ちょっとはっぴー
「ただいま」
いつも通りに家の扉を開ける。
返事はない。
お兄ちゃんは…
「いる…」
乱暴に脱がれた馬鹿でかい黒のスニーカーは、紛れもない兄のものだ。
身長190cmもあればそりゃあ靴もデカくて当然だが。
現時点で身長150も無い私と何が違うのか。
「ん?」
お兄ちゃんの隣にきちんと並べられたこれまたデカいスニーカー。
このサイズならお父さんでもおかしくないが、今は海外出張中。
そもそもお父さんがこんなシンプルなスニーカーを履くとは思えない。
ってことは…?
弓道部の人達に少し待つよう頼み、そぉっと階段を上る。
お兄ちゃんの部屋から聞こえる声に耳を澄ませる。
『なぁ、椋夜〜』
『あぁ?んだよ』
お兄ちゃんの声と、馬鹿みたいなアイツの声…
『花夜ちゃんが扉の向こうで何かをやってるけどいいの?』
「ッ…!?」
ガタッ…
突然自分の名前が聞こえて思わず音を立ててしまった。
もう、最悪!
「花夜ちゃん、盗み聞きなんて趣味があったなんて、びっくりなんだけど?」
扉を開けながら朱神が意地悪な笑顔を向ける。
「別に盗みきなんてしてませんけど?」
嘘だけど。
「嘘は良くないなぁ…玄関に誰かいるみたいだし。」
「…なんでわかるんですか…」
「え〜?秘密〜」
ウザったい朱神を無視して、お兄ちゃんの元へ向かう。
「お兄ちゃん」
「あぁ?」
「弓道部の人達、部屋に入れてもいいよね?」
「他人を部屋に入れてどうすんだよ」
他人って…
「じゃあ、朱神はどうなんだよ」
「…チッ。勝手にしろ」
「ありがと」
お兄ちゃんに勝った気分でちょっと嬉しい。
トントンと階段を下りて、弓道部員を自分の部屋に招き入れた。




