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リナからハンター証を貰って簡単な説明を受け、アキは早々に連盟から撤収した。
アキが貰ったハンター証は銀色。それがランクⅣの証らしい。ハンター証はランク別に色分けされていて、ベルフィオーレの冒険者協会ランクと似ている。ちなみにランクVは金色、Ⅲは銅色らしい。
ただベルフィオーレの冒険者と大きく違うところは、ハンターに依頼受託率や達成率などの細かいシステムはないというところだ。依頼は受けたい時に受ければいい。極論を言うなら、何年も依頼を受けなくても問題ない。一度試験に合格してハンターになってしまえば、一生そのままだ。まあその分冒険者のように特権は一切ないのだが。そしてランクはただのランクであり、それ以上でもそれ以下でもない。受けられる依頼レベルや依頼料が変わるだけ。まあ高ランク程一目置かれるし、一種のステータスにはなるが、それくらいだ。
こんな縛りのない仕組みで問題ないのかと思ったが、ハンターになるような人間は大抵戦闘を生業とする。つまり依頼を受けて金を稼がないと生活できない。だからこれで十分に成り立つのだろう。きっとシズのように騎士隊長とハンターの二足の草鞋を履いている方が珍しい。
ただシズに聞いたところ、彼女はハンター活動はほとんどしてないのだとか。試験官として偶に連盟に協力する程度らしい。騎士隊長としての仕事があるから、ハンターとして依頼を受けている余裕なんてないそうだ。ランクⅣを取得したのはただの腕試しで、ハンターを生業にする気はない。まあ貴族でもあるシズはお金に困ってなんていないだろうから当然か。
とりあえずたハンターランクⅣになるという目標は達成した。後はシズからユーフレインの情報収集して今日は終わり。
「馬車は助かる。ありがとね、シズ。」
ハンター連盟から撤収したアキは、シズが待機させてくれていた馬車で送ってもらっている。連盟から歩いて帰るとなると、色々絡まれるかもしれなかったのでシズには感謝だ。
たださっきからアキがいくら声をかけてもシズは俯いたままで返事をしてくれない。
「シズ、大丈夫?」
するとシズは小さく呟く。
「えへへ、アキにボロ負けしちゃった。」
どうやらすっかり意気消沈してしまっているようだ。馬車に乗るまでは人の目もあったからグッと我慢していたのだろう。
「シズ、別に泣いてもいいんだよ?」
今はアキの目しかないし、何も気にする必要はない。
「うん・・・。」
するとやはり我慢していたのか、彼女の目から涙が零れ落ちる。
「あのね、あのね。私もっと、もっと強くなりたい。」
「大丈夫、なれる。」
これは世辞ではなくアキの本心だ。その気持ちがある限り、シズはいくらでも強くなれるだろう。
「うん・・・うん。」
アキに完封された事で、シズが誇っていた「強さ」という自信はなくなった。
「ごめんね。シズ。」
アキがシズに目を付けたから招いてしまった結果だ。
「アキは悪くないよ。私だって自分が一番強いなんて思ってなかった。でもこんなに弱いなんてね・・・お兄様やお父様に顔向けできない。」
「ん、どういう事?聞いてもいい?」
シズの家庭事情は聞いてない。彼女の言葉が気になったのでアキは詳しく尋ねる。もしかしたらただ負けて悔しいだけではないのかもしれない。
「あ、うん。言ってなかったね。ごめんね。うちの家はちょっと特別なんだ。」
シズ曰く、彼女の兄はエヴァグリーン騎士団の団長。つまりシズの上司と言う事だ。彼女は隊を纏める隊長だが、兄はその隊を纏めあげる団長。そして彼女の父はなんとエヴァグリーン軍の元師なのだとか。各街の騎士団、国軍の歩兵部隊、騎馬隊などを指揮する立場の人間。つまりシズや兄の上司。
これは驚いた。シズの家系は下手したら王族クラスだ。まさかそこまでの身分だとはさすがに思わなかった。
「シズは凄いところのお嬢様なんだね。」
「そうなのかな・・・?でもうちは強さが全てだからね。負ける事は許されないんだ。」
まあ彼女の父や兄の立場からしてそういう家訓があるのも納得できる。
「そうなんだ。もしかして怒られたりするの?」
「うん。」
アキに負けた事を言わなければいいんじゃないかと一瞬思ったが、あれだけ騒ぎになれば噂も広まる。でも彼女が叱責を受けるのはアキとしては不本意だ。罪滅ぼしとして何かしてやれることはないだろうか。シズの家の家訓を知っていればもう少し上手いやり方はあったはずだ。
「そっか・・・ねえ、俺に出来る事はなにかない?」
「え・・・?う、うーん・・・」
「俺がシズのお父さんやお兄さんとも模擬戦するとかどうだろう。」
アキの提案に驚くシズ。
勿論ただの興味本位ではない。シズが負けたのが彼女の実力不足ではなく、アキが特殊だからと2人に理解してもらえれば、彼女への叱責も無いはずだと思い、提案してみた。
「た、確かに。それは・・・ありかも?で、でも!私より強いよ?」
「俺のせいで友達が怒られるのは納得いかないからな。面倒事は嫌だけど、友達の為なら喜んで何でもするぞ。」
「えっと・・・じゃあ報告する時にアキの話をしてもいいの?」
「うん、何でもするから好きに報告してくれていい。」
それにそんな立場の人間と接点を持てるのであれば会わない手はない。軍の元帥であればシズより王族への距離は近いに違いない。上手く気に入られれば、王や王妃にだって紹介して貰える可能性だってある。氷姫の方が上手くいかなかった場合の代替案として十分に使える。
「それと別にシズは弱くないよ?経験が少ないだけだ。」
家柄の話になって言いそびれていたが、これだけは伝えておきたい。
シズは実力が決して無いわけではない。ただアキが訓練している相手が特殊過ぎるだけだ。エリスは間違いなくベルフィオーレで3本の指に入る実力者。そしてミルナ達やイリアもSランクでトップクラス。だから一般的にみれば、シズは普通に実力者の部類には入る。
「でもアキに手も足も出なかった・・・もん。」
そっぽを向いて拗ねるシズ。ちょっと可愛い。
「まあ俺の訓練相手が特別だからね・・・。それにシズはこういう模擬戦の経験少ないでしょ?それもあると思うよ。」
「あー・・・確かにそうかも。私も模擬戦できる相手欲しいな。もっと強くなりたいよ・・・。」
「何言ってるの?俺がいるじゃん。」
シズはいまさら何を言っているのか。これだけ「友達」言い合っているのだから訓練くらい付き合うに決まっている。
「え・・・あっ。えへへ、そうだね。忘れてた。」
シズが恥ずかしそうに笑う。
「あんまり頻繁には出来ないけど、ちょくちょくやろうか。」
「うん!お願い!あと、家の事も頼るかもだからよろしくね?」




