も、10人入れば少し狭い。
特に面白い物のない私の部屋を、みんな物色していた。
「ねぇ、花夜ちん」
「あ?」
「えっ、なんか俺に対して当たりキツくね?椋夜くんそっくり」
「そんなことないですー!なんですか?曜先輩」
「いや、ピアノあるから、弾けるのかな〜と思って」
「弾けないのにある訳ないじゃないですか。」
保育園の頃、白いグランドピアノに憧れて買って貰った、ちょっとお値段高めな白の電子ピアノ。
中3の時は、受験勉強の息抜きに、かなりお世話になった。
両親が仕事で家にいないことが多く、暇だった私は、ピアノの他にも、学習塾や、バレエ、柔道、剣道などたくさん習い事をしていた記憶がある。
お兄ちゃんは、バレエの代わりにキックボクシングを習ってた。
あ、だから喧嘩強いのか。
「あれ、葵も習ってなかったっけ?」
「ちょっとだけね」
「ハナヨルちゃんピアノ弾けるんだ〜。以外!」
「ちょっとどうゆう事ですか?」
てゆうか理央先輩はハナヨルで通すんだな。
まぁいいけど。
「なぁ、彩樹」
「なに、扇原」
「弾いてよ、ピアノ」
うっわ、すげぇ嫌な顔。
あの顔は私が嫌がるのをわかって言ってんな。
sなのか?
「やだよ。めんどくさい。」
「えぇ、じゃあ皐月先輩」
「俺!?」
あぁ、先輩に飛び火しちゃった。
ごめんなさいー。
「俺は下手くそだし…」
「でも、かなり楽譜ありますよ?先輩」
「うーん…」
今までに弾いたピアノの楽譜を先輩に差し出す。
「じゃあ、俺が弾いたら彩樹も弾いてな」
「えぇ!?ちょ、先輩!」
私の了解を得ずに勝手にピアノに向かい合う。
いつの間にか楽譜をセットしていた。
…ヴェートーベンの月光、第三楽章だ。
凄く綺麗で、聞き惚れてしまいそう。
絶対ちょっと習ってたレベルじゃないし、どこかで聞いたことがあるような気がした。
「……ここまで」
「え?終わりにしちゃうんですか?」
「いや、ここまでしか弾けないんだ」
優しい笑顔で私にピアノの席を譲る。
あの演奏のあとは凄い弾きにくいのだが。
「よし、じゃあ、弾こう。」
意を決して鍵盤に手を置く。
曲はショパンの幻想即興曲。
小学校の5年生くらいで、どうしても弾きたくて、凄く練習した曲だ。
弾き始めてからは、特に何も考えてなかった。
ただ、とても楽しくて、夢の世界にいるみたいで、みんなの前なのを忘れて弾き続けた。
「…凄い綺麗。」
演奏が終わる。
雀野先輩の声で私は現実に引き戻された。
いつの間にか、お兄ちゃんと朱神もいる。
愛未先輩によると、かなり大きい音を立てて部屋に乗り込んできたらしい。
全く気づかなかったけど、もう少し静かに出来ないのか、あの不良。
「凄いね〜!花夜ちゃん見直したよ!ただの不良かと思ってた!」
「朱神にだけは言われたくないです」
「ひどいなぁ〜。てか今の時間分かってる?」
「時間?」
部屋の壁掛け時計を見る。
時刻は18:30前。
「…そろそろお開きにしましょうか?」
「そうだね!」
「また明日〜!」
「さようなら、先輩!」
いろんな人に手を振って、その場は静かになった。
「…ピアノ、上手だった。」
みんなが帰ってからお兄ちゃんがなんか言ったけど、うまく聞こえなかったから、
とりあえず笑っておいた。




