34話 決勝の舞台
全ての準決勝が終了し、明日の決勝に進出する4チームが決定。その1つである俺達チーム27は、最後のミーティングを行っていた。
「今日見たように、決勝の相手はどれも強敵だ。特に、大将戦では3人の超能力者が出てくる。だが、ここまで来たんだ。何が何でも絶対勝つぞ!」
「「はい!!」」
「よし、じゃあ明日に疲れを残さないために、今日は解散だ。明日の9時半に控室でな!」
みんなはそれぞれの寮に帰る。しかし、小雲先輩は会場から動こうとしなかった。
「おい七道、突っ立ってどうしたんだ?」
「あ……いえ。ちょっと忘れ物を……」
「お前、もしや……」
ぎくっ!
「明日俺達の試合がこの会場で映し出されるとこを想像してただろ!」
「えっ? あ、あははは!! バレちゃいましたか! ちょっと自分が活躍して大歓声が沸くとこを妄想しちゃいました!」
「ははは。まあ、ほどほどにな。じゃあまた明日!」
一ノ瀬先輩も帰って行った。
「……一ノ瀬先輩、もう行ったよな」
「はい」
「……ごめん、糸くん……肩貸してくれん……?」
「小雲先輩……やっぱり足が……」
「うん……。実はな、病院には行ってないんや。きっとドクターストップされてまうけん」
小雲先輩は皆の前では顔に出さなかったが、足の怪我は相当悪く、痛いらしい。
「俺は小雲先輩が時谷未来を倒すためにとても頑張っていたのはよく知っています。どうしても勝ちたい理由があることも知っています。……でも、その状態で試合に出場するのは流石に……」
小雲先輩は俺の口に手を添えた。
「糸くん、それ以上言わんといて。私は絶対に出る……例えもう二度と歩けなくなっても……絶対に」
「小雲先輩……」
「明日の決勝で時谷を倒して王座を取ることが、これまで私がチューベローズにいたことの全てなんや。……ドクロのバッジをつけてこの学校に入学した私なんかが、偉大な先輩に大きな夢を託されて、そんな重すぎる夢のために生活を捧げるほど努力してきた……。でもやっぱり、くる年もくる年も負け続けて……とうとう明日がそれを叶える最後のチャンスになってもた……。……勝ちたい……勝ちたいよぉ……糸くん……!」
小雲先輩はもたれかかるように俺を抱きしめ、溜めていたものを全てさらけ出すように涙を流した。
ここで、「俺に任せてください」なんて言えたらどれだけ恰好いいだろうか。
「小雲先輩、絶対に勝ちましょう。時谷未来に勝って、一緒に王座を掴みましょう……」
「うわあああん!!」
今の俺からはこんな言葉しか出てこなかった。
小雲先輩は感情と足の痛みが限界になり動けなくなってしまったので、俺は小雲先輩をおんぶしてセトル・ブルーオーシャンまで送り届けた。
小雲先輩が王座を取りたい気持ちは分かっていたつもりだったけど、きっと俺の思っている以上に王座に懸けていたんだ。普段は先輩として取り繕っていて、奥底にある本心は抑えていたのだろう。
でも、足を怪我している小雲先輩には無理をさせられない。
「俺が……時谷未来を倒すんだ……!」
そう口にはするものの、本当に倒せると思っているのだろうか。あの雪夜と、練習でほとんど勝てなかった小雲先輩が負け続けた相手に、俺なんかが……。
赤砂寮への帰り道。
俺の中の強気と弱気がひっきりなしに戦っていた。
ピロリン!
そんな時、ケータイが鳴る。
「フィアスからメッセージだ。『準決勝勝ったから、今日もお祝いのご馳走食べよ~!』……。はは、なんか悩みがある時って、マイペースなやつに救われるな」
俺は返信し、食事街で買い物をしてフィアスの部屋へ向かった。
◇◇◇
ピンポーン
「はい、今開けますわ」
ガチャ
「おまたせ、フィアス……って雪夜!?」
「こんばんは。私もさっきフィアスに誘われましたの」
ちょっと気まずい。なぜかというと、準決勝に勝った俺とフィアスに対して、雪夜は準決勝を敗退しているから。
「おい、フィアス。お前準決勝の結果見てないのか?」コソコソ
「え? 見てないけどどうせみんな勝ったんでしょ?」
やっぱりだ。フィアス軍曹は試合も見ていなければ、結果も知らない。
「あのな……」コソコソ
「ええっ!? 雪夜負けちゃったの!? あの雪夜が!?」
「声がでかい!!」
パシッ!!
「痛い~!」
「糸、お気になさらないでください。昨日散々泣きましたから、もう大丈夫ですわ。それに、私は貴方たちに勝ってほしいんです。私にも夢を託させてください」
「雪夜……」
「ねえ雪夜、雪夜は誰に負けたの? 未だに信じられないんだけど」
「能力者ランキング1位の時谷未来ですわ。……糸、以前、彼女には謎の力があるって仰ってましたよね?」
「うん。先輩が言うには、瞬間移動した感じって……」
「はい。その力を私も体感しました。そして、私は時空を闇で支配していたため、何が起こったかを見破りました。彼女は、時を止めています」
「時を……止めているだって……?」
「その通りですわ。彼女は不連続に時空を移動しました。空間転移でないのであれば、もうそう考えるほかありません」
「そんなの……勝てるわけないじゃないか……」
「難しいと思います。しかし、彼女は止まった時の中では私のバッジを壊しませんでした。止まった時の中で壊せばいいのに、ちゃんと時が動きだしてから壊しています。ここに、何か突破口があるかもしれません」
◇◇◇
大会最終日。
既に会場は激しい席取り合戦が始まっている。
入り口の賭け券の販売も大変混雑している。
しばらくすると数万人入るという樫木講堂がほぼ満員となり、場内に実況が流れ始めた。
『おはようございます。本日は待ちに待った決勝戦が行われます。640人の生徒によって繰り広げられてきた熱戦の末に勝ちあがって来た、選ばれし4チームによる最終決戦。決勝戦の実況は私【遅口 轟】とチューベローズの校長である元岡校長とお送りいたします。元岡校長、よろしくお願いします』
『今年もたくさんの熱戦があったからのう。ここまで上り詰めた4チームに敬意を表するとともに、素晴らしい戦いに期待しとる』
『それでは、決勝まで上りつめたチームの紹介です』
場内の画面には昨日までの試合のハイライトが流れている。
『Aブロックからは、チーム4が出場。大将を務める時谷未来選手は、去年と一昨年でも優勝を経験しています。準決勝に繰り広げられた松蔭雪夜選手との熱戦は、非常に見ごたえがありました』
『続いて、Bブロックからは、チーム27が出場。1回戦では12 ptを獲得するという、先鋒、中堅、大将ともにバランスの取れたチームです。この決勝では唯一、複数人の能力者が所属しています』
『Cブロックからは、チーム48が出場。皆さんご存じのように、大将の千陽朝日選手は去年の準優勝チームの先鋒でした。過去を振り返っても、時谷選手以外の選手にバッジを破壊されたことはありません。昨日の弥生心乃選手との戦いは、壮絶なものでした』
『最後にDブロックからは、チーム61が出場。チームからの情報によりますと、大将を務めるフィアス選手はマナが少なく、練習も、試合でも超能力の使用をセーブしていたそうです。この決勝の舞台でその力が爆発するのか、底知れない実力に注目です』
『ここで、現時点におけるチームのオッズを見てみましょう。やはり、時谷選手が率いるチーム4が1番人気です。しかし、かなり割れているようだ』
【決勝、総合オッズ(単勝)】
チーム4(赤) :9.8
チーム27(白):15.6
チーム48(青):12.3
チーム61(黄):16.4
『大将特化のチームが多いゆえ、先鋒、中堅の結果は鍵を握りそうじゃ』
『さあ、間もなく先鋒戦が始まります。最高のバトンを中堅へ繋ぐのはどのチームでしょうか!』
『先鋒を取れれば、一気に流れに乗れるからのう』
『こちらは、その先鋒戦のオッズです』
【決勝・先鋒戦、個人オッズ(単勝)】
村雨 茶佑(チーム4(赤)/1年/ランキング圏外) :149.2
中村 晴美(チーム4(赤)/5年/ランキング圏外) :33.1
二宮 菊音(チーム27(白)/2年/42位) :5.5
ジョナルド・シックス(チーム27(白)/5年/ランキング圏外) :102.6
小泉 進太郎(チーム48(青)/4年/ランキング圏外):48.6
川上 幸雄(チーム48(青)/2年/ランキング圏外) :111.2
森下 一郎(チーム61(黄)/5年/ランキング圏外) :90.1
大塚 雫 (チーム61(黄)/4年/ランキング圏外) :85.5
『一番人気はやはり唯一の能力者、白チームの二宮菊音!』
『二宮選手を倒せるかどうかが他のチームのポイントになりそうじゃ』
『それでは、決勝先鋒戦、スタートです!!!』
ビーーーーーーー!!!!!
ワァァァァァァァァァッ!!!!!!
『フィールドは泥の沼地だ! これは戦いにくいぞ!』
「足者がぐちゃぐちゃ……。それに障害物がないから、視界が開けてるわ。……えっ!?」
菊音さんの目に、たくさんの敵が向かってくるのが映った。
『おおっと、これはまさかの展開か! 全てのチームの選手が、白チームの二宮に向かっているぞ!』
『やはり、どのチームも確実に二宮選手を倒しに来てますねぇ!』
グチャグチャと、菊音さんの周りに敵が集結した。
『二宮選手は囲まれてしまった! 6人相手はいくら能力者であっても苦しいか!』
「二宮、特訓を思い出せ。お前は目隠ししながら、たくさんの障害物がある森の中で走り回っていたんだ」
(目で見るのではなく、感覚で辺りの空間を把握する……!)
「ふぅ……」
「隙ありだーーー!!」
パリンッ!!!
『な、なんと二宮、後ろから来た相手に見事対応しました! 青チーム川上選手、脱落です!』
菊音さんは落ち着いて集中し、【逆空間の次元】を読み、正確に相手の動きを見切った。
「「それなら、二人がかりだああ!!!」」
「ふっ……!! んっ……!!」
パシッ!!パシッ!!!
菊音さんは周りから束になって襲い掛かる敵に一人で立ち向かっている。
「二宮!! 後ろからも来てるぞ!!!」
『さあ、複数人が同時に二宮へ攻撃を続ける!』
パリンッ! パリンッ!!!
『黄チーム森下選手、赤チーム村雨選手、脱落です!』
菊音さんは、なんとか持ちこたえていたが、いくら相手の動きが分かっていても人数で押されてしまう。
(足場が……ぐちょぐちょで戦いにくい……っ!!! もう……だめ……!!)
パリンッ!!!
『二宮選手、頑張りましたがここで脱落です! しかし、6人の敵のうち4人を倒すという、素晴らしい戦いを見せてくれました!』
「よっし、二宮倒したわ! ついでにあんたも!」
『生き残った赤チームの中村選手と黄チームの大塚選手の攻防が繰り広げられています!』
パリンッ!!
『黄チーム大塚選手、脱落です!』
「はあ……はあ……。やった、先鋒戦とったーーー!!」
『おっと、中村選手は勘違いしているのか、あと1人残っているぞ!!』
ジョニーが遅れて参上する。
「二宮サン、すみまセーン。沼にハマって遅れましタ」
「って、まだいたの!?」
「イエス!!」
パリン!!!
『赤チーム中村選手、脱落です!! 先鋒を制したのは、白チームのジョナルド・シックス!!!』
「よっしゃああああああ!! ジョニー!!!!!!!!」
「ジョニー先輩!!!」
『先鋒戦の結果から、ポイントは以下のようになります』
【決勝】
(赤)チーム4 : 2 pt
(白)チーム27:3 pt
(青)チーム48:0 pt
(黄)チーム61:1 pt
先鋒戦を終えて、ジョニー先輩と菊音さんが帰って来た。
「ジョニーナイスだ!! 二宮もよく戦った!!」
「次は中堅戦やね。五条くん、澪ちゃん頼んだばい!」
「「はい!」」




