↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧翔
第二十二章 イニステラ①
388/1143

11

「ほう・・・?しかし私がそんな簡単に白旗を上げるなんて思うなよ!」


 シズが威勢よく叫ぶが・・・アキがいた世界ではそれはフラグという。 


 そしてアキが何故わざわざ戦闘を中断してまで槍を拝借したのかというと、氷刃や炎の威力を実際に見てもらう為だ。もしこのパフォーマンスでリナが納得してくれるなら、不用意な魔法での戦闘をしなくても済む。シズに大怪我させる事なく終わらせる事が出来る。


「シズ。」

「なんだ、そろそろやるのか、アキ。」


 彼女の名前を呼ぶと同時に氷刃を槍に向かって放つ。槍は彼女の隣に刺さっているので、攻撃を察知出来るのであれば身構えるはず。だが彼女はなんの反応も示さなかった。つまりアキの魔法は見えていなかったという事になる。


「槍に攻撃したんだけど。見えなかったか?」

「・・・?」


 不思議そうに首を傾げるシズだが、隣の槍を見て理解したようだ。シズは槍が真っ二つに切断されているのを見て目を見開く。


「最初は敢えて使わなかった視認性の低い魔法なんだよね。これをさっきのに混ぜる。あと炎は当たらないように撃っていたけど、当たるとこうなる。」


 炎魔法を槍に撃ち込み、融解させる。まあさっきシズに放った炎魔法は温度を調整し、火傷程度に済むようにしておいたので、当たっていてもこうはなってないが。


「どうする?続きやる?」

「む・・・。いや・・・負けを認めよう。」


 これで前半戦は終了だ。予定通り。


 しかしシズの負けの認め方は潔い。悔しそうな顔はしているが、堂々たるものだ。騎士としての誇りだろうか。


「リナさん、どうしますか?」


 答えはわかっているが一応尋ねる。今は魔法一辺倒だったので、次はきっと近接戦闘をしてくれと言われるはず。とりあえずシズの実力はエリスに遠く及ばないと分かったので、あとは消化試合だ。ちゃちゃっと終わらせよう。


「は、はい。魔法能力は申し分ありません。ただ魔法以外も確認しておきたいので・・・接近戦をお願いできますか?アキさんは剣をお持ちのようですし・・・」


 攻撃魔法を制限する縛りをリナが課して来た。やはりか。まあ想定通りの展開だ。


「わかりました。じゃあシズ、ここからは剣だな。魔法は使わないから安心しろ。」


 アキは自分の愛刀である月時雨を抜く。


「私の実力で抜かせる事が出来なかったか。情けない。抜かなかった事を後悔させてやろうと思っていた自分が恥ずかしい。だが・・・アキ!ここからはそうはいかんぞ!このままでは終われん!」


 シズは自分の愛刀を両手でしっかりと握り、目の高さのこめかみ辺りの位置で構える。日本剣術で言うところの霞構えに近い。


 騎士隊長としての誇りか、ランクⅣとしての意地か・・・シズは鬼気迫る顔でアキを睨んでくる。ここからは本気も本気でやるつもりなのだろう。


 だが別段問題はない。


 シズの癖などは当然まだ見抜けていないが、問題なく凌げるだろう。こういう場面を想定し、エリスやミルナ達と毎日訓練しているのだ。


 癖に基づいた予測に頼らない模擬戦は彼女達と腐るほどやった。状況判断だけでエリスの攻撃を凌ぐ練習をひたすらやった。さすがに最初は全く歯が立たなかったが、最近は10分くらいは持つようになってきたのだ。ちなみに癖を考慮すればエリスともある程度互角に打ち合える。


 アキとて成長しているのだ。ただアキが成長するにつれ、エリスが「アキに守られるのは嫌だ。私が守るのだ。もっともっと修行するのだ!」と地団駄を踏む回数が増えるのがちょっと面白い。まあそれでこそ頼りになるアキの騎士だ。


「じゃあシズ、いつでもどうぞ。」


 それに正直今のシズの状態は好都合だ。凄まじい気迫は感じるが、アキとしてはこれは逆にやりやすい。人間、追い詰められると攻撃が単調になり冷静な判断力を失う。つまり至極攻撃が読みやすいのだ。


「む・・・その余裕、すぐに無くしてやる!」


 別にシズを煽ったわけではないのだが、彼女はアキの発言が気に入らなかったのか、地面を蹴り一気に距離を詰めてくる。


「はああああ!」


 自分を鼓舞するかのように咆哮して斬りかかってくるシズ。


 アキは慌てる事なくシズの攻撃に備える。アキの戦闘スタイルは、基本的に自分から動く事はしない。相手の剣を受け流し、カウンターで仕留めるのが主だ。戦闘の主導権を握るには、相手に先手を譲るのがアキの中では定石。一般的には何がいいのかは知らないが、アキにとってはこれが最適な戦闘戦略だ。


「ふぅ・・・」


 月時雨の剣先をシズの目に向け、正眼に構えを取る。どんな状況にでも咄嗟に対応できるからアキはこの構えを好んで使う。勿論地球にいた頃は剣術なんて嗜んでいないので、これはベルフィオーレに来てから必死に勉強して習得したものだ。様々な剣術の流派の書籍を読み漁り、ミルナ達やエリスに相手してもらって、自分なりの型を模索していたら、いつの間にかこの構えに辿り着いていたというわけだ。


 さてシズが目前に迫っているが、どうするか。氷弾などで彼女の攻撃の軌道を変えるのもありだ。・・・だがそんな事をするまでもなさそうだ。エリスやエレンに比べ、格段に攻撃速度が遅い。予備動作も多い。攻撃に緩急やフェイントをいれる気配もない。これなら・・・普通に捌くだけでいい。


 シズが袈裟切りを繰り出したと同時に後ろに下がり、彼女の斬撃を躱す。


「まだだ!」


 するとシズは躱された袈裟切りの軌道を無理やり反転させ、踏み込むと同時に切り上げてきた。


 アキはそれに合わせて月時雨を振り下ろし、鍔迫り合いに持ち込む。当然振り下ろしの方が重力を味方に出来るので、攻撃に力が乗る。アキの方が有利だ。


「負けるか!」


 シズは当然のように押し負けまいと全力で抵抗してくる。


「じゃあ俺が退くね?」


 だがそれではアキの思惑通りだ。


 鍔迫り合いを長引かせても意味は無い。シズが退かないのであれば、アキが退く。押し合っていた力を急に失ったシズは当然前方へ体勢を崩す。そしてそれと同時に月時雨の刀身でシズの剣を受け流し、体を左に捻ってシズの側面、そして背後へ回り込む。

 

「まだやる?」


 背後からシズの首元に剣先を突きつける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。