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正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?  作者: ブルーギル
第3章 王座争奪戦
25/38

25話 次のステップへ

 土曜日の朝。

 俺は高学年のBクラスが住む、セトル・イエローレモンシフォンの前でウロウロしていた。


「五条先輩を尋ねたいけど何号室か分からない……。連絡先も知らないし、どうしよう」


「九重。困ってるようだな」


 そこにはタオルを首にかけた一ノ瀬先輩がいた。


「い、一ノ瀬先輩!? どうしてここに!?」


「朝のランニングの帰りさ。ここは俺の寮でもあるからな。それよりも九重、ありがとう」


「え、何のことでしょうか」


「みんなのことだよ。俺は監督という指導者として、公平に、時には冷酷に、そして厳しくみんなに接さなくてはならない。でも、チームとして強くなるには、それだけじゃダメなんだ。チームメイトがお互いの心を理解し合って、悩みや喜びを分かち合い壁を乗り越えることで、チームワークは生まれていく。九重がみんなや五条に今してやろうとしていることは、まさにそういうことだ。ほら、中に入りたいんだろ」


 ウィーン


 一ノ瀬先輩がカードキーでオートロックを解除する。


「俺はみんなの壁となる。お前たちは団結して、乗り越えてこい。五条の部屋番号は510だ。じゃあ、午後にまた会おうな」


 一ノ瀬先輩は部屋へと戻っていった。


「チームワークか……。五条先輩の部屋番号も分かったし、とりあえず行ってみよう」




 510号室に到着。

 セトル・イエローレモンシフォンの中は、豪華すぎることもボロすぎるということもなく、至って普通な印象だった。


 ピンポーン


「九重です! 五条先輩、いらっしゃいますか?」


 シーン


 ピンポーン、ピンポーン


 応答がないので、インターホンを連打してみた。


 ガチャ


 扉が少し開き、真っ暗の部屋の中、布団を被った五条先輩が応答した。


「……君、チームの人? 練習に誘いに来たのかもしれないけど、俺練習する気ないんだよね。監督も自由参加って言ってたでしょ」


「それは去年、努力の末に敗北したのにチームに軽蔑されたからですか?」


「!? お前何でそれを知って……。ちょっと来いっ!!」


 バタン


 夢で見た通り、部屋は真っ暗でかなり散らかっていた。


「お前、俺を練習に誘うためにそんなことまで調べたのか……?」


「いえ、夢で見たんです。俺の夢は過去か未来の現実を見せてくれることがあるんですよ」


「夢……? ふざけてるのかな。……まあいいや。で、そんな過去があったから何?」


「明らかに五条先輩のチームメイトが悪いと思います」


「は?」


「五条先輩は負けたのは、桐山楓という能力者の【生命の次元】による能力で混乱したため。それなのに、味方のチームはそもそも桐山楓の能力を知らず、五条先輩の失態だと思って責めたんですよね。これは、対戦相手の能力分析もしていない監督、チームの責任です。それなのに、五条先輩に責任を押し付けるなんて、酷いと思います!」


「……」


「もしも、それだけが原因でチーム練習をするのが嫌なら、安心してください。俺達のチームはそんなバカどもと一緒じゃないです! だって、小雲先輩は桐山楓の能力を知っていましたし、一ノ瀬先輩だって他のチームの分析を細かく行ってくれていますから」


「……でも、結局負けたら何も意味ないじゃん。チームが責めようが責めまいが、残るのは虚しさと悔しさだけじゃん」


「一度悔しい思いをしたら、また来年勝てるように頑張ればいいんです! トーナメント表、見ましたか? 桐山楓、二回戦の対戦相手ですよ」


「……なんだって」


「過去の悔しさを晴らすため、そして俺達と王座を取るために練習、参加してください! お願いします!」


「……君、後輩のくせに生意気だね」


「……」


「……いいよ……その生意気さに免じて、付き合ってあげる」


「本当ですか!!」


 シャー――ッ


 カーテンを開けて部屋に日差しが差し込むと、五条先輩の目に精気が宿ったように感じた。



 ◇◇◇



 13時。

 第四運動場にて。


 一ノ瀬先輩、小雲先輩、ジョニー先輩、三橋さん、菊音さんは既に揃っている。


「時間になったし、今日も特訓始めよう。……ん? あれは」


 五条先輩が小走りでやってきた。


「遅れてすみません」


「透くん! 来てくれたんやね!」


「五条、よく来たな。よし、全員揃ったことだし、始めよう!」


「「はい!」」


 準備運動、ランニング、ダッシュ。

 これまでと同じトレーニングを終わらせる。


「ぜえ……ぜえ……」


「はあ……はあ……」


 いつも通り虫の息だが、なんとかみんなやり切った。


「みんな、集まってくれ」


 日陰で座って円を組む。


「自由参加で全員揃ったということは、全員、やる気があると見ていいんだな。これで次のステップへ進める」


「足りないって言ってたのは、メンバーのことだったんですか」


「その通りだ、七道。最初のステップは、全員がやる気になることだ。気持ちがあってはじめて技術的な段階へ進むことができるんだ。さて、みんなは自分の杖を持っているか? 上級性は去年出場したものがあると思うから、問題は1年生の九重だな」


「あ、杖なら持ってますよ」


 俺はカバンから緑色に輝く杖を取り出す。

 その瞬間、チームのみんなは驚き、目を見開いた。


「ちょ……糸くん、その杖、もしかして……」


「心乃さんからいただきました」


「まさか、あの弥生心乃から!? 糸くん、どうしてそんな大事なこと黙ってたのよ!」


 そういえば菊音さんにも見せたことはなかったな。


「俺は能力者じゃないから分からないけど、その杖からはとてつもなく凄いものを感じるぞ」


 五条先輩も驚いたように杖を見つめる。


「杖は持ち主のマナを増幅する道具であるとともに、マナ自体を閉じ込めることができる。杖に込められたマナの力と量が相当なものであれば、全くの無能力者でも能力者のように振舞うことができるという……だが、そんな貴重な杖はまず普通には手に入れられないぞ」


「トユーことは、イトサンはもはや能力者デース!」


「分かっていたけど、改めてこの杖は凄いものなんだな……」


「とりあえず、1年生の九重が杖を持っているということは、みんな持っているということだな。今日からはいつものメニューの後、杖を使った練習も行う。まずは素振りだ」


 一ノ瀬先輩は綺麗なフォームで杖を突いて見せる。


 シュッ


 風を切る音が心地よい。


「これを100回、2セットだ。さ、横に並んで」


「行くぞ! 1ッ、2ッ、3ッ!……」


 シュッ! シュッ!


 ただのパンチのように、杖を突くだけ。

 ランニングに比べたらよっぽど楽だと思った。


「55ッ!、56ッ!、57ッ!……」


 シュッ、シュッ


「なんだ………だんだん手が重くなってきた……!」


「九重! 腕下がってきてるぞ!」


「す、すみません!」


 しかし、だんだんと回数を重ねるたびに杖が重く感じて来る。休みなく連続で同じ腕で突き続けるのが思った以上にしんどいんだ。


「ラストォ、100ッ!!」


 シュッ!!!


「お、終わった……」


 腕をさする。

 確実に明日、筋肉痛になりそうな予感。


「よし、ちょっと休憩しておいてくれ」


 一ノ瀬先輩はどこかへ走って行った。




「お待たせ、次のメニューはこれだ!」


「これは……水風船?」


「そうだ。ワンディングでは正確で素早い突きが必要だ。この水風船を空中に放るから、杖で突いて割ってみろ」


「この水風船をですか!?」


 普通のサイズより一回り小さい水風船。こんなのが空中でゆらゆら揺れたら、まず水風船に当てることすら至難の業だ。


「あ、七道と二宮は能力の使用はまだ禁止だ」


「分かりました」


「それじゃ、やるぞ!」


 ひょいっ、ひょいっ


「おりゃああ!!」


 スカッ、スカッ


「ぜ、全然当たらない…!!」


 さっきの腕の疲労もあり、正確に命中させられない。


「次! ジョニー!!」


「オーイェス!!!」


 スカッ、スカッ


「ジョニー、肩に力が入りすぎだ!」


「オーケイ!」


 スカッ、スカッ


 ジョニーも全然当たらない。


「次! 五条!!」


「はい!」


 ひょいっ


 ブニョん


「す、すごい! 五条先輩、当たった!」


「ほう、やるじゃないか。あとはスピードだな。プールにゆっくり入っても痛くないのに高台から飛び込むと痛いのと同じで、杖を突く速さが速いと中の水が変形できなくなり、水風船が割れるはずだ。五条は素早く突くことを意識してみろ!」


「はい!」


 この特訓をしばらく続けたが、今日水風船が割れたのは小雲先輩だけだった。


「そろそろ日が落ち始めたな。よし、今日はここまでだ。みんな、お疲れ様!」


「「お疲れさまでした!」」




 こんな感じで、毎日の猛特訓が続いた。

 たまにジョニー先輩が謎の欠席をしたが、基本的に誰も休まなかった。


 6月に入り、しばしば雨の日も増えてきた。そんな日は体育館で体幹トレーニングをした。練習の後には、青藍館や北区域の食事街や三橋さんのファミレスなどへよくご飯に行った。


 俺は個人的に朝のランニングも始めた。たまにロードワーク中の一ノ瀬先輩や小雲先輩にもすれ違った。きっと、みんなも隠れて自主トレをしているのだろう。

 

 これらを毎日繰り返していると、みんなランニングとダッシュの後にも倒れ込むことはなくなり、水風船も割れるようになっていた。


 そんな充実した日々を送っているうちに、大会まで残り2週間となった。


 チュンチュン


「フィアス、朝だぞー」


「んん……もうちょっと……」


 相変わらず、俺のフィアス軍曹の朝支度任務は継続していた。しかし前と変わったのは、この前にランニングをしてシャワーを浴びるというルーティンが増えたこと。


 朝ご飯を作り終え、テーブルへ運ぶ。


「最近糸と遊ぶ時間が減った。夜ご飯はどっかで食べて来るし、土日はいないし」


「ごめんごめん。でもフィアスだって、毎日王座戦の練習に勤しんでるんだろ?」


「そんなわけないじゃん。最初はチームの人達に誘われてたけど、『私はマナを使っちゃったらすぐダメになっちゃうから、大会で本気を出すには安静にしておかないといけないんだ♡』って言ったら特別にサボらせてくれるようになったよ」


「間違いじゃないけど……まあ、フィアスだけの特権だな」


「ねえ~大会終わったら今までの分絶対遊んでよ~?」


「はいはい。フィアスも本番は頑張れよ。フィアスが黄金世代の超能力者相手にどこまでやれるのか見て見たいし」


「え~、めんどくさい!」


 相変わらずマイペースな軍曹だ。



 ◇◇◇



 学校に登校。

 Cクラスの教室にて。


「おはようでやんすー!」


「おはよう。尻口くん、最近ガッチリしてきたよね」


「毎日むさい男共と猛特訓してたら、マッチョまっしぐらでやんすよ。ま、その代わり王座を取って、女の子にモテモテになるでやんすけどね」


「なに言ってんのさぁ、優勝するのはボクだよぉ」


 二人とも、毎日のチームでの特訓を乗り越えて、心身ともに自信がついているようだ。


 ガラガラ


「席につけー」


 担任の鬼島が入ってくる。


「えー、既に先輩から聞いている人は多いと思うが、これから大会までの2週間は、準備期間ということで学校は休みだ。大会に向けて練習と体調管理は徹底するように。では、今日の授業に入って行くぞー」


 な、なんだってええ!?

 全然先輩から聞いてなくて知らなかった。

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