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正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?  作者: ブルーギル
第3章 王座争奪戦
31/38

31話 リベンジ

『さあ先鋒戦が終わった後のポイントを整理しましょう!』


 【Bブロック準決勝】

 チーム19(赤):4 pt

 チーム22(白):2 pt

 チーム27(青):0 pt

 チーム31(黄):0 pt


 先鋒戦を戦った青いバンダナ姿のジョニー先輩と菊音さんが帰って来た。


「……みなさん……すみません……」


「アイムソーリー! ヒゲソーリー!」


 ジョニー先輩はともかく、菊音さんは相当責任を感じているようで、半泣き状態だった。


「二宮、気にするな。ずっと隠し通してきた技を、一発で決めた相手が凄かったんだ」


「そうだぞ。それに、まだ先鋒戦を取られただけじゃないか。後は俺達先輩に任せとけ」


 菊音さんは小雲先輩に肩を抱かれ、先輩方の励ましに頷いた。


「さあ三橋、俺達の出番だ。昨日の作戦通り行くぞ!」


「はい!」


 五条先輩と三橋さんは何か企んでいるそうだ。


『さあ続いて中堅戦です! ここにも注目な選手が出場しますね!』


『そうですねぇ! 5年生主席、能力者ランキング8位の桐山選手がどのような立ち回りをするのか、楽しみですねぇ!』


『桐山選手は去年、準決勝の中堅戦で弥生選手に敗れるまで無敗! 準決勝の大将戦で時谷選手に敗れるまで無敗だったチーム27の七道選手とまさに同じような心境でしょう。しかし決勝へ進めるのはたった1チームのみ! 決勝へ行くのはどのチームでしょうか!! さあ、中堅戦スタートです!!』


 ビーーーーーーー!!!!!


 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!


開始早々、青いマントを羽織った五条先輩と三橋さんが奇妙な行動に出た。


『フィールドは古代遺跡だ! おおっと、今度は青チームの二人が開始早々走り回っている! 一体誰を探しているのか!?』


『五条選手はドームの端に沿って左回りに、三橋選手は右回りに走っていますねぇ!』


『このままでは、中央に向かって走りだしている敵チームとは遭遇できないぞ! 一体何を考えているんだ!!』


「五条先輩たち、敵から逃げる作戦でしょうか。ですが、いずれタイムリミットがきてリタイアになってしまいますよ!」


「桐山が他の相手を倒すんを待ってるんやろか。でも、それやったら糸くんの言う通り桐山自身には勝てやんばい」


 しばらくして、逆向きに走っていた五条先輩と三橋さんが遭遇した。


『青チーム、やはり敵チームに遭遇することなく味方の二人が出会った! ここからどうするんだ!』


「もう10分経ちます! 早く誰かを倒しに行かないと!」


「ああ。それに、相手に催眠をかける桐山相手に集団行動は危険だぞ、五条……!」


 一ノ瀬先輩は、中堅戦の作戦を五条先輩と三橋さんに完全に任せていたので、控室のみんなは五条先輩の作戦が分からないでいた。


 太陽が照らし、不思議な形の建造物が(そび)える古代遺跡。

 ついに五条先輩達が動いた。 


「よし、三橋、いくぞ!」


「はい!」


『青チームの二人は、ようやく中央へ向かっていったぞ! 二人は協力して進むのか? しかし、その間にもすでに赤チームの桐山はどんどん敵を倒している!』


『能力者ながら杖と見事に共鳴し、【生命の次元】に干渉して相手の心を巧みに操っていますねぇ!』


 そして、中央の大きな遺跡の祭壇で、五条先輩達と桐山楓が対面した。


「ん、二人で来たの? ふむふむ、本気で私を倒しに来ているみたいだね!」


 桐山が余裕そうに五条先輩と三橋さんに話しかける。


「去年、俺はお前に負けてから自信を無くし、他人に絶望し、1年間を自堕落に生きてきた。だが、それももうここまでだ」


「へえ、あなた、去年の私に負けたんだ! でもごめんね、全然覚えてないや」


 桐山はクスクスと笑う。

 それを見た三橋さんは怒りで今にも飛び掛かりそうだ。

 

「落ち着け、三橋」


「ですが……」


「ここで冷静さを欠いたらすべてが台無しだぞ」


「ふう……っ。はい」


「無能力者なのに、本当に私に勝てると思ってるの? こんな大会、強い能力者が勝つに決まってるじゃん。そんな当たり前の現実も見れないんだね。ちょっと可哀想」


「1対1ならそうかもな。だが、これはチーム戦だぜ」


「あははは! 面白いね、いいよ、見せて! 儚い幻想にすがる惨めな姿、見てみたい!」


「行くぞ、三橋!」


「はい!」


 タッタッタッ!


 五条先輩と三橋さんは桐山に向かっていく。


『どうやら青チームは二人がかりで桐山を倒す作戦のようだ! これはうまくいけば強いが、負ければ全滅するという非常にハイリスクな戦法だぞ!!』


「なるほど、私は同時に1人に対してしか能力が使えないって思ったのかな。おめでとう、大正解! でも、たかが2人になったとこで意味ないけどね!」


 桐山は杖を出し、五条先輩へ向けて振った。


「うっ……めまいが……!!」


 五条はその場でひざまずいた。


「五条先輩!!」


 三橋さんが駆け寄る。


「だ、大丈夫だ。それより桐山は……!」


「あそこです!」


 桐山は杖を持って立っている。


「よし、いくぞ!」


「はい!」


 もう一度、桐山にめがけて二人で走り出す。


 その時、その桐山は五条先輩に何かの合図を送った。


「……見えたぞ! 本物の桐山はお前だ!!」


「えっ!?」


 五条先輩は三橋さんの胸に向かって杖を思いっきり突き立てた。そう、五条先輩の目には、桐山と三橋さんが入れ替わって見えていたのだ。


 パリン!!


『青チーム五条透、桐山楓を撃破!!! しかし、桐山選手は一度立ち眩んだ五条選手をどうして攻めなかったんでしょうか! そして、その五条選手は立ち上がると三橋選手に向かって行ったと思いきや、隣にいた桐山選手のバッジを破壊したという、どうもよく分からない不可解なプレーでした』


『おそらく桐山選手は五条選手に催眠をかけたんだと思いますねぇ! 傍から見たら普通ですが、五条選手は桐山選手と三橋選手の認識を逆にされていたのでしょうねぇ。しかし、味方同士で決めていた合図によって、催眠にかかりながらも桐山選手を見破り、見事に撃破したというわけですねぇ。よほど相手を研究し尽くし、入念に計画を立てた、素晴らしい戦術でしたねぇ!』


 この1年はとても長かった。

 

 俺は去年桐山に敗北し、人を信じることができなくなって部屋に閉じこもった。


 もう、俺の人生はこのままずっと暗い部屋の中で、日の光を浴びることなく、誰とも話すことなく過ぎていくものだと思った。

 それでもいいと思っていた。


 そんな俺の部屋に、九重はもう一度日の光を照らしてくれたんだ。

 チームのみんなは、優しく、厳しく、俺を鍛えてくれたんだ。


 みんなのおかげで、俺はもう一度燃えることが出来た。

 そしてみんなと過ごしていくうちに、個人的なリベンジだけでなく、このチームのために勝ちたいと思うようになった。


 過去の俺の失敗は、きっとこの瞬間に勝つための布石だったんだ。



「うおっしゃあああああああああああああ!!!!!!!」


 五条先輩の叫び声は、初めて聞いたかもしれない。 


「うおおおおおお!!! 五条おおおお!!!」


「透くん!!!! 澪ちゃん!!!!」


 俺達の控室はお祭り騒ぎだ。


「イエェェェェェェェェィ!!!」


 ジョニー先輩は喜びのダンスしている。


「五条先輩……」


 菊音さんは涙を流している。




『Bブロック準決勝、中堅戦決着ーーー!!! 唯一の能力者である桐山を撃破した青チームの二人が共闘し、見事に1位2位をとりました!!!』


「お前は最高だ!!! 五条!!!」


「澪ちゃああああああん!!!」


 小雲先輩は三橋さんに抱き着いている。


「五条先輩!!!」


「おう!」


 パシッ!


 俺は五条先輩とハイタッチした。


「ありがとうございます……五条先輩……!」


「ああ!」


 パシッ!


 五条先輩は笑って菊音さんともハイタッチを交わしていた。


「さあ、次は大将戦だ!! 七道! 九重! 頼んだぞ!!」


「「はい!!」」



 ◇◇◇



『Bブロック準決勝は中堅戦を終え、現在のポイントはこのようになっています!! 大将戦のオッズと共にご覧ください!』


 【Bブロック準決勝】

 チーム19(赤):4 pt

 チーム22(白):3 pt

 チーム27(青):5 pt

 チーム31(黄):0 pt


 【Bブロック準決勝・大将戦、個人オッズ(単勝)】

 蒸川 虫彦(チーム19(赤)/4年/11位)      :7.2

 机原 淳史(チーム19(赤)/1年/ランキング圏外) :105.9

 椅子島 奏(チーム22(白)/6年/ランキング圏外) :39.1

 棚岡 雄平(チーム22(白)/2年/ランキング圏外) :60.9

 七道 小雲(チーム27(青)/6年/7位)       :3.4

 九重 糸 (チーム27(青)/1年/ランキング圏外) :122.5

 小金井 拓斗(チーム31(黄)/3年/ランキング13位):9.1

 床崎 守 (チーム31(黄)/6年/ランキング圏外) :21.8


『御覧の通り、赤チームから能力者ランキング11位の蒸川(むすかわ)虫彦(むしひこ)、青チームから能力者ランキング7位の七道小雲、黄チームから能力者ランキング13位の小金井(こがねい)拓斗(たくと)が登場します! Aブロックの大将戦に劣らない、ハイレベルな能力者対決に期待しましょう! それでは決勝への切符をかけた運命の大将戦、スタートです!!』


 ビーーーーーーー!!!!!


 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!


『フィールドはジャングルだ!! さあ、真っ先に攻め込んでいったのは、黄チームの小金井拓斗!』


『黄チームは勝利するためには1位と2位の独占が必要ですからねぇ! どんどん攻めていく必要がありますねぇ!』


『松蔭に次ぐ【闇の次元】No. 2の実力を持つ小金井! 早速白チームの椅子島を倒したぞ!!』


『白チーム、椅子島奏、脱落です』


 フィールド内にアナウンスが流れる。


『さあ、黄チームの小金井選手は早くも二人目の相手を捉えたぞ!』


 パリンッ!!


『赤チーム、机原淳史、脱落です』


「ほう、うちのチームを倒してくれたというのかね。はっはっは、良い度胸だ! 見せてあげよう、私を怒らせたらどうなるのかを!!」


 パリンッ!!!


『黄チーム、床崎守、脱落です』


『すかさず赤チームの蒸川選手もやり返す!! そしてこの瞬間、黄チームの決勝進出はなくなりました!』


(もう3人目か、めっちゃ早いな……。小金井と蒸川が倒しまくってるんかな。糸くんはまだ生きてるみたいやし、私が動かんと)


 小雲先輩はジャングルの中央へと駆けて行った。


『さあ、残る選手は5人。そのうち3人がジャングルの真ん中にある広場に集まってきたぞ! しかも蒸川、小金井、七道の能力者の3人だ!』


「ったく、俺様のチームメイトはザコばっかでなんか腹立ってきたぜ。せめてここで鬱憤を晴らせてもらおうか!!」


 小金井は小雲先輩と蒸川に向けて杖を振った。


 ゴゴゴゴゴ……!!


(……なんや、なんかめっちゃ心が……心が暗くなってくるばい……!!)


『おおっと! 七道と蒸川が深刻な表情で下を向いているぞ! 一体何があったんだ!?』


『おそらく小金井選手が、相手の心に闇を覆わせているのでしょうねぇ!』


「何をする!! 悪い感情に心が支配されるではないか……っ!!」


「ハハハ、良いザマだ。せいぜい苦しめ!!」


(あかん……心がやられる前にまず小金井を倒さんと……!!)


 小雲先輩は闇に飲み込まれそうな心を抑え、なんとか攻撃を仕掛けた。


 パリン!!


「チッ、まだ心が闇に染まり切ってなかったか」


『黄チーム、小金井選手、脱落です!! 心が闇に覆われる中、七道選手がなんとかバッジを破壊したぞ!!』


 その頃、俺も白チームの片割れと戦闘を行っていた。


「くっ!! なんで! お前も無能力者のくせにそんないい杖持ってるんだよ!!」


「いいだろ! 心乃さんから貰った自慢の杖だ!」


「ちくしょおおお!! うらやましい!!」


 パリン!!


『白チーム、棚岡雄平、脱落です』


(糸くん……最後の一人も倒してくれたんやね……)


『残っているのは赤チームの蒸川と、青チームの七道と九重の3人だ!! ここで1位をとった人のチームが決勝へと進めます!!』


「はあ……はあ……。勝つためなら……勝つためなら何をやってもいいのだ……!! はっはっはっは!!!」


(なんや、蒸川の雰囲気が変わったばい……闇に心が支配されてしまったんか……?)


 タッタッタッ!


 蒸川は小雲先輩に襲い掛かった。


(大丈夫や、これなら未来見て倒せる!)


 シュンッ!!! ビュン!!!!!


「……ぅあっ!!」


『おおっと!! 【エネルギーの次元】に干渉した蒸川の振った杖から鋭い風がなびき、七道の足首を(えぐ)るように直撃したぞ!!! これはルール的にどうなんだ!?』


『能力を用いた攻撃は人道に反しますが、ワンディングのルール的には違反ではありませんねぇ!』


『七道選手は足を抑えてうずくまっている!! 大丈夫かーー!?!?』


「うう……ああ……!!!」


「はっはっは!! もがく姿がゴミのようだ!!」


『蒸川選手は動けなくなった七道選手のバッジに向かって杖を突こうとしている!!』


「はっはっは!!」


 すうーーーっ


「糸くん!!!!! 逃げて!!!!!!」


 パリン!!!!


 小雲先輩は、痛みを我慢して力の限り声を出し、自分の杖で自分のバッジを破壊した。


『青チーム、七道小雲、脱落です』


(遠くから小雲先輩の声が聞こえた。そして、脱落のアナウンス。これが意味することは……)


『な……なんと! 七道選手、大声を出した後、自らバッジを破壊しました!! これは一体どういうことだ!!』


『ワンディングでは、30分間誰のバッジも破壊できなければリタイアとなってしまいますねぇ。すなわち、蒸川選手よりも九重選手の方が後に相手のバッジを破壊していますので、このまま九重選手が逃げきれれば、蒸川選手の負けになりますねぇ』


『なるほど! 蒸川選手にバッジ破壊の特権を与えないために七道選手は蒸川選手にバッジを破壊させなかったんですね! さあ、蒸川選手が最後に相手のバッジを破壊してから既に21分! つまり、九重選手はあと9分逃げ切られれば勝ちとなります!!』


「九重!! 逃げろ!!!!!」


「糸くん!!!」


「ココノエ!! ランナウェイ!!」


 控室でチームの皆が叫んでいる。


「はっはっは。無駄なことを!」


 蒸川はジャングルの中、杖を構えてエネルギーを読み、九重を探す。


 はっ……はっ……!!


 俺は必死に逃げる。

 とにかく静かに、良い隠れ場所を探す。


『あと7分!! しかし、徐々に二人の距離は近づいてきたぞ!!』


 俺は木の根が絡まった草陰を見つけ、じっとする。


『あと5分!! 蒸川は【エネルギーの次元】を認識して、九重選手を捜索しているようだ!』


 カサ……ッ!!


「この辺りにいることは分かっている。おとなしく出てきたまえ、いい子だから!」


 背筋が凍る。

 鼓動が速くなり、呼吸も粗くなる。


『あと3分です!!』


「ほう、そこか!!」


 ビュンッ!!!

 バキッ!!!!


「うわっ!!!!」


『蒸川選手が九重選手を見つけ、【エネルギーの次元】による風で木の根を破壊したぞ! 九重は風圧で飛ばされて転んでいるが、バッジは無事だ!!』


「さあ、鬼ごっこは終わりだ!!」


『あと2分です!! 蒸川選手は(ひざまず)いている九重選手に杖を向けてトドメを刺そうとしているぞ!!』


「九重!!」


「糸くん……!!」


 チームのみんなは、必死に祈っている。


 蒸川は俺に向けて杖を振り、また俺を風圧で弾き飛ばした。


 ブオンッ!!!


「うわっ!!!!!」


 俺はなんとかバッジを護りながら、ジャングルの地に転がる。

 バッジは無事だったが、杖が遠くへ飛ばされてしまった。


『あと1分を切りました!!』


 蒸川はゆっくりと近づいてくる。


「時間だ。トドメを刺そう!!」


『のこり30秒!!』


 地面に尻もちをついている俺にまたがる蒸川。

 杖を振りかぶり、至近距離で物理的に突いてきた。

 そしてその瞬間、俺は秘密兵器を繰り出した。


 プシュッ!


「目があああああああ!! 目がああああああああ!!!」


『な、なんと!!九重選手、拾ったキノコで胞子を蒸川選手の顔に吹きかけたぞ!!』


『赤チーム、蒸川選手、脱落です」


『ここで終了だ!!!! 蒸川選手、タイムリミットのため脱落です!! 勝者は青チームの九重糸!! したがって、チーム27、決勝進出です!!!』


 ビーーーーーーー!!!!!


 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!


「「「やったあああああああああああ!!!」」」


 控室には喜びの叫びがこだましている。


「糸くん……ありがとう……!!」


 小雲先輩も足を抑えながら、しっかりと見てくれていた。


『いやあ、まさかキノコを拾って隠し持ってるとは思いませんでしたねぇ! フィールドを生かした、素晴らしい戦いでしたねぇ』


『さあ、明日はCブロックとDブロックの準決勝をお届けします。お楽しみに!!』

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