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正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?  作者: ブルーギル
第2章 劣等生
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11話 サークル

 カァカァカァ……


「ということで、明日からは朝8時40分には必ずここへ来ること。遅刻は厳禁だからな。以上、解散ッ!!」


 鬼島先生は去って行った。

 なぜか同じドクロの俺まで居残りさせられ、いつのまにか夕方に。

 残された教室にはドクロの3人だけが残っていた。


「いやー、担任えぐい奴に当たったでやんすねえ……」


「……ZZZ」


 幸坂くんは目を開けて寝ているので、肩を叩いて起こす。


「幸坂くん、終わったよ。帰って良いってさ」


「ん、本当ぉ? 長かったなぁ」


「みんな同じ寮だし、どっか寄り道するでやんす!」


 Cクラスは全員赤砂寮だ。

 ちなみにBクラスは黄泉荘、Aクラスは青月館である。


「尻口くんは遅れてたけど、苺みたいになにか部活の勧誘に捕まってたの?」


「それが誰にも勧誘されなかったでやんす……。だから自力で色んな部活のパンフレットをかき集めてたんでやんす」


 尻口くんがカバンから大量のパンフレットを見せてくれた。


「明日以降はいっぱい新歓コンパやるみたいでやんすよ!」


「新歓コンパ? 尻口くんこの部活全部に入るの?」


「違うでやんす。新歓コンパは飲み食いしながら先輩と話して、その部活に入るかどうかを考える場でやんす。しかもここに書いてある通り、新入生は飯代タダ!! こりゃ行きまくるしかないでやんす!!」


「尻口くんはアクティブだね。……幸坂くんは?」


「ボク? ボクは趣味があるから課外活動はいいかな」


「へえ、どんな趣味なの?」


「呪いグッズ集めとか、呪いスポット巡りとかかなぁ!」


「おう……」


 世の中には色んな人がいるもんだ。


 そんな話をしながら、青月館と黄泉荘を過ぎ、お店街に来た。


「ごめん、ちょっとスーパー寄っていい?」


「もちろんでやんす!」


「ボクも夜ご飯買いたかったんだぁ」


 シャーッ

 いらっしゃいませー


「おっ、幸坂くんはやっぱりその弁当でやんすか? そのチキン南蛮めっちゃ美味しいでやんすよね!」


「それもなんだけど、この横にあるタコさんウィンナー、死んだタコの魂がとり憑いているって考えると可愛くてさぁ」


「そ、その発想はなかったでやんす……。ん? あれ、糸くんは材料を買っている……ってことは自炊してるでやんすか!?」


「まあね。そこまで驚かなくても」


「すごいでやんす! 食べさせて欲しいでやんす!」


「ありがとう、また今度ね。今日は先客がいるんだ」


「先客?」



 ◇◇◇



 スーパーを出た後、幸坂くんと尻口くんは赤砂寮へ向かい、俺は青月館へ引き返した。

 入り口のボタンに205と打ち込む。


 シャーッ


 入り口のドアが開く。


「相変わらず綺麗なロビーだな。掲示板の情報も赤砂寮とは比べ物にならないくらい早いし多い」


 2階へ上がる。

 そして205号室のインターホンを鳴らす。


 ピンポーン


「開いてるー」


 中からフィアスの声がする。


 ガチャ


 相変わらずベッドの上でゴロゴロしているフィアス。

 しかもパジャマ姿。一日中部屋にいたことが伺える。


「も~!! なんで今朝来てくれなかったのさ!」


「今日は入学式だし、普通に登校してると思ったんだよ」


 俺は材料を持ってキッチンへ向かう。


「あれ、糸の制服についているそのドクロのバッジは何?」


「ああ、これは成績が絶望的だってことの証明らしい」


「あはは、糸の成績は学年最下位なんだね。よしよし、元気出しなよ~」


 壁に吊られていたフィアスの制服には、しっかりと羽のバッジがついていた。


「雪夜といいフィアスといい、やっぱり凄いんだな…」


「凄くないよ。いつもがんばっている糸の方がよっぽど凄い」


 フィアスは俺を気遣ってくれた。


「フィアス、やっぱり学校いかないか? 俺も久しぶりに学校に行ったけど、悪くなかったよ」


「え~、体もしんどいし、面倒くさいな~。あ、でも糸が朝起こして連れてってくれるならいいかな。ということで私も糸の家に住むね」


「なんでそうなるんだよ!」


「もしくは糸がここに住むかだね。そうじゃないと学校行かない」


「朝誘いにくるとかじゃダメなのか?」


「起こすところからだね。起こしてご飯食べさせてくれて着替えさせてくれるなら許す」


「はあ、分かったよ。って、着替え!?」


「うん。はい、合い鍵」


「ちょっと! 合い鍵はまずいって!」


「何言ってるの、私が寝てたら入り口開けられないじゃない」


 フィアスの中にあるセキュリティ概念はどうなってるんだ。


 ピンポーン


「あれ、誰だろう」


 ガチャ


「あ、雪夜!」


「こんばんは、フィアス。あら、糸も」


「こんばんは、雪夜。ベッドで干からびかけてたフィアスにご飯を作ってたんだ」


「ふふ、フィアスだけでなく私の面倒も見て欲しいですわ。そうそう、同じクラスのフィアスに連絡しにきたのですが、私も夕飯ご一緒してもよろしいでしょうか」


「もちろん!」


 食卓に3人と料理が並ぶ。


「フィアス、明日は8時40分に中央地区1号館の121教室に集合ですわ。曜日ごとに集合教室が異なるみたいですの」


「は~い」


 Cクラスは毎日ちゃぶだいの森だけどな。


「そういえば雪夜、結局部活はどうするの?たくさん勧誘されてたよね」


「もう大変ですわ。どれも断り切れず、明日から毎日新歓コンパに参加する約束をしてしまいましたわ……」


「部活してる人とかよくやるよね~。面倒くさいだけじゃん」


「あら、他人事ではありませんわよ? 先輩の皆さん、他の羽バッジつきの新入生はどこだ!って探し回っておりましまわ」


「それって私!? ……糸、やっぱり明日休んでいい~?」


「ダメですわ! こうなれば道連れですわ!」


「ひぃ~!!!」


「糸は課外活動どうしますの? 一緒に明日からの新勧コンパ、ご一緒してくれません? 心細くて…」


「ごめん。一つだけ俺を誘ってくれたサークルがあって、そこにしようかなって思ってるんだ」


「え!! でしたら私もそのサークルにしますわ!」


「私も!!」


「二人とも、明日からの新歓ラッシュを断り切れたらね」


「酷いですわ!!」


「糸ずるい!!!」


 それもこれも、人気のある君たちが悪いのだ。



 ◇◇◇



 翌日。

 朝にフィアスを迎えに行き、そのまま登校。

 Aクラスの教室の前で待ち伏せしていたビラ配り勢にフィアスはあっけなく捕まり、俺はご愁傷様と手を合わせ、Cクラスの教室に向かった。


「ねえ、千陽さん! 隣に座ろー!」


「ええ。いいわよ」


「朝日先輩って彼女いるのかな? 私憧れなんだ!」


「……知らないわ」


 苺は後ろの方の席でクラスメイトに囲まれている。

 それと対照的にポツンと3人、前の席で俺達ドクロが並ぶ。


「ぐへへへ! 今日は朝から運がいいでやんす!」


「どうしたの、尻口くん」


「あの松蔭雪夜ちゃんとすれ違ったでやんす!! めっちゃいい香りがしたでやんすぅ」


「あの松蔭さんと!? いいなぁ。凄いよねぇ、美人で、頭が良くて、超能力者で、お金持ちって噂もあるよ。同じ前期1年生なのに、ボクたちドクロとは住む世界が違うんだろうなぁ」


 やっぱり雪夜は有名人なのか。

 俺が雪夜と知り合いだとか、余計なことは言わないでおこう。


 キーンコーンカーンコーン


「よーし、全員いるな。今日から早速授業を始める。1時間目は高次元物理学の授業だ」


「え、先生! 授業ごとに先生変わるんじゃないでやんすか!?」


「Bクラス以上はそうだが、バカのCクラスは俺一人で十分だ。さ、教科書を開け」


「全部鬼の授業とか最悪でやんす! 巨乳の先生が良かったでやんす!」


「バカたれ!! それもこれもバカなお前らが悪い! そんなに嫌なら勉強してとっとと上のクラスに上がれ! ってコラァ! 幸坂、授業中に折り紙を折るな!!」


「先生、これはね、ただの折り紙じゃないんだよぉ」


「だったらなんだってんだ」


「先生が変わるといいな、って願いを込めて折ってるんだぁ」


「没収!!!」


「うわああああん!!」


 朝からなんとにぎやかな。




「えー、はじめにこの世界には11の次元がある。【空間の3次元】、【時間の1次元】、【逆空間の3次元】、【逆時間の1次元】、【エネルギーの1次元】、【生命の1次元】、【闇の1次元】だ。これらは全く別物ではなく、それぞれ互いに結びついている。空間と時間を合わせて時空と呼ばれるように、他の次元も相互に作用しているのだ」


「先生、そもそも次元ってなんでやんすか?」


「次元は『1点を定めるのに必要なパラメータの個数』だ。たとえば尻口、お前について考えるぞ。すると、まずどの【空間】にいるかで場所が特定され、どの【時間】にいるかでいつのお前かが特定される。さらにどんな【エネルギー状態】にあるか、どんな【生命】を宿しているか、そしてどんな【闇】を持っているか。お前の感情、力まで正確に表現するには、これだけの情報がいるってことだ」


「へーでやんす」


「普通、我々の五感で次元を感じ取ることはできない」


「時間は時計で感じとれるよぉ」


「幸坂、時計は無理やり感じた気にさせているだけなんだぞ。日が昇って沈むから時間も感じ取れている感覚にあるが、本当の時間はもっと複雑なんだ。空間もしかりだ」


「ふーん」


「だが、たまに次元を正確に感じ取れる者がいる。Cクラスのお前らは認識できないがな!」


「なにをー! だったら先生は認識できるでやんすか!?」


「……認識できん」


「ぷぷぷ! おいらたちと一緒でやんす!!」


「尻口、補習ゥゥゥ!!!!」


「ぎゃああああああああああ!!」


「先生、どうして能力者は次元を認識できるんですか?」


「それが分かれば俺だって認識してるわ!」


「す、すみません!」


「ただ、能力者の性質に関与しているものはマナだと言われている。マナは高次元世界で人に宿る謎のパワーだ。能力者のマナを込めた道具が、その次元を超越した性能を持つことからそう考えられている」


 確かに、心乃さんのマナが宿っているから、俺の杖は俺に【生命の次元】を感じさせてくれる。


「そしてもっと謎なのが、超能力者と呼ばれる、次元に干渉できるやつらだ。彼らの身体は現代の物理では説明のつかないような現象を可能にする…。ここチューベローズは、そういったマナや超能力者の謎を解明し、今の物理学を超えた科学技術を日常に活かそうとしている機関だ。ゆくゆくはそういった授業へシフトしていくが、まずは物理の基礎から勉強するぞ」



 ◇◇◇



「じゃあ今日は終わりだ。明日はクラス役員を決めるから、各自考えておいてくれ。では解散!」


 ガラガラ


 鬼島先生が教室を出る。


「やっと終わったでやんす! 新歓コンパ行くでやんす!! 糸くんは行かないでやんすか?」


「うん、俺はもうサークル決めてるんだ。今日はそこに顔を出すよ」


「二人とも今日は一緒に帰れないのかぁ。また明日ねぇ」


 Cクラスの二人と別れ、俺は稲光さんに貰ったパンフレットに書かれている場所へ向かった。



 ◇◇◇



 課外活動施設408号室。


 ガラガラ


「失礼します……」


「あ、糸くん! 来てくれたんだ!」


「愛、この子が例の一年生?」


「そうそう! これで廃部が回避できるよ!」


「こんにちは、糸くん。私は2年Aクラス【二宮(にのみや) 菊音(きくね)】。歓迎するわ」


 薄茶色の髪をした綺麗な人が本を閉じて挨拶してくれた。


「よろしくお願いします」


「はっはっは、ようこそ! 私は異探サークルの顧問をしとる茶木(ちゃき)だ。基本は学外の企業におるが、ごくごくたまに学校の教師として顔を出す。よろしくな」


 白髪で白衣を着たおじいさんと握手する。

 異探とは異世界探索の略。

 茶木先生は滅多に来ないらしいが、今日は新人の顔を見るためにわざわざ来てくれたらしい。


「さて! フルメンバーも揃ったことだし、活動しよう!」


「フルメンバー? 顧問を入れて四人だけなんですか?」


「うん! 去年は二人でも大丈夫だったんだけど、今年から三人いないとサークルとして認めてもらえなくなったんだよ」


「でもこんな名前のサークルでも公認してくれるのだから寛容よね」


「二宮、異世界はオカルトでも何でもなく、実在する世界だぞ。逆時間の次元回路から得られたマスター方程式を解くと必ず虚数解が存在する。その虚数解が意味するところは……


「糸くん、ああやって語り始めた茶木先生の言葉は無理して聞かなくてもいいわよ」


 こそっと二宮さんが教えてくれる。

 聞こうにも、何を言っているのか分からない。

 一方で、愛さんは目を輝かせながらそれを聞いている。


 ……という結論に至るわけだ」


「なるほど、じゃあ茶木先生、実際に異世界へ行くにはどうすればいいの?」


「それには、まず大前提としてこの世界の時空を自在に移動できなければならない。時間の移動は、我々時間学者の最も悩まされている問題……だが、もしも【時谷(ときたに) 未来(みらい)】が力を貸してくれたのならばあるいは……あ、いかん! 16時半から西地区の会議室で会議があるんだった! ということで私は先に失礼する」


 バタン


 茶木先生は教室を出た。


「あの、話で出てきた時谷未来さんって……?」


「時谷先輩は、6年Aクラスの【時間の次元】と【逆時間の次元】の超能力者よ。時間を自由に駆けられるらしいのだけれど、あまり研究には協力的では無いみたい」


「時間学者の茶木先生いつも言ってるよね、時谷未来が協力してくれればタイムマシンも作れるのにって」


「タ、タイムマシン!?」


「糸くん、4つの基本的な力って知ってる?」


「4つの力ですか……? 腕力とか持久力とか……ごめんなさい、勉強は苦手で」


「あはは。重力、電磁力、強い力、そして弱い力だよ。この世界はね、この4つの力が生み出す場の中で、11次元の『ひも』が織り成す世界なんだ」


「強い……弱い……? ひも?」


「うん、そうだよ。でもね、私はきっと、これ以外の力や次元がまだあるんじゃないかって思ってるんだ。実際に私達は、今の科学じゃ説明できないような不思議な現象を目の当たりにしてきた。だから糸くん、私達と一緒に不思議を探して、世界の秘密を明らかにしよう!」


 賢さ小学生レベルの俺が、今の話を何割理解できただろうか。

 でも、不思議と言うと、俺の正夢も……。


 人は大人になるにつれて現実をよく知るようになる。

 だから、夢とか不思議とか、非現実的なものを子供のように追い求めることを諦める。

 でも、現実を知り尽くすと、一周回って不思議を探究するようになるのかもしれない。


 俺はこのサークルが持つ奇妙で独特な雰囲気のどこかに惹かれはじめていた。



 ◇◇◇



 この日の夜。

 とあるお店にて新歓コンパが行われていた。


「ねえ、松蔭さんってもしかしてあの松蔭財閥の!?」


「ええ、まあ……」


「すごーい! お嬢様で超能力者とかかっこよすぎるよ!!」


「あ、ずるいぞ! 俺も松蔭さんの横で話聞きてえ!」


「私もー!」


「ムフフ、おいらの隣はいっぱい開いてるでやんすよ!」


「おまちどうさま、レシスぺ人数分だよ」


 店員さんがレシスぺと呼ばれる謎のドリンクを配る。

 それを配り終え、幹事が立ち上がる。


「料理と飲み物がいきわたりましたね。本日は新入生の皆さん、本サークルの新歓コンパにお越しくださりありがとうございます。先輩とたくさんお話して、是非入部を検討してください!それでは我々パワフル野球部に!」


「「かんぱーい!!!」」


 ざわざわ……


「あの、この飲み物ってなんでやんすか?レシなんとかって言ってったやんすけど」


「レシプロカルスペースドリンク、略してレシスぺ。しばらくの間、逆空間の3次元のうち1次元だけを認識できるようになる飲み物さ。飲んでごらん」


「へえ、面白そうでやんすね! ではでは」


 尻口くんはごくごくと飲みだした。


「ひっく!! なんかポカポカしてきて…気持ちよくなってきたでやんす!!」


「3次元ある逆空間を1次元だけ認識するから、お酒みたいに酔っちゃうらしいんだ。でも体に悪い成分は入ってないし、お酒と違って15歳以上から認められているから、チューベローズの学生には大人気なんだぜ」


「うひょー!! おかわりでやんすー!!」


 そんな尻口くんたちの陰でフィアスはもぐもぐと箸を進めていた。


(……糸が作ってくれたご飯のほうが美味しいな)


「あなたも松蔭さんと同じで羽のバッジの新入生でしょ!?もしかして能力者!?」


「え……私は別に……」


「えー!! いいじゃん教えてよ~!!」


(か……帰りたい……!)


 フィアスは重度のコミュ障である。


「パワフル野球部は色んな球場で試合するんだけど、その中の一つに闇の次元のギミックがある球場もあるんだ。だから松蔭さんが入ってくれれば即レギュラーなんだけどな!」


「ですが私、野球経験はありませんわ」ゴクゴク


 ドドドッ!


「おいらは野球経験豊富でやんすよ!! 松蔭さんにいっぱい教えてあげるでやんす!」


「こらっ、尻口くん、暴れない!」


「ごめんでやんす……」



 ◇◇◇



 その頃、赤砂寮にて。

 今日は苺が俺の部屋に来てご飯を食べていた。


「それにしても苺はCクラスで大人気だな」


「何も良いことないわよ。みんなお兄ちゃんが目当てなだけで、千陽朝日の妹としてしか見てくれない」


「俺がドクロトリオの一人としか見てくれないのと一緒か」


「アンタたちと一緒にしないで!」


「でも最初はそんなもんなのかもしれないぞ。まだ会って二日の人なんて、どこどこ出身の人とかでしか認識してないから。これからの学校生活で苺らしくしていくと、きっとみんな苺として見てくれるようになってくれるんじゃないか?」


「……そうね。ごちそうさま、美味しかったわ」


「おそまつさま。そういえば以外だったよ、苺もたくさんの部活に誘われてたのに、新歓コンパには行かなかったんだな」


「当然よ。私はAクラスに上がるために勉強と特訓をしないといけないもの。課外活動に割く時間はないわ」


「なるほど。俺もドクロから脱出するために勉強しなきゃね」


「あれ、アンタの携帯鳴ってない?」


「ほんとだ、フィアスからみたい。……もしもし、フィアス?」


『糸! 急いで食事街に来て!』


 一体なにがあったんだろう。

 急いで食事街へ向かった。



 ◇◇◇



 夜の食事街。


「フィアス! どうしたの!」


「糸! 雪夜が……!!」


「糸~~~もう飲めまへんわぁ~~わたくひを介抱ひてくださいまひ~~」


 雪夜が抱き着いてくる。

 顔は真っ赤でとても発熱している。


「ちょっ、まさかお酒飲んだの!?俺達まだ15歳だろ!?」


「それがお酒モドキで、酔うけど合法な飲み物なんだって」


「フィアスは酔ってないみたいだけど、飲んでないの?」


「なんか酔う理由が、次元を一時的に認識できるようになるかららしいんだけど、私はもともと全部の次元を認識できるからね~」


「そりゃいいや。で、一緒に飲んでた方々は?」


「ばらばらで二次会に行く流れだったけど、皆だいぶ酔っぱらっててごちゃごちゃになったから、その隙に雪夜を担いで逃げてきたのだ」


「おお、シラフは頼もしいな。とにかく雪夜を青月館に運ぼう」


「もう歩けまへん~。だっこしてくださいまひ!」


「やれやれ、甘えん坊さんめ」


 にゅっ


 雪夜を抱っこすると、なぜかフィアスにほっぺをつままれた。


 雪夜を抱えながら青月館へ向かう。

 青月館に着くと、フィアスがカードキーで玄関を開ける。

 あいかわらず高級ホテルのような、立派でムーディーなロビーだ。

 エレベーターを使って雪夜の部屋に行く。


「ほら、雪夜、鍵を出して」


 雪夜の鍵で部屋に入る。


「よいしょっと。じゃあ俺は帰るから今日は早く寝るんだぞ」


「まだかえっちゃダメですわ! 私たちだけで二次会やりますわ!」


「俺達だけで二次会しても何の意味もないだろう」


「アイス冷えておりますわよ!」


「知らないよ!」


「そんな……私とお話してくれませんの……?」


 上目遣い。めっちゃウルウルしてこっちを見てくる。

 いつもの清楚で真面目な雪夜とのギャップで、変に魅力に取りつかれてしまいそうだ。


「糸! それは人肌が触れ合ったことによる一種の錯乱状態だよ。騙されないで!」


 またフィアスにほっぺをつままれた。


「あいたたたた!」


「あ、フィアスは体調が優れなければ、もう帰ってもよろしいですわよ」


「こんな状態で二人っきりにさせられる訳ないでしょ!」


「朝ご飯を作ってもらうことを言い訳に、毎日部屋に糸を呼んで!やり方がこすいですわ!」


「そ、そんな理由じゃないもん! 普通にご飯が食べたかっただけ!」


「わー! とにかくアイスを食べて頭を冷やそう!」


 翌日、雪夜は恥ずかしそうに謝ってきた。

 そしてこの一件以来、雪夜は外出時のレシスぺを警戒するようになった。

 しかし、少し癖になってしまったらしく、たまにこっそりと家で飲んでいるとか。


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